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なぜか気になる駅ポスター 35年間、麦焼酎「いいちこ」のPRを一任された熟練ADが語る“プロモ”哲学

 “下町のナポレオン”のキャッチコピーでお馴染みの「いいちこ」は、今年で発売40周年を迎える。ビリー・バンバンの曲とともに、時の流れが緩やかになったようなCMや、通勤途中の駅で見かける街の喧騒とは別世界のポスターも印象深く、どこに「いいちこ」があるのかわからないデザインにもなぜか“ほっとする”。こうしたPR戦略は、あるひとりのアートディレクターの手に“一任”されているという。「いいちこ」を製造販売している三和酒類株式会社と、アートディレクター・河北秀也氏に話を聞いた。

あの“地下鉄路線図”を手がけた過去もあるアートディレクターが「いいちこ」をPR

 いいちこは1979年に誕生した麦焼酎。発売後、口コミで評判になると1984年4月、初めてPRポスターを制作し、東京の地下鉄構内に掲載された。“下町のナポレオン“というキャッチコピーには、どこか武骨で男くさいイメージもあるが、ポスター自体は「日本の原風景」をコンセプトとしており、日本人の心に直接響いてくる。年に13種類(12カ月分+クリスマスバージョン)のポスターを世に発表してきており、累計450枚以上が制作されてきた。

 アートディレクター・河北秀也氏といいちこの関係はすでに35年以上にも及ぶ。2015年には東京藝術大学の名誉教授に就任しているが、いいちこ“以外”の代表作に東京地下鉄路線図があると言う。「1971年、東京藝術大学の卒業制作としてデザインをはじめましたが、卒業制作には間に合わず、翌年、営団地下鉄(現:東京メトロ)へ持ち込み、何度か改定版を作り、正式に路線図として採用されました」(河北氏)。

ブーム終了後に“指名買い”させるPR戦略とは?

 河北氏にいいちこのPRを一任した理由を三和酒類株式会社に聞くと、「ひと言で言うと最初からの約束だからです」とのこと。「『いいちこ』の発売は1979年。おりしも焼酎ブームに乗って『いいちこ』の売り上げは順調に増えていきました。しかし、所詮ブームはブーム。そのうちに終わりが来るのは明らかでした。そこで、『ブームが終わってもお客様からご指名を継続してもらうためにはどうしたらいいのか?』の答えを求め、従業員のご縁を頼って河北さんに『いいちこ』の広告デザインをお願いしました。承諾してくださったときの条件が、『引き受ける以上、すべてを任せてほしい。口出しはしないでほしい』でした」(三和酒類株式会社)

 実際、河北氏も、「それまで数々のヒット作を作ってきましたが、よいものができないのは、デザインを決定する人(クライアント)が素人だからという場合が多かったのです。それで、責任を持ってデザインをやるためには、クライアントとデザイナーは対等でなければならない」と思ったのだと言う。そして、そうした厳しさと緊張感のある関係の中で、プロモーションやブランディングをすべて任された河北氏は、ポスターやTVCMにとどまらず、パッケージデザイン、雑誌広告、新聞広告、『季刊iichiko』の出版など、すべてを担当しているのだ。

 そんないいちこのPR戦略の一翼を担う、あの独特の存在感を放つポスターについて河北氏に聞くと、「まったく独特だとは思っていません」とのこと。「あえて言えば、広告にしていません。コンセプトもないのですが、飲むときの気分、時の流れに合わせています」(河北氏)ということであり、アートディレクターとしての感性の賜物であることがうかがえる。現に記念すべき1作目のポスターは、広告専門誌『コマーシャルフォト』のマンスリーベスト・アドに選定されており、専門家筋からも高く評価されているようだ。

駅貼りのポスターが多い理由と“ビリー・バンバン”の名曲

 一見、「いいちこ」のポスターは商品がどこにあるのかわからないような作りになっているものもあるが、その意図を尋ねると、「広告写真にならないようにするためです」(河北氏)と、これまたきっぱりとしたブレのない返答。ちなみに、河北氏の一番のお気に入りのポスターは、「2013年8月の『空想の惑星で。』というコピーのポスターです」(河北氏)とのことだった。

 また、駅貼りのポスターが多い理由については、「『テレビや新聞、雑誌の広告は一回見れば終わりですが、ポスターは同じ場所に定期的に貼り替えるので毎回、必ず見てくれる人がいます。そういう人たちの口コミで徐々に広がっていけばいい。“急がない広告”として最適なんです』と河北氏から教えていただきました。その毎回見てくれる人たちが毎日のように通る場所が、『駅』だからです」(三和酒類株式会社)ということだ。

 ビリー・バンバンの楽曲でも有名なTVCMだが、ビリー・バンバンの起用に関しては、「ビリー・バンバンが『いいちこ』の商品特性に合っているからです。『いいちこ』の商品特性は、臭くなく香りがある焼酎。ビリー・バンバンも、他のフォークソングの歌手のように田舎臭くなく、都会的だからです」と、河北氏はその理由を語ってくれた。

 そして、河北氏はいいちこのPRへのこだわりとして、最後まで、「『いいちこ』のすべてをデザインすることです。PRをはじめた当初と、今のPRへの考え方に変化はありません」と確固たる信念をも語る。三和酒類株式会社も、「河北さんにすべてをお願いし、それを継続できたことにより、ポスターやTVCM、新聞や雑誌広告に一貫性が生まれました。加えて、マーケティング調査でターゲットを明確化し、適切な広告戦略を施したことが、『いいちこ』が長くご支持をいただけている要因だと感じています」と語るように、両者の絆はますます強くなっているのだ。

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