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“アクション女優”の地位が向上? 人気女優もアクションに挑む背景とは
全盛期は70年代、志穂美悦子ら“本物”の アクション女優が台頭
また、志穂美と同時期に早川絵美やJACで志穂美の後輩だった森永奈緒美などもアクション女優として活躍したが、時代の流れとともに危険がともなうアクションは「知名度のある女優がやる仕事ではない」という風潮が広がり、アクションシーンはスタントマンによる吹き替えが常識となっていく。90年代に以降“アクションもこなす”女優として認知されたのは、『踊る大捜査線』シリーズで活躍した水野美紀ぐらいではないだろうか。
しかし海外においては日本とは逆で、現代までに“アクション女優”と呼ばれるスターが次々と誕生している。『ターミネーター』(1984年)のサラ・コナーを演じたリンダ・ハミルトン、人気ビデオゲーム『トゥームレイダー』(2001年)の実写化で一躍トップスターに踊り出たアンジェリーナ・ジョリー、『バイオハザード』シリーズ(2002年〜)のミラ・ジョヴォビッチ、『キル・ビル』(2003年)のユマ・サーマン等々、アクション演技自体が若い女優がスターになる登竜門として機能し、その後も“アクション女優”としての活躍をするという路線も確立しているのだ。
清野菜名ら本格的に武術を会得した女優の出現 大物女優もこぞってアクション回帰
また、セゾンカードのCMで見せた“頭突きで瓦割”が話題になった武田梨奈は、目標とする人物にジャッキー・チェンを挙げ、空手有段者という本格派である。ワイヤー、スタント、CGを一切使用しない、実践志向の空手アクション映画『ハイキック・ガール!』のヒロインオーディションでデビューを掴み、映画『進撃の巨人』(2015年)のリル役をはじめ、様々なアクション作品にチャレンジしている。他にも、現在放送中のドラマ『チア☆ダン』(TBS系)に出演している山本舞香も空手の黒帯。ユア・サーマンに憧れていると明かし、映画『Zアイランド』(2015年)では見事な上段回し蹴りを披露している。
映画『阿修羅少女〜BLOOD-C異聞〜』(2017年)で主演を務めた青野楓も空手有段者であり、映画『太秦ライムライト』(2014年)でヒロインを演じて第3回ジャパンアクションアワードでベストアクション女優賞を受賞した山本千尋は太極拳のほか剣術や槍術まで習得しているという。彼女たちのような“新世代アクション女優”と呼ばれる若手女優たちが続々登場しているのだ。
前述の本田翼も、ドラマ『絶対零度〜』で本格アクションに挑んでいる。本田と言えば、色白でゲーム好きを公言するなど“文科系”キャラが立っていたが、ドラマ内ではホテルの従業員や銀行員に扮して、ミニスカートのまま容疑者らとド派手に格闘。SNSでは「ばっさーに蹴られたい」「ミニスカートでのアクション、目が離せない!」などと毎回話題になっており、ドラマ好調の一因となっているといっても過言ではないだろう。第4話ではアクションシーンが大幅に追加になったそうで、これまでの女優・本田翼の“殻”を破る作品となることは必至だ。
アクション女優復権の陰に“特撮もの”? CG全盛だからこそ“リアル”での話題作りも
また、いわゆる戦隊モノや仮面ライダーなどの特撮モノが、新人俳優たちの登竜門として、スターを生み出すルートが確立されたことも要因となっていることもあるかもしれない。綾野剛、佐藤健、菅田将暉、竹内涼真といった今をときめく人気若手俳優たちの多くが「仮面ライダー」出身であることは周知の事実。もちろん彼らは男性だが、この人気をみればアクションを低く見る風潮はもはや消えたことを意味するのではないだろうか。となれば、その流れが女優に及ぶのも当然であり、実際2014年放送の『仮面ライダードライブ』で竹内涼真と共演した内田理央と馬場ふみかは、モデル→仮面ライダー出演→人気女優という新たなルートを開拓した。さらに言えば、シックスパックに憧れる“腹筋女子”ブームも手伝っているかもしれない。おしとやかでおくゆかしい日本の女性らしさの基準に新しく“強さ”も加えられたのである。
綾瀬や長澤のようなキャリアのある“王道”女優も本格アクションに身を置き始めたことや、アクションを軽々とこなす身体能力の高い若手女優が続々と登場してきている背景からも、“アクション女優”が再注目されていることは事実だ。アクション女優復権の土壌は整っているようにも見えるが、いわゆる”アクション“での大ヒット作品があるかと言えば、残念ながらまだその段階には至っていない。70年代のように本当の意味で”アクション女優“が息を吹き返すには、”女性が主役のアクション作品“の大ヒットが必要不可欠となってくる。そのような流れの上で、新たな“アクション女優”の誕生や、復権を待ち望みたい。