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テレ東“タブーなき”攻めの姿勢の源流 “テレビ番外地”のプライドと反骨心

  • 他局では“タブー視”されるテーマへも果敢に斬り込むテレ東の魅力とは?(C)ORICON NewS inc.

    他局では“タブー視”されるテーマへも果敢に斬り込むテレ東の魅力とは?(C)ORICON NewS inc.

 テレビ東京(以下、テレ東)の勢いが止まらない。1月2日に放送された『緊急SOS!池の水ぜんぶ抜く大作戦6〜今年も出た出た!正月3時間スペシャル〜』は13.5%の高視聴率をマーク。ここ数年のテレ東は、『池上彰の総選挙ライブ』『家、ついて行ってイイですか?』『YOUは何しに日本へ?』など、同局ならではの奇想天外な“切り口”による番組制作が高く評価されてきたが、ついに視聴率の数字も追いついてきたようだ。他にも『じっくり聞いタロウ〜スター近況(秘)報告〜』はスネに傷を持つタレントを積極的に起用。昨年末の『ガイアの夜明け』ではバブル期のフィクサー・許永中氏へのテレビ初インタビューを敢行するなど、他局では“タブー視”されるテーマへも果敢に斬り込んでいる。こうしたテレ東の“攻め”の系譜とその理由を検証してみたい。

“お荷物”などと揶揄されながら、他局にない“独自路線”で存在感を発揮

 かつてのテレ東と言えば、NHKと在京キー局の中では「5強1弱」とも言われ、他局の視聴率が低下してくると「振り向けばテレビ東京」などと揶揄されることも。視聴率も全日平均で2〜3%の時代が長く続き、チャンネルも地デジに移行する前までは“12チャンネル”であり、1・3・4・6・8・10(以上、関東圏)に続く、名実ともに“しんがり”状態。

 だが、スタッフ数や制作費もキー局に比べて少ない中、テレ東は“アイデア”と“独自性”を貫いて勝負してきた系譜がある。実際、日本を揺るがす大事件が起きた際でも、テレ東だけは予定通りにアニメを放送するという“テレ東伝説”さえある。湾岸戦争時(1990〜91年)には、他局が報道番組を流す中でアニメ『ムーミン』を放送。また「地下鉄サリン事件」(1995年)や「911同時多発テロ」(2005年)のときも予定通りの番組を放送し、逆にテレ東が臨時ニュースを放送すると、それがニュース記事になるほど。

こうしたテレ東の“独自性”は、アニメ放送に力を入れているという“お家事情”の他に、“スタッフ数が足りない”という理由もあるようだ。とはいえ、アニメファンを中心にネット上では「オレたちのテレ東」と支持され、ネット民が“テレ東を贔屓”する基盤ともなったのである。

 また、“テレ東手法”として、他局では取り扱わないマイナーなジャンルを取り上げる、という点もある。スポーツで言えば『三菱ダイヤモンド・サッカー』で、Jリーグ開幕以前のマイナースポーツ時代のサッカー情報をこつこつと放送。1993年の“ドーハの悲劇”といわれるワールドカップアジア最終予選「日本vsイラク戦」放送の際は、当局史上最高視聴率となる48.1%を叩き出した。プロレスにおいても、全日本プロレス=日本テレビ、新日本プロレス=テレビ朝日という時代の中、テレ東は国際プロレスを中継し、『世界のプロレス』では海外のプロレスを紹介するという、マイナーながら一定の数字が見込めるマニア層をターゲットにした番組を放送していた。こうした戦略は、今でいう“ニッチ市場”を狙ったものであり、ある意味テレ東は時代を先取りしていたとも言える。

 それでもやはり、キー局に比べて小規模であるという認識はスタッフたちにも明確にあるようで、テレビ東京公式HPにある開局50周年(2014年)の社員座談会では、制作や編成の部員たち自身、身内を“竹槍部隊”と呼び、他局は“バズーカ砲”を持っているなどと形容している。だからこそ、「気持ちが良いのは、他局が予算5,000万円かけて作った番組に、1,000万円で勝った時ですよね。竹槍が急所を突くような感覚です」(同座談会より)とも語り、自局のウイークポイントに対する冷静な眼と、他局への対抗心・競争心という“気概”を併せて垣間見ることができる。

 その気概は独自性の高いアイデアの発想を生み出し、『YOUは何しに日本へ?』『世界ナゼそこに?日本人』などの人気バラエティー番組として結実し、やがて視聴率がキー局と肩を並べはじめるのだ。そしてついに昨年の2017年6月、1964年のテレビ東京開局以来初めて、ゴールデンタイムの週間平均視聴率で民放3位に躍り出るという“快挙”をなしとげるのである。

