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あえて全方位に向けない 卓球番組からも垣間見られる“テレ東アプローチ”
“愛ちゃん頼み”でスタート! だが局内からは「お荷物」の声も
しかし世界卓球の認知度は低く、視聴率は苦戦が続いた。局内から「世界卓球はお荷物」との声も上がるほどだった。2014年に世界卓球のプロデューサーに就いた遠藤正紀氏は、「このままではいけないと思い、作戦を練り直しまして。2年かけて16年に視聴率10%を目指すことにしました」と語る。当時、平野美宇選手と伊藤美誠選手の“みうみまコンビ”が台頭してきたこともあり、彼女たちを通して卓球の間口を広げていった。
あえて卓球好きな人向けに制作
テレビ東京の視聴率も、日本卓球界の躍進と比例するようにアップ。2016年の放送から2桁に届くようになり、社内の卓球中継への空気感もガラリと変化した。そんな中、「卓球のレギュラー番組を設けてもいいのでは」との声も上がり、18年1月、30分枠でテレビ東京が制作する『卓球ジャパン!』の放送がBSジャパン(現BSテレ東)で開始した。
そこで柳澤氏は、元来のテレビの手法でもある“老若男女に見てもらう”番組作りではなく、卓球好きな人向けの番組として舵を切った。「バラエティ番組のような分かりやすく派手な演出ではなく、“スポーツとしての卓球の面白さ”にフォーカスした番組作りに取り組みました。卓球は展開が早く、スマッシュなど派手に決まるプレーもありますが、実はその前のプレーが重要だったりするんですよね。ゲームやプレーをしっかり取り上げれば、卓球好きな人はもちろん、卓球に興味がなかった人たちも次第に見てくれるはず。卓球はテクニック、駆け引きなど心理戦も実は満載。この競技自体の面白さを素直に伝えればいいんじゃないかなと思ったんです。“卓球偏差値の高い番組”でいいんじゃないかなと」(柳澤氏)
SNSは“とんがったこと”をやりたがるテレ東にとって追い風
一方、柳澤氏はSNSがテレ東にとって追い風になると語る。「時代が変わり、お茶の間で家族でテレビを見るという習慣は薄れてきた。今は、テレビを見ていて面白いと思ったことをSNSに発信し、好きな人たちでつながっていく時代。この流れは、テレ東にとって追い風かなと思いますね」(柳澤氏)
今年10月には卓球の新リーグ「Tリーグ」が開幕、約1年半後には2020年東京五輪が待っている。遠藤氏も柳澤氏も、卓球ブームに乗っていきたいと話すが、「あくまで東京五輪はゴールではない」と断言する。「東京五輪が終わったら卓球を取り上げるのをやめる、というのはテレ東らしくない。テレ東としては、五輪後も日本で卓球が盛り上がっていくように伝えていきたいですね」(柳澤氏)
『卓球ジャパン!』は、多くの卓球ファンが待ち望んでいた番組
平野氏は、2012年ロンドン五輪卓球女子団体で銀メダルを獲得し、16年に現役を引退。元選手目線からしても、卓球に特化したレギュラー番組ができたこと自体、信じられないという。「現役の選手からも『番組見ているよ』と言われますね。出演してくれることも多くて、『ここまで明かして大丈夫?』というくらいプレーの詳細を伝えてくれる。選手たちはすごく真摯に番組に向き合ってくれていますね」(平野氏)
まもなく放送1周年を迎える『卓球ジャパン!』。平野氏は、「『卓球ジャパン!』は、多くの卓球ファンが待ち望んでいた番組。私は毎回勝負のような気持ちで、こういう演出で見ている人は喜んでくれるかなと考えながら、臨んでいます。実況解説もそうですが、この番組は、卓球を知らない方+卓球を経験している方向けに、卓球を掘り下げて伝えている。卓球の奥深さを知ってもらえたらうれしいですね」と意気込みを語った。
(文:衣輪晋一)