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テレビ東京・佐久間宣行プロデューサーインタビュー『ゴッドタン』に舞い降りた奇跡
2作目のお話を頂いたとき、「早すぎじゃないスか!?」って(笑)
佐久間宣行 あ〜そうですよね(笑)。どうしても観る側のハードルって高くなってしまいますもんね。
――ですが、これはお世辞抜きで本当に凄かった。個人的には前作を超えていると思います。
佐久間 ありがとうございます。そう言って下さると嬉しいですね。劇場第1作目にしても、当初は結構無謀な企画だなとは思っていたんですけど、バラエティと映画作品の“間”に位置するような作品には出来たかなっていう感覚はあったんです。ですから、2作目の話を頂いた時には正直迷いはありましたね。何をやればいいのかな?って。
――ある程度の達成感があった故にですよね。
佐久間 そうなんです。で、その時考えたのは、“原点”に戻ること。じゃあ、その原点というのは、劇団ひとりのアドリブの凄さなんですよね。じゃあ、もう一度そこに戻って、1作目よりも劇団ひとりの“引き出し”を開けるにはどうすればいいのか?というところから『MOVIE2』は始まったんです。
――とはいえ第1作目でも、もっと言えばレギュラー放送でも、かなりひとりさんの引き出しを開けてるような(笑)。
佐久間 そうなんですよ……だから僕も、2作目のお話を頂いたとき、「早すぎじゃないスか!?」って(笑)。
『ゴッドタン』の現場は、筋道を演者が越えてきたら「捨ててよし」が基本姿勢
佐久間 そうですねぇ(しみじみ)。何がキツいかって、この作品って企画の性質上、1泊2日で撮影するしかない。そういう企画なんですよ。それでスケールを上げていくとなると、現場のスタッフが疲弊していくという(笑)。
――僕らは観て大笑いすればいいんですけど、現場のピリピリ感は少なからず伝わってきますね。
佐久間 今回は特殊効果もかなり入れ込んでいるので、例えば火だるまになったスタントの方が登場する場面でも、いつアドリブの演技が終わるか見えないので、タイミングが分からないとか。
――ずっと、火だるまのまま待機するワケにもいかないですからね(笑)。
佐久間 そうなんですよ。あと、結構激しい銃撃戦があるんですけど、劇団ひとりが何時いなくなるのか分からないので、「無尽蔵に弾を用意しておいて欲しい」とか無茶な要望をして。
――テレビや映画畑でずっとやってきた技術屋さんたちも、これまでのルールが通用しない現場だったと(笑)。しかも一発撮りで撮り直しナシという。
佐久間 はい。主要な役者さんに1人ずつディレクターが付くという状況でした。それを統括するバラエティ班のディレクターと映画専門もスタッフが混合するような感じでしたね。実際に撮っているのは映画スタッフ、その奥でいつ来るか分からない次のシーンの最終チェックをするバラエティスタッフという流れで。
――なんか“自転車操業”というワードが頭に浮かんできました(笑)。
佐久間 「劇団ひとり来ました!」と叫んで、「頑張って下さい!!」って次の戦場に送り出すという(笑)。
――映画畑のスタッフさんって、昔ながらの職人的イメージがあるので、バラエティスタッフと揉めるような場面もあったんですかね? 「こんなん出来るか!」みたいな。
佐久間 あぁ〜。でも、あまりにもやってることがかけ離れているので逆に助け合ってましたね。
――アハハハハ! 違うことだらけで助け合うしかないと(笑)。
佐久間 そうなんです。僕が中継車カメラ十数台をチェックしながらスイッチングをするんですけど、「あと3分……いや、劇団ひとりのキャラが変わってきたからもうちょっと!!」とか話していても、映画班にしたら「なんじゃそりゃ!?」って感じだと思うんですよ。
――それは、スタッフだけではなく共演者も同じような気持ちですよね。
佐久間 大体3週間くらい前から、劇団ひとり以外の役者さんのリハをやります。リハでは“仮想”劇団ひとりを用意して、とりあえず台本通りやります。そこから「いきなり殴られるパターンで」とか「なかなか帰らないパターン」とか、劇団ひとりがアドリブでやってきそうなことを一通りすべて。舞台の一発本番に向けて準備するような感覚に近いかも知れないですね。
――で、劇団ひとりさんだけ知らないまま、着々と進んでいくと。中盤の見せ場である、ひとりさんと上原亜衣さんのプールのシーンがありますよね。そこでの“アドリブ”のやりとりが、そのままラストの伏線になっているんですよ。これは本当に凄いことだなって。
佐久間 それはやっぱり劇団ひとりの凄さですよね。前日に喋っていた自分の台詞を2日目の撮影でしっかり覚えていて、僕らスタッフも、印象に残った台詞とリンクするような進行に変更したり。
――それって凄い信頼関係の上で成り立ってますよね。現場での上積み上積みの連続は、強固な信頼関係がないと出来ないですよ。
佐久間 確かにそうですね。これは『ゴッドタン』の現場の共通認識なんですけど、最後までの筋道を立ててディレクターは現場に臨むんですけど、演者がそれを越えてきたら準備したものは捨ててよしというのが基本姿勢なんです。これは何年もやっているので空気で分かるんです。演者が想定の範囲を超えてきたなって。『MOVIE2』でも当然そういう瞬間があったんですけど、映画スタッフを入れた混合チームにもそれが伝わった。嬉しかったですね。
――“筋道を捨てる”って凄く勇気が必要ですよね。予定が狂うと普通は平常ではいられませんから。でも、想定外すら内包出来るか否かが重要なんですね。
佐久間 そうですね。あとは想定外なことが出来る芸人さんが揃ってくれたということも、もちろん大きいです。
キス我慢に出てくれた役者さんは凄い! 僕なら絶対に出たくない
佐久間 アハハハハ! でも、確かに不安で一杯ですよね(笑)。
――佐久間さんの無邪気な笑顔で「あ、間違ってなかったんだ!」って。
佐久間 どれだけ疑心暗鬼なんだ(笑)。
――今作には伊藤英明さんなど、豪華俳優陣も多数出演されてますけど、専業としてる役者さんの方がある意味プレッシャーですよね。
佐久間 ホントによく出てくれましたよね(笑)。伊藤英明さんを筆頭に役者として確固たる地位を築いてる方ばかりなので、「あれ、アドリブ弱いな」なんて思われるのは凄いリスクじゃないですか? はっきり言えばメリットが無いんですよ(笑)。でも、『キス我慢』が大好きでわざわざスケジュール調整してまで出演して頂いたので。ホントにありがたかったです。
――現場での伊藤さんは如何でした?
佐久間 本当にゴッドタン愛に溢れた方で、「え!? そんな企画まで知ってるんですか?」っていうくらいマイナー企画もご存じでした(笑)。
――かなりのマニアだったと(笑)。
佐久間 ありがたいことに、お気に入りの『ゴッドタン』DVDを自分以外のも買って配ってるらしいです。でも、そんな伊藤さんも、最初はかなり緊張されていたようなのでしたね。それを見て改めて特殊な現場なんだなって感じましたね。でも、ホントに『キス我慢』に出てくれる役者さんは凄いですよ。僕もディレクター陣とよく話すんですけど、「絶対出たくないよね!!」っていう見解で一致しますね(笑)。
ゴッドタン キス我慢選手権 THE MOVIE2 サイキック・ラブ
(C)2014「キス我慢選手権 THE MOVIE2」製作委員会
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