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斉藤由貴×武部聡志、40年の信頼が生む"新発見" 初のフルオーケストラ公演で「想像を超える、新しい音楽を届けたい」

 今年9月より、「billboard classics『斉藤由貴 Premium Orchestra Concert』〜produced by 武部聡志」が兵庫、東京、神奈川の3都市で開催される。斉藤が全編フルオーケストラ演奏のコンサートに臨むのは今回が初。気鋭の音楽家・岩城直也による新しいオーケストレーションのもと、珠玉の名曲が生まれ変わるという。さらに、本公演スタート直前の9月10日に還暦を迎える斉藤にとっては、バースデーアニバーサリーという意味合いを持つコンサートでもある。デビュー曲「卒業」以来、数々の名曲をともに生み出してきた斉藤と武部。40年以上の信頼関係で結ばれた二人に、公演への思いを聞いた。

長年の信頼関係から探求する「新発見の斉藤由貴」

――今回の共演は、シリーズの性質上、まずは武部さんから斉藤さんにオファーされたのだと思いますが、実現の経緯は?

斉藤由貴(以下、斉藤)武部さんに呼ばれて断れる人なんていませんよね(笑)。

武部聡志(以下、武部)由貴ちゃんはすぐこんなことを言うけど、彼女は僕の還暦祝いのライブ(『武部聡志 Original Award Show 〜Happy 60〜』/2017年)のとき、「私が行かないでどうするの?」と言って出てくれたんですよ。だから、僕も今回は同じ思いでした。やっぱり40年以上の付き合いですから、彼女の節目に、「自分が何かやらなくてどうするの?」って(笑)。

――武部さんの音楽活動45周年を祝うコンサートでは、フルオーケストラをバックに斉藤さんは数曲歌われましたが、全編フルオーケストラ演奏のコンサートは今回が初めてだそうですね。正直、ちょっと意外でした。

斉藤ありそうな感じがしますよね。すごく大雑把な言い方をしちゃうと、武部さんは元々音大出身ですし、デビュー曲の「卒業」から、武部さんにお願いしていた時期の楽曲はオーケストラとの相性も良さそうですし。当時、武部さんもそういった意識でアレンジをしてくださっていたような記憶もあります。

――そうなんです。だから、今回はまず間違いなくハマるでしょうし。

武部だからこそ、その「間違いなくハマる」ではないもの、つまり、そういう大方のお客さまの想像の範疇を超えるようなものを目指そう、というのが今回の僕のプラン。「この曲にこんなアプローチがあったの?」とか、「由貴ちゃん、こんな歌い方もするんだ?」といった新発見の斉藤由貴が見られるような、ね。

斉藤いま武部さんがおっしゃったことのいくつかはすでにできないような気がしますが…(苦笑)。

――いきなり弱気にならないでください(笑)。

斉藤でも、そんな私ですが、今回のオーケストレーションを本当に楽しみにしていて。私のわくわくと武部さんのプランの相乗効果で新しい何かが生まれるといいなぁ、と心から思っているんです。果たして、そこから表出されるものは、例えば「宇宙」のようなものなのか、あるいは「世界旅行」のようなものなのか、私にもまだわからないのですが。

原曲の魅力を若い感性で昇華 予定調和を超えるサウンドに

――セットリストには、すでに着手されていらっしゃるんでしょうか?

武部さっき、このインタビューの前に最初の打ち合わせをしたばかりです。

斉藤難しいですよ。「やっぱりこれはやらなきゃね」という曲だけでもかなりのボリュームになってしまって。曲順も、昨年の40周年ツアー(『40th Anniversary Tour“水辺の扉”〜Single Best Collection〜』)のときはそのときなりにベストなセットリストを考えたつもりでしたが、当然そこからも変えていきたいし…。それをフルオーケストラでやったとき、最もドラマチックで効果的な流れが生まれるようにするのが、一つのキーなのかな? と思いを巡らせながら、まさに悩んでいる最中ですね。

武部原曲のアレンジからどのくらい離れるべきか、ということも、もう一つのキーになると思います。40周年ツアーのときは、原曲のアレンジを忠実に再現するということが大きなテーマでした。でも、今回はフルオーケストラで、しかもアレンジは僕よりも若い岩城直也くんが手がける。ある意味、原曲から離れられる状況が揃っている。とはいえ、重要な世界観や大事なフレーズを崩したくはない。そうしたせめぎ合いから、どんな新しいサウンドや楽曲世界を、お客さまはもちろん、由貴ちゃんにも体感してもらえるのか。本番まで、探求していこうと思っています。

――「billboard classics」における武部さんプロデュースの「Premium Orchestra Concert」は、薬師丸ひろ子さん、川崎鷹也さん、KREVAさんと続いて今回で第4弾です。武部さんにとって、このシリーズの醍醐味とは?

