筋トレをすると、基礎代謝が向上するというのは、ご存じの通りだろう。しかし、筋トレをするとなぜ基礎代謝が向上するのだろうか。まずは、基礎代謝について学んでみよう。

著者・監修者プロフィール

和田　拓巳
プロアスリートやアーティスト、オリンピック候補選手などのトレーニング指導やコンディショニング管理を担当。治療サポートの経験も豊富で、ケガの知識を活かしリハビリ指導も行っている。医療系・スポーツ系専門学校での講師や、健康・トレーニングに関する講演会などの講師を務めること多数。テレビや雑誌にて出演・トレーニング監修を行う。現在、様々なメディアで執筆・監修を行い、フィットネスに関する情報を発信している。

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【contents】
・筋トレが基礎代謝を向上させる理由とその効果
・ダイエットを成功させるための筋トレの役割
・ストレス解消とメンタルヘルス改善に対する筋トレの効果
・健康的な生活習慣へのシフト：筋トレがもたらす変化
・筋トレを長期的に続けるためのコツとメリット
・まとめ

筋トレが基礎代謝を向上させる理由とその効果

基礎代謝とは

体がエネルギーを消費するには

・基礎代謝
・身体活動代謝
・食事誘発性熱産生

があるが、基礎代謝は体を動かさずにじっとしている状態でも消費されている最低限のエネルギーのことを指す。消費されているエネルギーは、主に呼吸や臓器の活動維持、体温の維持など、生命活動を維持するためのエネルギーとして使われている。全体の中で基礎代謝の消費エネルギーは、約6〜7割を占めている。

ちなみに、厚生労働省が発表している年代別の基礎代謝量の平均を紹介すると

18〜29才　　男性　1,520kcal　女性　1,110kcal
30〜49才　　男性　1,530kcal　女性　1,150kcal
50〜69才　男性　1,400kcal　女性　1,110kcal
70才以上　男性　1,290kcal　女性　1,020kcal

(厚生労働省「日本人の食事摂取基準（2015年版）策定検討会」報告書より)

となっている。これだけのエネルギー量が、何もしなくても消費されているのだ。基礎代謝をさらに高めることで、太りにくくなるということが理解できるだろう。

また、年とともに基礎代謝が低下していくというということにも注目してほしい。これは活動量が少なくなり、筋肉量の低下が引き起こしている部分が大きいだろう。

基礎代謝を高めるメリット

基礎代謝を高めることによるメリットは、どのようなものがあるのだろうか。ここでは基礎代謝を高めるメリットを確認してみよう。

●痩せやすく太りにくくなる

先述の通り、基礎代謝量が多くなることで、太りにくく痩せやすくなる。

短期間でみれば、その差はわずかだろう。しかし、これが毎日、長期間続くことで、その差はとても大きくなっていく。

●美容効果

体が引き締まることで見た目が良くなる以外にも、基礎代謝が高まることによる美容面での効果は多い。

基礎代謝が高まることで、エネルギーの消費量が多くなり、基礎体温も向上する。体温が向上すると、血行が良くなったり新陳代謝が活発になり、古い細胞が新しい細胞に置き換わるサイクルが速くなる。体内の老廃物が効率よく排出されやすくなり、その結果、むくみの解消や肌の色・ツヤが良くなることにつながるのだ。

●体調の維持

血行が良くなることで、肩こりや腰痛、むくみなどの症状が緩和されるなど、体調が良くなるのもメリットの一つだ。

また、体脂肪の蓄積を抑え体重過多を防ぐことは、内臓疾患や心疾患、脳血管疾患などを引き起こすリスクを低下させることにも繋がる。

ダイエットを成功させるための筋トレの役割

ダイエットという目的を達成するにあたり、筋トレはどのような役割を果たすのだろうか。

筋肉量の増加

筋トレは、筋肉量を増やすのに効率が良い運動だ。筋肉量が増えることで、基礎代謝の向上につながる。なぜなら、筋肉は基礎代謝の中で、最もエネルギーを消費する比率が多い組織だからだ。体全体の22%程度のエネルギーが筋肉で消費されており、肝臓の21％、脳の20％を上回る。重要な臓器や脳以上に、筋肉はエネルギーを消費しているのである。

見た目の変化

筋肉量が増え、脂肪が減っていくことでメリハリのある体をつくり、見た目を大きく変えることができる。
痩せて引き締めるだけでなく、体全体を大きくしたい人もいるだろう。そのためには筋トレが欠かせない。

