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「大切なお知らせ」がトラウマワード化 “あおりタイトル”に求められる変化とは

 先ごろ人気アイドルグループ・関ジャニ∞の渋谷すばるが、今年の12月31日をもって事務所を退所することを発表して以来、依然ファンの悲痛な声は続いている。そのように、人気グループやバンドの脱退、結婚、卒業、解散といった重大な知らせの際に多用されるのが「大切なお知らせ」といった内容を予測できないタイトルだ。時に“あおり”や“釣り”にも使用されるエンタメ業界の伝統芸ではあるが、やはり同タイトルにトラウマを感じるといった声がSNSなどで散見される。SNSや公式サイト等の自己発信による告知が主流となった今、「大切なお知らせ」はどうあるべきなのか?

脱退、解散、結婚…「大切なお知らせ」を見る度に寿命が縮む思いのファン

 渋谷すばるの脱退・退所報道の経緯は、(1)4月13日に『フライデー』(講談社)が脱退を報道、(2)4月15日午前9時半ごろ、「関ジャニ∞のメンバーから、大切なお知らせがあります」として、関ジャニ∞のファンクラブ会員に限定メールが届く、(3)予告していた午前11時にファンクラブ会員サイトで渋谷すばるの脱退・退所を発表、(4)安田章大以外のメンバーの記者会見が行なわれ、各種ワイドショーでも報道される、といった流れだった。

 この「大切なお知らせ」メールから公式発表まで間、SNSでは「もうあと20分…お腹痛くなってきた」、「お願いお願いすばるくんお願い」「報道の否定であってほしい」等々、ファンたちの悲鳴にも似たつぶやきで溢れ返ったのである。こうした「大切なお知らせ」方式をとるタレントは多く、最近ではダンス&ボーカルユニット・超特急のメンバー・コーイチの脱退、6人組バンド・Brand New Vibeの解散発表等々、それぞれの公式サイトで「大切なお知らせ」や「ご報告」といったタイトルが用いられている。

 もちろん、お知らせの内容が期待通りであったり、たとえばX JAPANのようにあえて頻繁に“重大発表”を予告したりする例もある。ファンたちはそのたびに「YOSHIKIがついに結婚!?」、「22年ぶりのスタジオアルバム発表!?」、「まさかの解散とか…」などとSNSで盛り上がるのだが、実際は映画の公開日や、サウンドトラックの発売など、「そこまで重要なのか…?」といったものも。“重大度”の高低差による“ズッコケ”にもファンたちも徐々に慣れ、今ではネタとして楽しむ包容力さえ見せているというレアケースもある。

 しかし、実際は脱退や解散といった発表後のSNSでは「『大切なお知らせ』を見ると寿命が縮む…」「『大切なお知らせ』は一生しないでほしい」「大切なお知らせ怖い」「『大切なお知らせ』しんどい」と言った投稿が頻出。たびたび報じられる脱退や解散といった「大切なお知らせ」が寂しいお知らせの象徴として“トラウマワード”と化している。

“あおり”“釣り”のテロップやタイトル、エンタメ業界伝統芸の今昔

 だが、“大切”や“重大”、“緊急”などの“お知らせ”形式は、テレビ業界やネットビジネスでは昔からある手法。特にテレビの場合は「正解はCMの後!」といった“あおり”や、ボクシングや格闘技中継でよくある「この後、ついに世紀の決戦!」はよく見ただろう。「この後」と言いつつ実際は試合開始が2時間後といった“釣り”はかつての常套手段だった。

 しかし、こうした露骨な“あおり”や“釣り”は、視聴者が「不愉快」と拒否反応を示すように。最近ではCMを入れるタイミングも自然になり、「あと○分で登場」といった表現に変化した。さらに、SNSで事前にタイムテーブルを発表するような親切さまで発揮している。

 また、その手の“ベタ”となったかつての“あおり”や“釣り”を逆手にとり、ネタとして昇華させるのも定番に。バラエティ番組などでタレントが話に詰まり、「続きはCMの後!」と逃げて笑いを取る…なんていう場面はよく見かける。他にも、かつては「重大発表!」とあおっていた番宣も変化。『世界一受けたい授業』(日本テレビ系)などで、授業中に先生役の大学教授がいきなり「ところで〇〇さん(ゲスト出演者)の出ているドラマは…」と切り出すと、MCのくりぃむしちゅー・上田晋也が「なに先生、勝手に番宣はじめちゃってるんですか!」と突っ込むという、“流れ”で告知する新しいスタイルも見られるようになった。

「大切なお知らせ」がネタ扱い? “本当の”大切なお知らせに求められる直球タイトル

 では、ネット上にある「大切なお知らせ」はどうだろうか。もちろん、“衝撃を和らげる”ワンクッションの意味は当然あるだろう。そして、一見無難な「大切」「お知らせ」「ご報告」は興味をそそり確実にクリックさせる“マジックワード”でもある。しかし、一般ユーザーのブログであえて「大切なお知らせ」とタイトルをつけて節目の報告をしてみたり、エイプリルフールに「大切なお知らせ」で“ウソの発表”をしたりと、もはや公式発表を飛び越えて一般ユーザーの間でネタとして常態化してしまっている状況だ。

 だからこそ、タレントの節目の発表に“ベタ”なネタと化しつつある「大切なお知らせ」を使い続けている点に、ファンも疑問を抱くのだろう。むしろ「“大切なお知らせ(脱退)”みたいにタイトルでわかるようにしてほしい」、「タイトルで心の準備を整えてから詳しく読みたい」のように懇願されている状況だ。

 そして、かつては「大切なお知らせ」「ご報告」を多用していたアイドル大所帯のハロープロジェクトやAKBグループも、ここ最近はメンバー名を入れて「休養のお知らせ」「卒業に関するお知らせ」といった具体的なタイトル表記をすることも増えた。事実、ファンも「その方がありがたい」「できるじゃん」と好意的に受け入れているようだ。

 「大切なお知らせ」のように、人の心をざわつかせるキーワードを使った“あおり”や“釣り”の手法はテレビや雑誌、そしてインターネットへと受け継がれてきた。それを受け止めるユーザーも今ではエンタメとして楽しむようになっている。しかし、その一方で、便利で速報性の高いネット社会の今だからこそ、本来の意味の「大切なお知らせ」をするときには、思わせぶりに頼らずストレートな表現で確実に伝えることも効果的な手法なのかもしれない。

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