(更新:)
ORICON NEWS
長澤まさみ、ラブストーリーへの想い「“セカチュー”から女優としてのスタンスは変わらない」
コメディ作品への渇望、福田組参加は「待ってました!」
長澤まさみもともと福田さんとは道端でよく会う仲だったんです。「あ、監督こんにちは!」なんていうふうに毎回本当に偶然に(笑)。福田監督の作品も何度か観に行ったりしていましたが、お仕事はご一緒したことがなかったんです。私としては“道端でよく会う人”ということに勝手にご縁を感じていたので、オファーがきたときは「やっと福田さんの作品に呼んでもらえた!」ってとっても嬉しかったのを覚えています。
――そしてその作品がなんと福田監督作において異例とも言えるラブストーリーですね!
長澤まさみでも、ハリウッド版でも内容はコメディな感じだったので、もしこれが普通の恋愛ものとして描かれてしまったら、作品のよさがまるで伝わらなくなってしまう気がして。だからむしろこの映画は福田さんにしか撮れなかったと思います。
長澤まさみありがとうございます(笑)。そうですね、コメディにはここ数年携わらせてもらっていて、その中でコメディならではの難しさを感じています。「もっとコメディをしっかりやって、深みを出したいな」と思っていた矢先にちょうど今作のお話をいただいたのでまさに「待っていました!」みたいな感じでした。
――撮影していく中で福田監督から要望などはありましたか?
長澤まさみ特になかったですね。劇中で瑠衣(長澤まさみ)と大輔(山田孝之)が車をはさんでお互いに喜んでいるシーンがあるんですけど、ハリウッド版ではその喜び方も2人で小躍りしている感じなんです。でも、監督と話している中で「日本人の感覚だと嬉しいことがあっても小躍りはしないよね」ということになり、「やったー!」って空を掴んでガッツポーズをしているみたいな感じにしようと演出を受けて。私だったら絶対に考えつかないアイデアだし、無理なく面白みを加える。福田監督の作品は誰もが「福田さんっぽいね」って感覚を持つじゃないですか。それはきっと、福田さんならではの笑いのスパイスが作品と良い化学反応を起こしているからなんだと思いました。
“セカチュー”当時は目の前のことで精一杯だったけれど、今は少し余裕ができたかな
長澤まさみ『世界の中心で、愛を叫ぶ』はもう15年ぐらい前の作品になりますが、女優としての取り組み方は特に変わっていないと思います。変わったとすれば…当時は余裕がなかったので目の前のことで精一杯だったけれど、今は少し余裕ができたんじゃないかな。それはきっと山田君も同じで。山田くんとは約10年前に『そのときは彼によろしく』というラブストーリーで共演しているのですが、今回久しぶりに話してみると、やっぱりお互いにお芝居への取り組み方は当時と全然変わっていないなと感じました。
――日本中が涙した“セカチュー”でしたね。対して今回は、笑えるラブストーリーで涙と笑いの緩急は女優さんとして難しかったのではないでしょうか?
長澤まさみそうですね。でも、今回はたぶん福田監督の色をだいぶ抑えた作品なんですよ。“初めて真面目なラブストーリーを撮る”というのも福田監督にとって新しい試みだったと思います。でも、それまでに培ってきた福田監督ならではの世界観が後押しして、面白みに繋がっているというのも確実にあると思うので、“コメディだから”って意識して演じているというよりも、“役と向き合う”ことに集中して演じていました。
山田孝之くんは“日本一のコメディ俳優”
長澤まさみ正直…当時は自分のことに必死で周りを見る余裕も全然なかった。こうして年を重ねて今思うのが、日本でこんなにコメディができる俳優ってなかなかいないなって。山田くんは日本一のコメディ俳優だと思います。
――それでは、当時と印象は違ったわけですね
長澤まさみ当時はお互いシャイだったし、現場でもあまり話さなかったんです。だから山田くんに対して印象がないまま撮影が終わってしまって。でも、こうやってまた共演してみてお芝居に対する取り組み方も、人間としての素晴らしさも全然変わってないなという印象を受けたし、むしろあの頃以上に魅力を増した山田くんがいました。「あ、この人すごいな」って気づけたのも若い頃、お互いにシャイすぎて話しづらかった過去があるからだと思うので。
長澤まさみそうですね。私は病気を抱えている女の子の役で山田くんはちょっと病んでいる男の子の役。現場で喋りづらかったのは演じている役の影響もあったと思います。やっぱり、その作品の状況によって実際の関わり方も変わっちゃうこともあるので。
確実に変わった恋愛観は…?「今はわりと恋愛に対して頭が固くなっちゃう」
長澤まさみ実際に大輔みたいな人が目の前現れたら…私は興味ないと思います(笑)。プレイボーイってことはいろんな人と話を合わせられるスキルもあると思うし、友達としては良いけれど、恋愛対象としてはちょっと…。
長澤まさみう〜ん…どうでしょう。以前、先輩の女優さんから現場で「大人になって物事の分別がつくようになると、結婚も考えすぎちゃうし、パートナーを選ぶことに対しても考えすぎてしまうようになる」と言われたことがあって。たしかにその先輩が仰ったように今はわりと恋愛に対して頭が固くなっちゃう世代にいるのかなと思います。そういう意味では昔と今とでは恋愛への考え方も違う気がしますね。
変化を恐れない長澤まさみの仕事論 「“当たり前の積み重ね”が新しい扉を開く」
長澤まさみ時には自分のアイデアを提案してやらせていただいています。実は人を笑わせることは昔から好きなんです。実は、家族の中では私が1番のムードメーカーなんです。
――長澤さんは“変わること”を恐れていない印象です。意識的に新しいことに挑戦しているのでしょうか?
長澤まさみ変化していくことに恐れは抱いていないですね。むしろ、私自身は、“新しいことをやっている”という感覚はないんです。新しいことへの道は“当たり前の積み重ね”がベースにあると思っています。お芝居の表現方法は映画・ドラマ・舞台とそれぞれ全部違う。だけど、その基礎にあるものは一緒だから、“新しいことへの扉”を開くにはやっぱり“積み重ね”が必須になってくるのかなって。だから、“新しいことをやりたい”というより、みんなが楽しくなるものを作れる人になりたいと思っています。
(文/Kanako Kondo 写真/TAKU KATAYAMA)
映画『50回目のファーストキス』
ハワイでコーディネーターをするプレイボーイの弓削大輔(山田孝之)はある日、カフェで出会った藤島瑠衣(長澤まさみ)に一目惚れ。しかし翌日、同じカフェで会った彼女は大輔のことを覚えていなかった。実は彼女は交通事故の後遺症により、新しい記憶は1日で消えてしまう短期記憶障害を負っていたのだった。
脚本・監督:福田雄一
出演:山田孝之、長澤まさみ、ムロツヨシ、勝矢、太賀、山崎紘菜/大和田伸也、佐藤二朗
オフィシャルサイト:http://www.50kiss.jp/
(C)2018 『50回目のファーストキス』製作委員会