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青春キラキラから戦隊ものまで…“医療ドラマ”の汎用性、「あるある言いたい」ツッコミ視聴が時流
“新たな要素”を常に提示、進化し続ける医療ドラマコンテンツ
一方、『TOKYO MER』も同じく“救命”系だが、こちらはゴリゴリの“医療戦隊ヒーローもの”としてSNSでは認知されているようだ。主演の鈴木亮平は、どんな現場にも果敢に突入し、必ず患者の命を救うという正義感あふれるスーパーマンキャラ。準主役的なポジションである賀来賢人は、主人公と反目するブラック的なキャラ(MER解体の密命を受けている)でありながら、ピンチな展開のときにはカッコよく助けにきてくれたりする。また、危機管理対策室という医師たちに指示を出す司令塔のような基地?があるのも戦隊ものっぽい。コロナ禍の現在、現実の医療従事者にもヒーロー的側面があるだろうことを視聴者はリアルに感じているはず。そうした意味では時代にマッチしているドラマともいえ、視聴者の共感につながっているのではないだろうか。
コメディー、SF、ミステリー…どんなジャンルとも融合する汎用性
しかし、ここまで“あるある”が盛り上がるのも、過去にさまざまな医療ドラマが制作されてきたからこそ。いくつか振り返れば、「リアル追求」系として『コード・ブルー‐ドクターヘリ緊急救命‐』があり、救命治療の緊迫した状況下における医師たちの成長や、患者との物語が総合的に描かれる。また、かつての“赤ひげ系”ともいえる「人情もの」では、『Dr.コトー診療所』(フジテレビ系)などが挙げられ、技術的なリアルさや迫力というよりは、医師をとりまく周囲の人間関係にスポットが当てられている。最近では、『にじいろカルテ』(テレビ朝日系)などがこの路線だろう。
そして、緊迫しがちな医療ドラマにも「コメディ」系があり、『ナースのお仕事』(フジテレビ系)は看護師からの視点で描かれ、先輩ナース(松下由樹)と後輩(新人)ナース(観月ありさ)のドタバタ劇がウリで、松下の「あ〜さ〜く〜ら〜!」のセリフは今でも親しまれている。変わって、欲と権力にまみれた「アウトロー」系でいえば、『白い巨塔』(フジテレビ系/テレビ朝日系)や『振り向けば奴がいる』(フジテレビ系)があり、院内の派閥争いや医療現場の闇部分が描かれ、人の命を救う“だけ”がテーマではない。
さらに、石原さとみ主演の『アンナチュラル』(TBS系)にはミステリー要素が含まれ、司法解剖された遺体から事件を読み解いていくという「推理」系となっている。“法医学”にまでジャンルを広げれば、人気の高い『科捜研の女』(テレビ朝日系)もこれに近いだろう。最後に『JIN‐仁‐』(TBS系)も挙げておくと、現代の医者がタイムスリップするという設定から「SF」系といえるだろうが、医学的根拠に基づく医療の発展をしっかり学べるし、壮大な歴史ドラマとしての側面がある。
現実との剥離がドラマのおもしろさ、作品性を提示できないと諸刃の剣に
つまり、医療ドラマは当たればデカい“鉄板”ながら、ディテールを外せば視聴者に酷評される可能性もあり、制作の上ではどんどんハードルが上がる一方ともいえる。今期の両ドラマは新たな要素を提示して健闘しているが、医療ドラマはある意味、諸刃の剣的な側面を持つコンテンツとなりつつあるのかもしれない。