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お菓子から推しの対象に? 映画公開の『たべっ子どうぶつ』が守り続ける“あの頃の味”、定番を継続させる秘訣とは
『たべっ子どうぶつ』シリーズ商品(画像提供:株式会社ギンビス)
カプセルトイをきっかけに、10〜20代のタッチポイントを増やしたグッズ展開
若い世代とのタッチポイントを増やすきっかけとなった『たべっ子どうぶつ』のカプセルトイ(画像提供:株式会社ギンビス)
「もともと『たべっ子どうぶつ』はお子さまに安心して与えられるお菓子として、親世代が主な購買層でした。一方で10〜20代とのタッチポイントが弱かったことも課題でした。カプセルトイをはじめとするグッズ展開は、やがて親世代となる若い世代の方々に対して、お菓子とは違った角度からアプローチし、ファンを増やすための施策でした」
2019年は推し活ブームが本格的に盛り上がる"前夜"だった。
「当時はむしろ喫茶店やアナログレコードといった昭和レトロブームが盛り上がっていました。たべっ子どうぶつのグッズに対しても『懐かしい』『小さい頃によく食べた』というリアクションが多かったですね。SNSではパッケージと同じ並びで、9体の動物さんたちのグッズを配置した投稿をよく見かけました」
それから6年。近年はたべっ子どうぶつの箱推し勢のみならず、特定のどうぶつを単推しする人も増えている。
「グッズ展開が始まった当初は、9体がまとまった形でないと『たべっ子どうぶつ』としては認識していただけませんでした。やがてさまざまな企業さまからコラボのお声がけをいただくなどして、動物さんたちの姿が多くの方の目に触れたことから、1体1体の可愛らしさや個性に気づいていただけたのかなと思います。カラフルなキャラクターも、"推しカラー文化"と親和性があったのかもしれません」
ただ可愛くて癒されるだけではない、描きたかったのは“お菓子の本質”
映画『たべっ子どうぶつ THE MOVIE』場面写真(C)ギンビス (C)劇場版「たべっ子どうぶつ」製作委員会
「弊社の営業車には『たべっ子どうぶつ』のキャラクターたちがプリントされているのですが、それを街で見かけたプロデューサーの須藤孝太郎さんから映画化のお話をいただいたんです。弊社もより広い層へのタッチポイントを増やす施策として映像化をしたいと考えていた頃でしたので、とてもありがたいご提案でした」
キャラクターがラッピングされたギンビスの営業車(画像提供:株式会社ギンビス)
「映像に関しては弊社はまったくの素人ですので、どうぶつさんたちの色やフォルム、そして『お菓子に夢を!』『お菓子を通して世界平和に貢献する』という弊社の企業理念を守っていただきたいとお願いし、クリエイターのみなさんの自由な発想とご経験にお任せしました」
映画『たべっ子どうぶつ THE MOVIE』場面写真(C)ギンビス (C)劇場版「たべっ子どうぶつ」製作委員会
映画『たべっ子どうぶつ THE MOVIE』場面写真(C)ギンビス (C)劇場版「たべっ子どうぶつ」製作委員会
天候や季節によっても味を微調整、企業命題として“あの頃の味”を守り続けるワケ
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1978年当初のパッケージ(画像提供:株式会社ギンビス)
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現在のパッケージ(画像提供:株式会社ギンビス)
「製法やレシピを変えなければ味を守れるわけではありません。特に近年は気候変動で、小麦粉などの原材料の味そのものが変わっています。また季節によっても味の出方が変わりますので、工場では日々の微調整が欠かせません。さらに社長が毎日、工場から出荷される『たべっ子どうぶつ』を食べてチェックするなど、会社全体で"あの頃の味"を守る努力を続けています」
近年は、惜しまれながら生産終了となるロングセラーお菓子が目立つ。お菓子のトレンドの移り変わりはますます加速しており、定番を生み出す以上に、継続することはますます難しくなっている。
「弊社のお菓子が最も重視しているのは、安心安全に召し上がっていただけること。そのために大切なのはトレンドを追いかけるよりも、"あの頃の味"を守り続けることだと考えています。積極的に新商品の発売を続けながらも新フレーバーは奇抜さではなく、誰もがホッとできる飽きのこない味を目指しています。その上でトレンドのお菓子にも負けないように、これからもさまざまな形で『たべっ子どうぶつ』に親しんでいただける施策を考えていきたいと思います」
世界20ヵ国以上の国と地域で発売されている『たべっ子どうぶつ』は、世界の子どもたちにとっても"あの頃の味"となりつつある。映画も「世界展開を目指したい」と意欲を燃やしているだけに、「お菓子を通して世界平和に貢献する」というギンビスの理念が広く伝わることに期待したい。