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『こども六法』異例のヒット 児童向け法律書がなぜ必要か著者に聞く

 児童向けの画期的な法律書『こども六法』(弘文堂)が、20万部を突破(オリコン週間BOOKランキングで最高3位)。いじめや虐待に悩む子どもにたくさんのヒントを与える1冊であり、実際には大人の読者も子どもと一緒になって学べるポイントも多い。自ら「法律の専門家ではない」と語る著者の山崎聡一郎氏は劇団四季のミュージカル俳優という経歴を持つ。その山崎氏と120年以上の歴史を持つ法律・人文書系の老舗出版社が初めて“児童書”を世に問うことになった弘文堂・担当編集者の外山千尋氏に、本書に託した思いや、子を持つ親や教育現場からの反響について話を聞いた。

「9月1日問題」を意識し8月中に刊行 売れたらいいではなく売らないといけない本

 『こども六法』はいわゆる六法全書の内容を子どもでも容易に理解できるよう、わかりやすく「翻訳」したもの。憲法、民法、商法、刑法、民事訴訟法、刑事訴訟法から、商法を除外しつつ、少年法といじめ防止対策推進法を加えた構成となっている。条文を平易な表現に書きくだしつつ、可愛らしい動物キャラクターたちが日常生活のトラブルに直面する様子をユーモラスに描いたイラストや、より理解を深める解説コラムなども活用。ありそうでなかった児童向け法律書として、発売直後から品薄状態が続くほどの話題作となった。著者である山崎聡一郎氏は、多くの学校が夏休み明けとなる9月1日に、子どもたちの自殺が増える、「9月1日問題」を強く意識し、8月中の刊行にこだわったのだと言う。

「今、困っている子どもたちに本当に届けるため、また家庭や学校で広く認知してもらうためにも、遅くとも8月中に書店に並べてもらえるよう作業を続けました。売れたらいいなあ、ではなく売らないといけない本。今もそう考えています。自分で書店にお願いにも行っていますし、本の価値に反応してくださったメディアへの露出も、基本的には全く断らず取り組んでいます。必死です。僕自身はベストセラー作家になるのが目標ではなく、この本が世の中のために必要だという確信があるだけ。結果、手に取って下さった方々がSNSなどで取り上げてくれて、良い循環が生まれてきています。そうやってツイートなどしてくれる方は、このプロジェクトを支援しているチームの一員のようにも思えます」(山崎聡一郎氏)

「いじめられている子だけでなく、いじめている子や、周囲で見ている子、親や教師といった大人も含め、皆がその定義や考え方を共有してこそ、初めて法というものが機能するのだと思います。そういった法のリテラシーを底上げし、高めていくためにも、この本を世に出せた意義は大きいと思います。実は児童書カテゴリに決めたのも発売ギリギリになってからのことで、弊社としては初のジャンルということもあり、チャレンジではありました。ですが、気になるところは徹底して修正し、多くの専門家の方に監修をお願いし、内容については自信があります」(外山千尋氏)

難解な法律書が多いなか、大人が理解するための法律書でもある

 『こども六法』には初期バージョンが存在しており、山崎氏が大学在学中に研究の一貫として2014年に完成させ、自費出版していたもの。

「初期バージョンを作る動機は素朴です。ないから作ってみようということ。いじめの問題を解決するために法教育を活用する研究をしていくなかで、特に小学生向けでは、あって然るべき誰でも参照できる共通のルールが書かれている教材が見つからなかったんです。僕自身、中学で初めて六法全書に触れたのですが、実際にいじめられていた小学生の頃に読んでおきたかった、と強く思いました。当時の自分と同じような子どもたちが、少しでも気になった時に、すぐ手に取れる場所に、子ども向け法律書を用意しておくべき。それで、自分で六法を逐語訳し、その訳を法学部の友人に指摘してもらい修正して、1年くらいかけて完成に至った。完成後も、取り組み自体おもしろいね、と評価してくださる方はたくさんいらしたのですが、世の中にもっと広めようと思ってもなかなかうまくいきませんでした」(山崎氏)

「山崎さんにその初期バージョンを手渡され読んだのは2016年頃です。私も常日頃からなぜこんなに法律書は難しく書いてあるのかと疑問でした。難しいことをさらに難しく書いてあるような気すらしていた(苦笑)。でも山崎さんの文章は、読みやすくて。私が読みやすいなら、他にもきっとニーズがあるはずだ、とすぐに出版のお話をしました。ですが、会社が法律書、専門書といった看板を背負っているだけに、中途半端なものは出せないという事情もあり、結果的にしばらく寝かせることになってしまって…」(外山氏)

提供元: コンフィデンス

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