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“続編”とは異なる“その後の世界”描くドラマが好調、原作ファンの拒絶回避に
オリジナルほど手間はかけられない…原作モノに頼る現実
ただ、原作にファンが付いているということは、原作への思い入れも強く、キャスティングやストーリーの改編次第では大きな拒否反応を抱かれてしまう。「原作と比較してどうだったか」を判断基準に、SNSや口コミサイトに低評価が付くとそのまま“大ゴケ”してしまう可能性も高い。
また、制作側のジレンマが作用するのか、オリジナル性を加える作品が多く、それが裏目に出てしまう場合も多い。その傾向が視聴者の原作モノへの警戒心として定着しており、悪循環に陥っているように見える。その矛先が出演者へ向けられることも多々あるだろう。
原作を知らない一般層にまで訴求出来るか? 各作品が苦心
他にも、2000年以降、映画『NANA-ナナ-』、『デスノート』、『クローズZERO』、『20世紀少年』、『銀魂』等は熱狂的な原作ファンをも納得させたし、映画・ドラマ『のだめカンタービレ』(フジテレビ系)は、クラシックという“堅め”のジャンルの実写化へも切り込んだ。また、ドラマ『JIN‐仁‐』、『コウノドリ』、『逃げるは恥だが役に立つ』(以上TBS系)などは、良質なドラマを観た視聴者が原作にも興味を持つというフィードバック現象まで生み出した。いずれにせよ、ストーリーが面白いのは当然として、原作を知らない一般層にまで訴求出来るかが肝となる。
“その後の世界”の利点は、なつかしさを得ながらも比較対象が無いこと
前クールの『電影少女』は連載開始(1989年)から29年後の実写ドラマ化。現代版リメイクではなく、原作の25年後の世界を描き、原作の主人公・弄内洋太はドラマ版の主人公・弄内翔(野村周平)の叔父(戸次重幸)として登場している。当時、思春期真っ盛りの男子にとっては超伝説的な“エッチなマンガ”であり、実写化が決まった際は、ビデオデッキから再生される「アイ」がどこまで再現できるかが話題になったが、「原作愛を感じる」「文句付け所なし」「過激すぎる!笑」等々、高評価を得られる結果に。現代設定でどのように「アイ」が馴染むのか疑心暗鬼だった原作ファンたちを納得させた。
現在放送中の『花のち晴れ』も、『花より男子』の舞台である”英徳学園”の10年後を描きながら、キャストを一新した「新章」になっている。放送前は「コケてしまうのでは…?」という心配の声がSNSで見られたが、フタを開けてみると「花男とも違っておもしろい」「花男の魅力も再確認できる」との声や、登場人物の「神楽木晴(平野紫耀)派」「馳天馬(中川大志)派」で活発な議論がされている。
実際には、第1話では道明寺司(松本潤)、第3話では花沢類(小栗旬)が出演するなど『花男』キャストが盛り上げ、『花男』の聖地である「恵比寿ガーデンプレイス」の時計台広場や道明寺邸もオマージュで登場。『花男』世代を“なつかしさ”で納得させた。また、井上真央が演じた『花男』の牧野つくしのように、学園のお金持ち生徒と隠れ庶民の主人公・江戸川音(杉咲花)のちぐはぐな掛け合いや、強烈なお嬢様のライバルが出現するラブコメ要素も健在。徹底的に『花男』を“リスペクト”した戦略が功を奏したようだ。『花晴れ』にも、もともと“その後の世界”を描いた原作マンガがあり、その実写化ということにはなるが、『花男』とはまったくの別世界という点でリメイクのような比較はされず、キャストへの風当たりも強くない。
完成された原作の世界観とオリジナル性、両立が叶う“その後の世界”手法
また、制作側もオリジナル作品を一から企画するコストや、原作モノで拒否反応のリスクに苦心している現状を考えると、概ね好意的に受け入れている“その後の世界”作品は一筋の光明でもあるはずだ。そこには、たとえ“当たらなかった”としても「視聴者は楽しめていた」と主張できる“逃げ道”や“言い訳”も用意されているという点も忘れてはならない。
実際に、次クールで7月から放送される土屋太鳳主演のドラマ『チア☆ダン』(TBS系)も、映画『チア☆ダン〜女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話〜』の数年後が舞台のオリジナルストーリー。映画版の登場人物たちに憧れている主人公が奮闘する“その後の世界”が描かれる。原作マンガのみならず、人気を博した“元”の原作モノ作品の世界観とオリジナル性が楽しめる“その後の世界”手法は、今後も多用されるのか? それとも原作に忠実な作品が望まれるのか? その動向に注視したい。