• ORICON MUSIC(オリコンミュージック)
  • ドラマ&映画(by オリコンニュース)
  • アニメ&ゲーム(by オリコンニュース)
  • eltha(エルザ by オリコンニュース)
ORICON NEWS

【連載14】SMAPのいない“紅白”に何を感じるか? 5人の歌がくれた名場面

タモリを見送った「ありがとう」 SMAPが歌った数々の名場面

 12月21日に発売されるベストアルバムで、ファン投票2位にランクインした「BEST FRIEND」は、4枚目のシングル「負けるなBaby!〜Never give up」のカップリング曲だ。本来なら、CDを買ったりライブに足を運んだりするファン以外知ることのなかった歌を、森且行が最後に出演した“スマスマ”で、中居は敢えてピックアップした。ライブで披露されたことで人気曲になった「らいおんハート」のカップリング曲「オレンジ」のように、歌い手はその歌を世に生み出した張本人ではなくても、誠実に歌うことで歌を“育てる”ことができるのだ。そう考えると、つくづく、SMAPのもとに産み落とされた歌は、あんなに魅力的な5人(96年5月までは6人)の親に愛され、育てられて、それぞれがとても幸せものだなぁと思う。

 楽曲提供された曲以外にも、たとえば中居正広が手がけたメンバー紹介ソング「FIVE RESPECT」が、『めちゃ×2イケてるッ!』(フジテレビ系)の企画で、ナインティナイン・岡村隆史のSMAPライブ潜入企画を通して地上波で披露されたこともあるし、『笑っていいとも!』のグランドフィナーレでは、司会のタモリを労うべく、SMAPの5人がタモリを囲んで「ありがとう」を歌う場面もあった。普段は共演することのないお笑い芸人たちの共演も話題だったが、タモリの司会者としての功績を讃え、感謝するための場に相応しかったのは、どんなに優れたスピーチよりも彼らの心のこもった“歌”だった。長くレギュラーを務めた中居、草なぎ剛、香取慎吾以外に、木村拓哉と稲垣吾郎も駆けつけ、湿っぽくなりがちな場の雰囲気が、グッと明るく華やかになった。SMAPの曲を歌うために、メンバーが世話になったその感謝を伝えるために、集結した5人。「ありがとう」は、草なぎの主演したドラマ『僕の歩く道』(フジテレビ系)の主題歌で、ライブでも何度か聴いたことがある曲だったが、あのときほど、しみじみと“いい曲だ”と思ったことはない。

 歌唱に、不器用さが残るせいか。バラエティで持ち歌を披露するとき中居にテレが生まれるせいか、不思議なほど、あのときの「ありがとう」の歌詞は心に響いた。“こんなにも素敵な人がそばにいてくれた”“何よりも君と出会えることができてよかった”と――。

 ポピュラー音楽は、歌手に歌われることで生き、変容し、成長する。たくさんあるシングルの一曲として、“ライブのアンコールにピッタリな曲”という立ち位置に落ち着きそうだった「ありがとう」が、この番組を観た人にとっては、人生で大切な人と出会ったことに感謝するとき思い出すような、普遍的な曲になったのである。

SMAPのいない“紅白”を観ることで、存在の大きさを感じる

 ここ一番の場面で披露するたび、必ず何か心温まるストーリーを運んでくるSMAPの歌が、現時点では“紅白”では披露されないことが濃厚になっている。でも、一ファンとして、“紅白”でSMAP5人の姿が観たいかと聞かれたら、個人的には「NO」だ。5人でSMAPの歌を歌う姿が観たいのはやまやまだが、その舞台が“紅白”の一コーナーだったとしたら、彼らはきっと番組を盛り上げることに徹するだろう。SMAPはこれまでずっと“他者のために”歌ってきた。あるいはファンに何かを“誓う”ために歌ってきた。大事に育ててきた歌の、さらなる成長を夢見て、精一杯のパフォーマンスをしてきた。私たちが観たいのは、聴きたいのは、お仕着せの、その番組を盛り上げるためのパフォーマンスではない。これからも成長していく歌であり、彼らが守り育てる歌なのだ。

 とはいえ、これはあくまでも私見であって、「コタツにはミカンがないと……」と落胆しているSMAPファンや、お茶の間の“紅白ファン”もいることだろう。一アーティストの“紅白不出場”のニュースが、こんなに世間をザワつかせるなんて。今は、もしかしてSMAPにまったく関心のなかった人が、何気なくSMAPのいない“紅白”を観ることで、SMAPという存在の大きさを感じることもあるのかもしれないと思ったりもする。

 世に産み落とされ、広く知れ渡った歌は、いつまでも死なない。SMAPの歌は、現時点でも、これから先もずっと歌い継がれる普遍性を獲得していることはわかっている。でも、彼らの音楽は、これからだってもっと生み出されてもいいし、まだまだ化けるかもしれないとつい期待してしまう。彼らがすぐ側で歌ってくれなくても、人生の折に触れて、きっとSMAPの歌を思い出すことがたくさんあると思うから、何年か先でもいい。彼らが、SMAPみんなで育てた音楽を愛し続ける限り、この区切りが、何かのはじまりであってほしい。

 なんだか、12月31日はSMAPを思いながら、「ありがとう」をひたすらヘビロテしてしまいそうだ。ここ3ヶ月、彼らを困らせたいわけでも、引き止めたいわけでもなくて、ただ“愛する人へ、ありがとう”と伝えたかったし、今も伝えたい気持ちは消えない。
(文/菊地陽子)
【連載 1】SMAP解散がもたらした喪失感 終わらないことは“残酷”なのか?
【連載 2】SMAPにとっては“異色”だった国民的ソング「世界に一つだけの花」
【連載3】SMAPきょう25周年 記者が見た5人の真実 PART1
【連載番外編】記者が見たSMAPの真実 PART2 〜中居正広と木村拓哉の素顔〜
【連載番外編】記者が見たSMAPの真実 PART3 〜稲垣吾郎・草なぎ剛・香取慎吾の素顔〜
【連載4】逆境に強いSMAP ライブで見せた成長と結束の物語
【連載5】SMAPのベスト盤 木村の歌を中居がプッシュしたあの日
【連載6】SMAP中居正広 自分たちにタブーは作らない、“自虐”という神センス
【連載7】SMAP木村拓哉 バッシングされるスーパースター、逃げない男の真実
【連載8】SMAP稲垣吾郎 個性派集団の中のバランサー
【連載9】SMAP草なぎ剛 嘘のない“5番目の男”がSMAPを予測不可能な未来へ
【連載10】SMAP 5人の役割を考察:香取慎吾 末っ子が生きてきたSMAPという人生
【連載11】SMAPベストアルバム 5人を信じ愛し続けるファンからのメッセージ
【連載12】“スマスマ”やライブで伝わる、SMAPの本当の歌ごころ
【連載13】騒動が引き金に、あらためて気づく自分の中の“隠れSMAP”

あなたにおすすめの記事

 を検索