食べることによって体を大きくすることは可能だが、それだけでは脂肪のみが蓄積してしまい、理想の体を得ることはできない。体を小さくするにも大きくするにも、カッコいい体を作るためには筋トレが必要なのだ。

筋トレをダイエットに取り組むなら

プログラムに筋トレを取り組むことで、ダイエットを効率よく進めることができる。その場合は筋肥大を目的とする筋トレと、脂肪燃焼を目的とする有酸素運動を効果的に組み合わせる必要がある。

筋トレは、筋肥大を目的とした負荷設定がよいだろう。
筋肥大効果を高めるためには、8〜12回程度で限界を迎える負荷で行うこと。軽すぎても重すぎても筋肥大効果が薄れてしまうので、自分の筋力を確認して負荷を決めていこう。

また、筋トレと有酸素運動の順番にも気をつけよう。順番によってはそれぞれの効果が少なくなってしまう場合がある。
ダイエットを目的とするなら「筋トレ」→「有酸素運動」の順番で行うことをおすすめする。

筋トレと有酸素運動の順番について詳しく知りたい人は、「筋トレとランニングの効果的な組み合わせで最大の成果を出す方法」をチェックしてほしい。

ストレス解消とメンタルヘルス改善に対する筋トレの効果

筋トレはフィジカルの変化だけでなく、メンタルにも良い影響を与える。ここでは、筋トレがメンタルにどのような影響を与えるのか解説していこう。

やる気を向上させるホルモンの分泌

筋トレを行うと、テストステロンやアドレナリンなどのホルモンの分泌が促進される。

テストステロンは、やる気に影響を与えるホルモンであり、ポジティブな気分になったり、メンタルを安定させるほか、ストレスへの耐性を高める働きもある。

テストステロンが低下すると、倦怠感や無気力、気分の落ち込みなどのモチベーションに悪影響をもたらしたり、イライラ・不安感など精神の不安定を引き起こすのだ。

また、アドレナリンにも、集中力の向上や感情の高揚など、活動的になる働きをもたらす。アドレナリンが分泌されると、集中力や注意力が向上するのだ。

スポーツで高揚感や達成感などを得られるのは、これらのホルモンが分泌されるからなのだ。

自信がつく

筋トレで体が変化し、理想の体に近づいていくにつれ、自信がつき、人前に出るのが苦手ではなくなるなどの効果もある。

また、途中途中で目標を達成していくことにより、成功体験を蓄積することも、自信につながる。

筋トレを続けることで、体の変化や達成感により自己肯定感を高め、ポジティブな思考になり行動的になっていくはずだ。

ストレス発散

筋トレはストレスの解消にもなる。
運動で体を動かした後、スッキリとした気分になり爽快感が高まるのを経験したことがある人も多いことだろう。それは、筋トレでも同だ。

筋トレの場合、先述のホルモンの影響や、目標への達成感のほか、今までできなかったエクササイズができるようになったり、今まで持ち上がらなかった重量が挙げられた時の嬉しさなど、喜びを感じることも多い。これらはすべてストレスの発散につながるのだ。

健康的な生活習慣へのシフト：筋トレがもたらす変化

筋トレが健康に効果的なのはもちろんだが、筋トレを続けることで食生活や生活習慣にも変化を与えていく。ここでは筋トレが日常生活の変化にどのように影響を与えるか解説しよう。

食生活が整う

筋トレを始めると、効果を高めるための食事方法について知りたくなるのではないだろうか。筋肉をつけるための食事を調べていくと、自然と「高たんぱく・低炭水化物・低脂質」の食事に変化していくことだろう。結果、健康的な食生活に近づいていくのだ。

また、サプリメントにも興味がわいてくる。たんぱく質だけでなく、ビタミンやミネラルなどのサプリメントを摂取する人も多いだろう。栄養バランスが整い、体調も良くなるという好循環が生まれる。

それらの栄養に関する知識は、一生ものだ。筋トレを通じて、健康的な食生活のための知識を学ぶことにもつながっている。

禁煙・禁酒など嗜好品を敬遠するようになる

筋トレを始めた機に、禁酒や禁煙にも取り組むという人も多い。実際、飲酒・喫煙は筋トレにとって良いことはない。

アルコール摂取により筋トレの効果を低下させることは知られている。筋トレの刺激によって分泌され、筋肉を肥大させる働きをしている「テストステロン」は、アルコールを摂取することにより分泌量が低下してしまうのだ。
また、体にストレスを受けた際に分泌され、脈拍数の増加や血圧の上昇など、ストレスに対抗するために働いているコルチゾールは、アルコール摂取によって分泌量が増える。このコルチゾールが多く分泌されると、エネルギー源である糖を生み出すために、筋肉の分解を促進させてしまうのだ。

