ORICON NEWS
「子どもに読ませたい」とSNSで反響の『人間図鑑』、かわいいイラストで”多様性”学ぶ本質
加速していく多様性社会に向けて 子どもも大人も知っておくこと
【飯田さん】私たちの作る図鑑シリーズは、人間が生きる上で欠かせない普遍的なことをテーマにすることで、「大人も子どもも一緒に楽しめる絵本のような図鑑」を目指して制作しています。近年、グローバル化やSNS等の浸透によって、さまざまな人と出会うことが当たり前になったため、「人間の多様性」を学ぶことは、寿命や失敗を学ぶことと同じくらい欠かせなくなってきたと感じたことから、企画がスタートしました。
【飯田さん】「人間の多様性」ということを広く紹介しているところです。多様性と言うと、「性」や「見た目」に関することが主に注目されているので、そういった情報は最近よく目にします。しかし、本当はそれ以外にもたくさんあります。本書では「性」や「見た目」も多様性に関する一部として紹介しつつ、広い視野で多様性について考えるきっかけにもなると思います。
――確かに、視覚としてわかる体のことだけではなく、生活や考え方(感情)の違いなど、幅広く紹介されていますね。ちなみにターゲットは小学校高学年のようですが、大人が読んでもとても勉強になります。
【飯田さん】私たち大人が子どもだった頃よりも、今の子どもたちは多様性社会を肌で感じていると思います。そして、これからの未来は確実にそれが加速していきます。まずは子どもたち自身がそういった環境の中で生きやすいようにと考えていますが、同時に子どもの教育は大人がしているので、「子どもが生きる社会」について、私たち大人が知ることも大切なことだと考えています。
「みんな違って当たり前」難しいテーマもかわいいイラストで入りやすく
【飯田さん】まずはひとつひとつの項目を知ることから始まりますが、そこはさほど重要ではありません。さまざまな違いがあるという事実を全体を通して知り、「こんなにも違いがあるのだから、みんな違って当たり前なんだ」というところまで感じてもらうのが目標です。
――1番大事なポイントですよね。
【飯田さん】その理解が広まれば、どんなことに対しても多様性の考えは応用できるのではないでしょうか。何かひとつの項目に注目すること自体が、多様性がまだ社会に根付いていない証拠なのかなと考えています。
――制作していく上で、こだわった部分は?
【飯田さん】図鑑は本来、動物や乗り物など、形のあるものをまとめて載せるのが一般的ですが、このシリーズは形のないものを載せています。そういったものを表現すると、どうしても説明的になって難しくなってしまいがちです。
――なるほど。
【飯田さん】理解がより深まるように、イラストの内容にこだわったり、キャッチコピーをつけたりして、見るだけでも楽しめるものにしました。その上で、もっと詳しく知りたい読者が、テキストを読み込むことでより楽しめるという構成にしています。
【飯田さん】やはり子どもにとって多様性教育が必要だと考える親世代の方に買っていただく機会が多いようです。本の帯に「多様性を知ることは思いやりを持つこと」と書いてあるのですが、そこに共感したという声もいただいています。また、一見難しいテーマですが、間芝勇輔さんに描いていただいたイラストが可愛くて気軽に読めたという声もよくもらいます。
視野を広く持つことで気づける 「他人と比べる必要なんてない」
【飯田さん】子どもの頃は、目の届く範囲が世界の全てだと考える子が多いですよね。そういう子は、周りの人との違いに悩んでしまい、逆に相手を非難してしまいます。多様性を学び視野を広く持つことで、それが些細なことだと気づくことができます。
――というと?
【飯田さん】他人と比べる必要がなくなるので、自分に自信を持つことができるし、他人を受け入れる思いやりを持つことができます。いじめや差別の減少にも直結していると考えています。
【飯田さん】続けていきたいと考えていますが、テーマの設定にはいつも時間をかけているので、まだはっきりとは決めていません。みんなの身近にあるけれど、まだ形になっていないことって、多いようであまりないんですよね。何かいいアイデアがあれば、ぜひ持ち込んでください。
――最後に、図鑑シリーズ以外でもこれから取り組んでいきたいことがあれば、お聞かせください。
【飯田さん】人はみんな幸せになるために生きているので、そういった本質的な部分について学びがあるモノづくりをいつも目指しています。その入り口が、昆虫や乗り物、タピオカ、サウナ、ゲーム…どんなものでもいいのですが、結局そこに結びつかないと意味のないものになってしまうと考えています。より多くの人に届くように、さまざまなアプローチを考えていきたいです。
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