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ORICON NEWS
自転車で冒険に出よう。キャンプツーリング紀行 inアラスカ【Part1 出発編】
原野の中を一本の細い線となってまっすぐ延びる道を行く。
野生動物の存在を身近に感じるヒリヒリとした緊張感の中で、与えられた自由と開放感。
時速20km。夏のアラスカを自転車で旅する。
和田義弥(わだ・よしひろ)
旅やアウトドアなどのジャンルを中心に記事を執筆するフリーライター。これまで自転車でアラスカやフィリピンを、オートバイで世界一周をキャンプツーリングした経験を持つ。現在は茨城県筑波山麓の古民家で田舎暮らしを実践中。著書に『キャンプの基本がすべてわかる本』(エイ出版社)などがある。
01 段ボール箱で運んだ自転車
アンカレッジの空港で、機内に預けていた大きな段ボール箱を係員が持ってきた。箱の中には、パーツをばらして小さくたたんだ自転車が入っている。
日本からアラスカまでの自転車の運搬代は1万4000円だった。この料金は航空会社や路線によって異なり、1台いくらと決められていることもあれば、重さや大きさで決まることもある。ダダの場合もある。
空港を出て、駐車場の一角で段ボール箱を開け、30分ほどかけてバラバラになった自転車を組み立てた。
「その自転車でどこまで行くんだ?」
「北へ。デナリからフェアバンクスへ。その先は、まだ決めていないんだが、約1カ月、アラスカを自由に旅して回ろうと思ってる」
「夏は君みたいなやつがいっぱい来るよ。ここには日本やヨーロッパ、アメリカ本土の都市にはない自然と自由がある。ただし、そのほかには何もないがね。グッドラック!よい旅を」
それだけ言って男は去っていった。
何もないというのがいいじゃないか。氾濫する物事も社会の不自由さもここにはない。
この瞬間から私は自由である。自分の判断と行動がすべてだ。
携帯用の空気入れでタイヤを膨らませ、荷台にキャンプ道具一式を入れたバッグを引っかける。この自転車で夏のアラスカを旅するのだ。
02 クマが出るキャンプ場
キャンプ場は森に囲まれていて、受付の女性が言うにはしばしばブラックベアが出るらしい。
「食料はテントの中に入れちゃダメよ。離れた場所に置いてね」と注意された。これはアラスカやカナダでキャンプをするときの鉄則だ。食料を入れておくための頑丈なロッカーを備えているキャンプ場もある。