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70年代風潮に回帰する“脱げる女優”への評価
“必然性”があれば誰もが脱いでいた70〜80年代初頭
女性タレントのヌードというと、宮沢りえが1991年に出した写真集『Santa Fe』が世に大きなインパクトを残した。18歳の人気絶頂期に脱いだということがトピックになったのだが、逆に言えば当時ヌードは一般に“落ち目の女性タレントの最後の手段”といったイメージが強かった。だが実際のところ、70年代には一般映画でも、のちの大物女優たちが新人時代からヌードを披露していた。関根(高橋)恵子は主演デビュー作『高校生ブルース』(1970年)の妊娠する女子高生役。桃井かおりは初ヒロインのATG映画『あらかじめ失われた恋人たちよ』(1971年)などで脱いだ。秋吉久美子の『妹』(1974年)、大竹しのぶの『青春の門 筑豊編』(1975年)、森下愛子の『サード』(1978年)などもヌードシーンがある。
80年代初頭でも、五木寛之の小説が原作の文芸作品『青春の門 自立編』(1982年)で、18歳だった杉田かおるがヌードを見せている。こうした作品では、女優たちのヌードは話題にはなりつつ、ストーリー上、裸になる必然性があったシーンでのもの。バストトップだけ隠したりすれば不自然に映る。そうした場面では脱ぐ意気込みが、当時の女優たちにはあった。27歳で早逝した伝説の女優・夏目雅子も『鬼龍院花子の生涯』(1982年)でヌードになっているが、猛反対する事務所を彼女のほうが説得して挑んだとの逸話を残している。
アイドル女優全盛時代を経た2000年代から現在の流れに
そして邦画が好況となるなか、2000年代には再び、池脇千鶴、星野真里、鈴木杏といった清純イメージの女優たちがヌードを見せるようになる。吉高由里子が初主演で1シーンに留まらないヌードを披露した『蛇にピアス』(2008年)や、沢尻エリカが5年ぶりの映画で大胆に脱いだ『ヘルタースケルター』(2012年)も話題を呼んだ。
彼女たちのその後の女優活動を見ると、脱いだことはまったくマイナスになっていない。吉高はNHKの朝ドラ『花子とアン』のヒロインにまで上り詰めている。近年では、門脇麦が『愛の渦』(2014年)での性欲が強い女子大生役で、全裸のセックスシーンに臨んだのが印象的。これもおとなしそうな大学生が本能むき出して乱れるというストーリーのなかの必然で、ある意味、ATGなど70年代映画のヌードに通じるものがあった。門脇もその後、映画やドラマなど多彩な作品で活躍中だ。
制作される映画本数も増え、少女マンガ原作の恋愛モノが強い一方、『日本のいちばん長い日』『64‐ロクヨン−』『怒り』といった重厚な大人向け作品も支持を受けている昨今。若手女優もアイドル系より実力派が主役級に起用されることが増えている。こうした“本物志向”の一環に、必要ある場面では脱げる女優への評価もある。70年代の映画では必然のことだったようだが。『ロマンポルノリブート』でも、その意志を貫ける女優を集めている。
昨今は制作の現場で何かと自主規制がかかり、当たり障りのない作品が生まれがち。今、“映画で脱ぐ”ことはただのエロでなく、70年代にあった自由な精神で表現に取り組む象徴のひとつにも思える。
(文:斉藤貴志)