武部「自分一人ではできないこと」かな。岩城くんは僕よりはるかに若いし、毎回ご一緒しているNIPO(Naoya Iwaki Pops Orchestra)のなかにも若いミュージシャンがたくさんいる。おのずと、いわゆる権威的なオーケストラとは違ったアプローチをお客さまに届けることができる。つまり、予定調和にならない。それって、音楽家を続ける上で、とても重要なことですから。僕自身、学びも多く、楽しみながらやれていますね。

葛藤を抱えながらも歌い続ける理由 40年かけて築いた斉藤由貴の音楽世界

――一方、斉藤さんは武部さんと制作されたセルフカバーアルバム「水響曲」シリーズをはじめ、近年は俳優業のみならず、音楽活動を継続的に展開されていらっしゃいます。ファンの一人としても、うれしい限りなのですが。

斉藤続いていますよねえ…。自分でもびっくりです(苦笑)。正直に言うと、毎回、「大丈夫かな」と思いながらステージに立っています。言い訳がましいけど、やっぱり私は歌がものすごくうまいわけではないし、あくまで自分の世界を持ち込んでステージに立っているだけというか…、という表現は語弊があるかもしれませんが(苦笑)。ともかく、そういう表現の仕方でもいいとお客さまに生かされ、ここまでこられたような歌手なので、ずっと、「これでいいのだろうか」という疑念を抱えたままなんですね。ましてや、いま私が歌っている曲の多くは、基本的には20歳そこそこのアイドル歌手だった時代の歌。それを、この年齢になっても歌い続けていることへの違和感というか、乖離のような感情を、自分の中でどう擦り合わせたものかという思いは、自分にとって、ずっとクリアできない課題のようなもので。

――そういうものですか。

斉藤ええ。でも、近年、歌の活動が活発になっていることもまた事実で。出だしはいつも、武部さんが「いい曲たくさんあるんだから、やらなきゃもったいないよ」と声を掛けてくださったり、私のマネージャーさんやスタッフの方々が、「やりましょうよ」と背中を押してくださることで、「…そうですか?」と、恐る恐るはじまる感じなんです。でも、いざやってみると、毎回、自分の人生の時間に美しい彩りを与えてもらえるような体験をさせていただいて。

――それはすばらしいことですね。

斉藤はい。そして、そこにはもしかすると、回顧的なニーズだけではない、何かしらの理由や意味も横たわっているのかもしれないな、というちょっとポジティブな思いもようやく芽生えてきて。それを探るために続けていられているような感じもありますね。

武部由貴ちゃんはそう言うけれど、1980年代にデビューしたものすごい数の“アイドル”や“女優”と呼ばれた方々のなかで、こうして 40年以上も続けてこられているという事実は、それだけで自分の世界をちゃんと確立した人だという証ですからね。そんな斉藤由貴という音楽世界の、最初の一歩を作った一人という自負が僕にはある。由貴ちゃんのファンには、斉藤由貴を、いわゆる当時の“アイドル”として追っかけていた方もいれば、アルバムアーティストとしてとらえ、今でも楽曲をじっくり聴き込んでくれている方がたくさんいてくださって。

――まさにそうですね。

武部それが送り手側としては本当にうれしい。なぜなら、当時、由貴ちゃんの周りに集まっていたスタッフは、僕も含めて、「単に売れる曲を作ろう」とか、「このアイドルを売って金儲けをしよう」といった思いを持った人なんて、一人もいなかったから。ディレクターも、作家の人たちも、「彼女が持つ独自の世界を音楽にしよう」と真剣勝負だった。だから、こうしていま聴いても遜色ないような楽曲が揃っているのだと思います。あの頃、思いを込めて、全力で作っておいてよかった。ましてや、2026年に今回のような試みができるのだから、一生懸命に作っておいた甲斐がありますよ。

斉藤ありがとうございます。

互いの現在地 今を生きる意味と、「やり続ける」ことの意義

――今回の公演は9月10日に斉藤さんが還暦を迎えられた直後の開催となります。そして武部さんは来年2月12日で古希です。実感としては、「早いなぁ」ですか? 「長いなぁ」ですか?

