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『ぎぼむす』に見る、無機質な“ロボット系主人公”ドラマが人気のワケ

  • ドラマ『義母と娘のブルース』(TBS系)で主演を務める綾瀬はるか(写真:鈴木一なり) (C)oricon ME inc.

    ドラマ『義母と娘のブルース』(TBS系)で主演を務める綾瀬はるか(写真:鈴木一なり) (C)oricon ME inc.

 綾瀬はるか主演の『義母と娘のブルース』(TBS系、略称『ぎぼむす』)が好調だ。初回視聴率11.5%という滑り出しを見せると、その後も徐々に上昇。綾瀬はるか演じる、感情表現を不得手とするバリバリな元キャリアウーマンが、ビジネス的な正論で空気を読まず、真っ直ぐに突き進むなかで、義理の娘や夫と心を通わせていくストーリーに、感動の声が続出している。そして本作同様に、無機質でロボットのような主人公が登場するドラマは、これまでにも度々制作され、人気を得てきた。ドラマのひとつのフォーマットとしても成立する“ロボット系主人公”作品の人気の理由とは?

『ぎぼむす』、ロボットみたいな綾瀬はるかが熱演 社会問題も斬るホームドラマ

 『ぎぼむす』人気の理由は、綾瀬はるか演じる元キャリアウーマンの“正しさ”だ。世の中はとかく白と黒とで分けられないことだらけ。理想や正論は頭でわかっていても、空気を読まなければならない場面に直面するケースは日々たくさんある。大人になれば、なおさらだ。

 しかし、綾瀬はるか演じる亜希子には、忖度はない。というか、「忖度」が理解できないから、自分が学んできた正論により、誰が相手でも平等に、ビジネスライクにぶつかる。だからこそ、仕事相手と同様に、再婚してできた小学生の義娘にも、体を直角に折り曲げ、深々と頭を下げて名刺を渡すし、家族になる自分を知ってもらうために履歴書を送る。

 また、取り上げるテーマ性の身近さにも、現代らしいアプローチがある。例えば、PTA活動のゴタゴタや闇を、PTAの重要性の再認識と改革というかたちに収束させた回には、共感の声が多数あがった。さらに、敵対関係として描かれてきたPTA会長に、媚びるでも屈するでもなく、かといって力でねじ伏せるでもなく、和解した後には主婦としての家事スキルを学ぶ亜希子のニュートラルさ。脚本を担当している森下佳子の確かな手腕を感じる、優しい結末はSNSで「落とし所が見事」などと、絶賛の声が多数あがった。

 このように、ガチガチに見える亜希子が、社会問題に斬り込みながら、家族や周囲の問題を解決し、と同時に徐々に人とのつながりを構築していくストーリーは、不思議と心を温かくしてくれる。現代のホームドラマの一つのかたちともいえるだろう。

『家政婦のミタ』『ハケンの品格』『家売るオンナ』…強烈キャラで人気ドラマに

 仕事は完璧だが、無機質で感情が薄く周りの目を気にしない。そんな主人公で思い浮かぶのは、『ハケンの品格』『女王の教室』『家政婦のミタ』(日本テレビ系)などの過去の人気ドラマ。いずれも共通点は、無機質でロボットのように正論を言う主人公が、空気を読まずに仕事を完遂する爽快さ。同時に、登場人物の様々な問題を解決しながら、時には社会問題にも斬り込んでいくストーリーに視聴者は引き込まれていくのだろう。

 例えば、『ハケンの品格』の大前春子(篠原涼子)は、数多の資格や免許を持ち、「社員より仕事ができる、時給3000円のスーパー派遣」。残業は一切せず定時に帰り、職場の人間との交流も一切持たないという強烈キャラだった。格差社会について盛り上がる社員に話を振られたときの一言「働かない正社員がいてくれるおかげで、私たち派遣はお時給をいただけるんです、それが何か?」に、溜飲が下がった視聴者は多かっただろう。特に派遣社員や下請け業者、フリーランスなど、弱い立場の者たちにとっては、この潔く痛快な言葉が強く刺さった。

 また、「派遣にとってバレンタインは年に一度、あー自分は正社員じゃなくてよかったと幸せをかみしめる日です」のセリフにも、共感の声多数。こちらは逆に、誰もがくだらないと思いつつもやめられない「慣例」を斬ることで、社員が抱える不条理を浮かび上がらせた。

 『ぎぼむす』脚本家の森下佳子の「師匠」にあたる遊川和彦が脚本を務めた『女王の教室』では、全身黒ずくめでひっつめ髪、無表情の女教師・阿久津真矢(天海祐希)が登場。「熱血教師」の真逆をいく冷たさで、冒頭から厳しい正論をぶつけてくる。
 「愚か者や怠け者は、差別と不公平に苦しむ。 賢いものや努力をしたものは、色々な特権を得て、豊かな人生を送ることが出来る。 それが、社会というものです」

 さらに、クラスから孤立し、教室に火を放った女子に対しても、慰めるどころか、真実を突き付ける。「まったくあなた達は、何か気に食わないことがあると、親が悪い、教師が悪い、友達が悪いと、人のせいにして。いい加減目覚めなさい。そんなことばかりしていると、自分では何も考えられない、思考停止人間になるだけよ」――当初は強権的な態度で児童を支配する「恐怖」の対象でしかなかった阿久津が、自身は憎まれながらも、社会の現実を厳しく教える「師」であることがわかった瞬間、大きな感動が生まれた。

無機質な“ロボット系主人公”が、人間味を取り戻していく過程が視聴者を魅了

 また、無機質でロボットのような主人公のドラマが、他の問題解決型ドラマと異なる点として、主人公の“成長ストーリー”という一面も挙げられる。

 『女王の教室』と同じ遊川和彦脚本の『家政婦のミタ』の家政婦・三田の場合、依頼されたことは全て忠実にこなすが、常に無表情というミステリアスキャラ。甘えてくる雇用主に対し、口癖のように「それは業務命令ですか」と確認するのは、冷たく無機質に見えて、業務に忠実であるため。そして、「家族」を特別なつながりととらえているからこそのことであった。

 だが、家族の問題には一切立ち入らないというスタンスを貫いてきた三田が、物語の舞台である阿須田家と交流していくことで徐々に人間味を取り戻していく。その一方で、不幸が次々に訪れると、それを自らが招いたことと感じて自分を責め、夫と子を亡くした過去、そして「ロボット」と化した理由について明かす。
 「私は自分の意思を持ってはいけない人間だからです。私が自分の意思を持つとみんなが不幸になります。私が愛した人達はみんないなくなりました。私の心にはもう何も残っていません。私はロボットのように命令されたことだけをやっていればいいんです」

 最初は無慈悲で何を考えているかわからなかった三田が、人間らしい感情を見せていく過程に、視聴者は涙し、感動し、応援したいと感じた。このように、無機質な“ロボット系主人公”ドラマのフォーマットは、問題解決型としてだけでなく「根はいい人」が何らかの事情で感情を封印し、蓄積させてきた挙句に爆発させ、人間味を取り戻していくヒューマンドラマとしても成立している。

 かつても度々名作が生まれ、今や王道のストーリー展開とも言える“ロボット系主人公”ドラマ。無鉄砲な手法で様々な問題解決をしつつも、人間味も感じられるストーリー展開に、現代社会の堅苦しさ、生きづらさと、追い求め続けている理想を観ることができるのだろう。
(文/田幸和歌子)

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