“テレビ番外地”の自覚が産み出す「計算された過激さ」

 テレ東が評価される背景のひとつに“タブーへの挑戦”がある。池上彰の選挙特番では、「池上解説タブーなし」と新聞欄にうたったように、“政治と宗教”や“改憲問題”など、政治家たちが答えづらい“タブー”をバンバンと指摘し“池上無双”と呼ばれている。さらに、「もっと攻めた番組を見たい」という視聴者の声に応えて、昨年末に復活させた報道SP『それってタブーですか?』では、新興宗教、デリヘル、事故物件、男性向け高額バイトの4つを検証。司会の田原総一郎氏をして「NHKじゃ絶対にできない」と言わしめたラインナップで視聴者をザワつかせた。ちなみに田原氏自身、テレ東のディレクター時代には番組中でいわゆる“本番”をして、その様子を放送するという過激な“実績”の持ち主。同氏は以前「テレ東は“テレビ番外地”と言われていた。誰も(チャンネルを)12まで回さない。だからこそ他の局が絶対やらないようなものをやらなきゃダメ」とコメントしている。

 つまり、テレ東の“挑戦”の数々は、勢い余った単なる“暴走”などではなく、ちゃんと計算された“過激さ”なのである。先述の社員座談会でも、「今のようにテレビに対する制約が多いほうが、とんでもないものが生まれると思います。幕府から制限を受けていた時代に歌舞伎ができたように。テレビ東京みたいな会社は、変わったことをやって突出するチャンスじゃないかと思っています」との発言があるように、現在のTV業界の枠組みから、テレ東は戦略的に“突出”しようとしてきたのだ。

タブーに切り込む“ガイアの夜明け砲”は、テレ東が培ってきた“伝統”そのもの

 そして、「他局がやらないことをやる」「スポンサー度外視」といった“タブーへの挑戦”ということで言えば、これまでも日本の暗部に切り込むジャーナリスティックな姿勢で、多くの“神回”を生んできた人気ドキュメンタリー番組『ガイアの夜明け』があげられる。

 中でも、昨年12月26日放送回の“突出ぶり”は際立っていた。「テレビ初取材!」と題してバブル時代の“闇経済の帝王”と呼ばれる許永中氏を直撃、許氏が告白するマネーの魔力を徹底取材したものだが、4時間にも及ぶインタビュー中、許氏は“昭和のフィクサー”としての衰えぬオーラを発揮し続け、その生々しさに視聴者も度肝を抜かれた。ネット上では「許永中へのインタビュー、これでしか見れへんやろ〜な」「少し興奮を覚えるほど面白かった」「桁違いの金を動かす人の目のギラつき。転んでもまた簡単に這い上がる凄み」と、番組への反響が続出。これまでTV出演のなかった許氏への取材は、人選からして“突出”している。

 同番組では、その前の12月12日放送回でも外国人技能実習生の“ブラック労務問題”が特集されており、その後、報道されたジャパンイマジネーションが「一部TV番組放送内容に関して」との声明を発表。「お客様をはじめ、各方面の皆様に大変ご心配をおかけ致しましたこと、心よりお詫び申し上げます」と謝罪するに至っている。また、先述の許氏の放送回では、レオパレス21をテーマに不動産賃貸業者の理不尽な経営手法も取り上げており、これまた大きな話題となった。この後、レオパレス21側はテレ東に対し、番組内容が「著しく印象操作される内容」だったとして、自社のホームページに抗議文を掲載する事態に発展した。

 こうした一連の流れを受けてネット上では、「ガイアの夜明け、先日に続き攻めの姿勢やな」「テレ東がまた攻めてる」などのコメントで沸いていた。TV局にとって大スポンサーの暗部に切り込むのはタブー中のタブーとも言え、番組放映後に同番組はネット民から“ガイアの夜明け砲”と名付けられたほど。なにより重要なことは、この『ガイアの夜明け』の“攻め”の姿勢は決して同番組の独壇場ではなく、これまでのテレ東の“系譜”に則して誕生したものだということだ。

 今や、玉石混淆ではあるがネット上で様々な裏事情や裏情報が簡単に入手可能。そのため、大手マスコミに対しても一部の視聴者は懐疑的な目を向けつつある。当然、“やらせっぽい”ドキュメンタリーや、予定調和的なバラエティーはすぐに炎上してしまう。そんな中、昨年の流行語にもなった“忖度”をガン無視するテレ東の手法は、“テレビ番外地”のプライドとキー局への反骨心によって醸成された“伝統”であり、今後も多くの“迷”番組を産み出してくれるだろう。

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