武部僕はあっという間だね。どう、長い?

斉藤私は両方ですねえ。あっという間なところもあったし…。最近、ふと、「この歳まで生きたなぁ」とは、実感しますね。それは、「歳をとっちゃったな」という意味ではなく、率直に、「そうか、この歳まで生きたのか」と。昔から長生きすることに対して、あまり期待や希望を持っていなかったし。

武部それこそ僕らの若い頃は、「100歳まで生きるぞ」と口にする人なんていなかったし、世の中で“人生100年”なんて言い出したのも割と最近のことだからね。

斉藤そうなんですよね。だから、例えば、身近な人がお亡くなりになったり、もしくは若くして亡くなってしまう方についてのニュースを見聞きしたりすると、善し悪しではなく、自分がいま生きているという事実そのものを、重く、深く感じるようになりましたね。でも、一方で、歳を重ねたことで気が楽になってきた部分もあるし。

――とはいえ、斉藤さんは歌にお芝居、武部さんもさまざまな現場から一年中引く手あまたの状態です。

斉藤武部さんの現在のご活躍は、昔から知っている私からすれば、「そりゃそうですよ」という感じで何の不思議もありません(笑)。昔から音楽のことで行き詰まると、武部さんは必ず、「何でも言って。何でもできるから」とおっしゃってくださる。そんな頼もしいことを言える方なんて、なかなかいませんよ。それだけの技術と知識と情熱を兼ね備えて、にもかかわらず、ずっとこうしてストイックでいらして。

武部そんなにたいしたものじゃないよ(笑)。ただ、大変でも、「やり続ける」が一番大事、とは思うよ。歳を重ねれば老化も劣化もするし、若い頃のようなスピード感も失われる。でも、その落ち方を緩やかなカーブにするための努力はしなきゃならない。そのためには、「やり続ける」しかない。僕の場合、今のペースで仕事を続けているからこそ、現状の自分をキープできているというか。「もういいや」となったら、たちまち技術も感性も体力も落ちると思う。忙しさが、いい状態をキープする秘訣だと思います。でも、お互い、そうじゃない?

斉藤そうですね。武部さんほどたくさんはできませんけど(笑)。

――では、最後に、公演を楽しみにされている読者へひと言お願いします。

斉藤もしかしたら、「billboard classics」とか、フルオーケストラという言葉の響きに、少し敷居の高さみたいなものを感じてしまわれる方もいらっしゃるかもしれませんが、まったくそんなことはないので。オーケストラのすばらしさと、私が歌う十八番(おはこ)の曲が出会い、新しいものが生まれていく様子を、一緒にわくわくしながらご覧いただけたらうれしいです。

武部そうだね。曲は何と言っても名曲揃い。でも、いわゆる“懐メロ”を聴きに行くという感覚ではなく、「新しい音楽を聴きに行く」という気持ちでいらしていただけると、より一層楽しんでいただけると思います。ぜひ、いらしてください。

取材・文:内田正樹
撮影:石阪大輔
<公演情報>
『billboard classics「斉藤由貴 Premium Orchestra Concert」〜produced by 武部聡志』
9月17日(木) 兵庫・兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホール
9月25日(金) 東京・昭和女子大学 人見記念講堂
10月2日(金) 神奈川・ミューザ川崎シンフォニーホール

主催・企画制作:ビルボードジャパン(阪神コンテンツリンク)
制作協力:ハーフトーンミュージック
後援:米国ビルボード、ビクターエンタテインメント
  • 岩城直也

    岩城直也

出演:斉藤由貴
ピアノ・音楽監修:武部聡志
指揮・編曲:岩城直也
管弦楽:【兵庫】NIPO×神戸市室内管弦楽団
    【東京/神奈川】Naoya Iwaki Pops Orchestra(NIPO)

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