※筋トレとアルコールの関係性について詳しく知りたい人は、「筋トレとアルコール（仮）」をチェックしてほしい。

喫煙は、心肺持久力の低下をもたらす。
タバコの煙に含まれる一酸化炭素は、血液中の酸素と結びつく赤血球の能力を低下させ、筋肉や他の組織に供給される酸素量を減少させてしまう。また、肺の気道を炎症させ、粘液の分泌を増加させることによって、呼吸がしづらくなり、酸素の取り込み効率を悪くしてしまう。これらの影響により、運動時の持久力が低下してしまうのだ。

また、酸素の取り込み効率が悪くなることで心臓への負担が増加したり、筋肉へのエネルギー供給が低下し、疲労の増加、回復力の低下なども引き起こしてしまうため、筋トレの質の低下をもたらす。

ダイエット効果を高めるために、おやつなど甘いものを敬遠するようになる人もいるだろう。それらの嗜好品に対して自然と摂取しなくなるというのも、筋トレを始めたことによる良い変化といえる。

行動量が増える

少しでもダイエット効果を引き出したり、筋肉量を増やすために行動量を増やすようになるのも良い変化の一つだ。

普段ならエレベーターやエスカレーターを使うのに、筋トレを始めてから自然と階段に足が向く人も多いだろう。また、あえて筋肉に刺激が入るように行動するという人もいるはずだ。スキマ時間に周囲に気づかれないような筋トレをしたり、筋肉に力を入れて意識してみたりなど、細かい行動だが、それが積み重ねることによって行動量が増え、体の変化にもつながる。

筋トレを長期的に続けるためのコツとメリット

最後に筋トレを長期的に続けるコツを紹介していこう。

モチベーションを保つコツ

初めのうちは、筋トレに対する意欲も高く、何もしなくても継続することができる。しかし、始めてから時間が経ってくると、徐々にモチベーションが落ちてきてしまう。そこで、継続していけるかどうかがカギとなる。

モチベーションを保つには様々な方法があるが

・中間目標を立てる
・目標達成時にご褒美を用意する
・理想の体を目にしやすいところに掲げる
・筋トレ仲間を作る
・成果をこまめに確認する

などは効果的だ。
ある程度継続できれば、筋トレが習慣となり、自然とライフスタイルの一部として筋トレが欠かせなくなるはずだ。

※筋トレのモチベーション維持のコツについて詳しく知りたい人は、「筋トレが続かない原因と克服方法」をチェックしてほしい。

長期的に続けることによって得られる効果

筋トレが習慣化づき、長期的に続けることができれば、さらに多くのメリットを得ることができる。

例えば、健康について。体力は年々低下してしまうものだ。筋トレをしていれば筋力や筋持久力の維持・向上を図ることができ、体力の低下を極力少なくすることができる。もちろん、今以上に増やすことも可能だ。

また、紹介した通り、メンタルにも大きな影響を与えるので、やる気が高まることで行動的になる。
そのような人は、エネルギーにあふれている感じを周囲にも感じさせ、若々しく見える。実際、ジムにいる人を見ると、年齢よりも若く見える人が多いはずだ。

このように、筋トレを続けることによるメリットは多い。短期的な目標達成のためではなく、生活スタイルの一部になるように心がけよう。

まとめ

筋トレを行うことで、様々なメリットがあることを理解していただけたのではないだろうか。ただ、やはりこれらのメリットを得るには、筋トレを継続して行う必要がある。

筋トレは、ハードで辛いというイメージを持っている人もいるかもしれないが、心配はない。もちろん、ある程度きつくなければ効果は薄くなってしまうが、筋トレ初心者の場合は、いつも限界まで追い込む必要はない。
これから筋トレを始めようと思っている人は、まずは、筋トレで適度に体を動かすことから始めてみよう。強度を高めていくのは、ある程度慣れてからで十分だ。体を動かすことで、徐々に成果や今回紹介したメリットを感じることができるはずだ。より効果を求めたくなった時が、筋トレ初心者卒業といえるだろう。

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