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【連載12】“スマスマ”やライブで伝わる、SMAPの本当の歌ごころ
『ナカイの窓』で中居が自虐的に語った「Fly」という曲
11月9日放送の『ナカイの窓』(日本テレビ系)のトークテーマは“歌の上手い人”。ミュージカル女優の新妻聖子が、歌をうまく歌うコツについて、「歌詞に感情を乗せること」と語った時、中居は「俺なんか、SMAPの曲でサビ前の“ぜ〜”から入る曲があって、ストーリーに気持ちを乗せろとか言われても……」とボヤきつつ巧みに笑いを取っていた。<だけど胸の扉もう開くべきだぜ>という歌詞の、サビ直前の“ぜ”。流れ星を、夜の涙に例えた冒頭からずっとメンバーのソロで繋がれた曲は、その一音で初めて5人の声が結集する。番組では、中居のソロ曲やSMAPでの歌にそれぞれに思い入れのあるゲストに対して、「聴いて、『Fly』って歌」と、さり気なく勧めていた。
年末発売のベストアルバムに収録される50曲には選ばれなかったけれど、石井克人監督が監督したミュージックビデオはショートフィルム仕立てで、映像や楽曲のみならず、仲間を助けるために集結したSMAPが、追っ手から逃れるために屋上に向かい、最後は鳥の羽を散らしたまま消えるというストーリーも、痺れるほどにカッコイイ。
観客を裏切るための前振りのよう 1位の「STAY」もまた――
“歌詞に感情なんか乗せたことはない”“音程を外さないように歌うだけで必死”と、中居は自分の歌について、たびたび自虐的に語るけれど、SMAPのライブを一度でも観たことのある人なら、中居が本気を出したときの、その声に含まれる温度や湿度の高さに、胸を打たれたことがあるはずだ。ライブでの中居を観ていると、歌に対する自虐は、ライブで観客を幸福に裏切るための壮大な前振りのように思えてくる。10年前なら、その嬉しい裏切りをくれた曲が「STAY」だったし、2年前のゲスの極み乙女。の川谷絵音が提供した「好きよ」(アルバム『Mr.S』収録)という曲は、香取のソロから入って最後に中居のソロで終わるその歌割りも新鮮で、歌詞に歌われた無骨で切ない男心と、SMAP5人の歌唱のいい意味での不器用さが見事に調和して、深く胸を打った。「君色思い」の歌い出しや「好きよ」のソロなど、中居の少し掠れた、でも温もりのある声質は、男の“切なさ”を表現するのに、とても適していると思う。
「まだ伸び代がある」、曲の世界観を具現化する才能に長けた5人
草なぎ剛が以前、「SMAPにはまだ伸び代がある」と話していたのは、そういうことも含まれるのかもしれない。歌が下手とか上手いとか以前に、SMAPの5人は、曲の世界観を具現化する才能に長けている。歌詞の奥にある真意を伝えたり、シンプルに楽しい気分にさせてくれたり、力強く励ましたり。何より、五人五様の声が重なった時、一聴して“SMAP”とわかる。拙さや不器用さも含めて、唯一無二の声の特徴があることは、歌い手としては、大きな強みであるはずだ。