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ORICON NEWS
【連載 2】SMAPにとっては“異色”だった国民的ソング「世界に一つだけの花」
SMAPらしからぬ“正論”を歌った「世界に一つだけの花」
一般的には、2003年に草なぎ剛が主演したドラマ『僕の生きる道』(フジテレビ)の主題歌として知られるが、2002年7月に発売されたアルバム『Drink! Smap!』からのシングルカットである。2002年のSMAPの夏のライブは、初のスタジアムツアーで、「世界に一つだけの花」は本編のラストで歌われた。
SMAPの曲は、観客が一緒に踊れるような振付のある曲は少ない。周囲と同じ動きを意識せず、好き勝手に楽しめるのも、SMAPのライブの良さだと、個人的には思っていた。なのに、「世界に一つだけの花」にはちゃんと振付がついていて、私にとってのツアー初日となった静岡スタジアムでは、すでにリピーターになっているファンが率先して振りを合わせていて、内心“何か違う!”と思ったものだった。
歌詞の内容だって、「君は君だよ」(1993年9月9日発売のSMAP9枚目のシングル)と同じではないか。もちろん、普遍性のあるいい曲なのはわかっていた。でも、それまでのSMAPの曲は正論をかざさず、どこかに反逆の精神みたいなものを内包していて、そこがファンキーで魅力的だった。あくまで個人的には。
従来のアイドル歌謡になかった「がんばりましょう」「夜空ノムコウ」
阪神淡路大震災直後の『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)で、SMAPがこの曲を歌った時、日本におけるアイドルの役割がひとつ、広がった。それまでは、男性アイドルグループの音楽は基本的にラブソングか青春の儚さを歌う曲がほとんどで、働く人々に訴えかける“日常的な応援ソング”などほとんど存在しなかったのだ。
1998年1月「夜空ノムコウ」発売。ノンタイアップの8インチシングルは、その前年から『SMAP×SMAP』(フジテレビ系)で部分的に披露されていた。それを初めてフルで聴いた時の衝撃たるや。私がスガ シカオの名前を知ったのは、1997年にリリースされたSMAPのアルバム『ス』に収録された「ココニイルコト」のクレジットだった。木村拓哉と香取慎吾が2人で歌うそのバラードがあまりに名曲だったため、そこからスガのアルバム『Clover』を即買いに走ったほどだ。作曲は川村結花だが、「夜空ノムコウ」に漂う無常観は、やはりあの歌詞によるところが大きい。
「夜空ノムコウ」をSMAPの5人が歌う説得力。それは、リリースの1年半前に、森且行が脱退し、そこから全員が奮起し、ドラマで主役を張れるまでに成長したというストーリーに裏打ちされている。<あれからぼくたちは 何かを信じてこれたかなぁ>の、<ぼくたち>の中には、森という存在も含まれていたような気がしたし、もっと言えば、森の不在を乗り越えたファンである自分も、同じ気持ちで“何かを信じてこれたかなぁ”と自問しているような気持ちになった。「がんばりましょう」で、“カッコ悪いのはオレたちも一緒だぜ”と聴き手のいる場所まで降りてきてくれたアイドルは、「夜空ノムコウ」で、<悲しみっていつかは 消えてしまうものなのかなぁ>と、自分たちの痛みを素直に曝け出した。スガ シカオは、サラリーマン生活を経て、30歳でミュージシャンとしてデビューした遅咲きのアーティストである。20代前半から半ばのSMAPに、30男の哀愁を歌わせたことも、従来のアイドル路線にはなかったことだ。