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川栄李奈に続く逸材は…アイドルから女優成功の秘訣は“飛び級”をしない覚悟?
女子アナ、声優、モデル…アイドル卒業後の進路が多様化するも、女優業では苦戦傾向
アイドルグループ卒業後の進路として、歌手やタレントとして活動を続けていくのが王道だが、先日電撃卒業したももいろクローバーZの有安杏果やBerryz工房・嗣永桃子などのように、芸能界を離れ、“普通の女の子”として生きる道を選ぶ者も近年は増加傾向にある。一方“芸能界残留組”の進路も多岐にわたり、アナウンサーやキャスター(モー娘。紺野あさ美、SKE48柴田阿弥など)、声優(AKB48佐藤亜美菜)、モデルとして活動する例も最近ではそれほど珍しくなくなってきた。このように選択肢の幅は広がっているが、それでも“女優”として再び頂点を目指す傾向は依然として高い。だが、これまでの実績や“元〇〇”とった肩書が、逆に高いハードルとなり、受け手たる視聴者からも厳しい目で見られることに。結果としてアイドル時代を上回る成功を収める事例は少ない。
“トップアイドル”はその実績自体が女優業の足かせに?
いわば、アイドルとして“天下を獲った”2人。前田は2012年、大島は2013年にAKBを卒業し、現在まで女優として数多くのドラマ、映画、舞台に出演しているが、それぞれの女優としての“代表作”を挙げよと問われたら、票が分かれるはず。AKB時代からドラマや映画に主役や大役で出演していたが、アイドルとして“天下を獲った人”にはそれなりの役を与えなければならない事情もあり、卒業後もその待遇は変わらず。大島のように子役経験がある者もいるが、本格的に演技の世界に没頭する時間も無いまま次々と役をまかされ、女優としてはいわば“飛び級”で映画ドラマに出演する形となる傾向が強い。
前田敦子は昨年も『片思いの敵』(フジテレビ系)主演ほか、月9枠『民衆の敵〜世の中、おかしくないですか!?〜』(同)にも出演。大島優子も映画『紙の月』(2014年)で第38回日本アカデミー賞優秀助演女優賞を受賞するなど、それぞれ女優として活躍しているものの、”アイドル時代を超える評価”を女優として得るまでには至っていない。視聴者側にも強烈なアイドルのイメージにより、女優として正しい評価をされづらいのも“トップアイドル”の宿命といえる。
川栄李奈に見る女優業躍進の秘訣は“ゼロからの覚悟”
同様のケースで近年大躍進しているのが、元AKB48の川栄李奈。彼女は、2014年に選抜入り(16位)していたとはいえ、一般的には握手会での傷害事件で初めて存在を知った人も多かった。事件以降休養に入り2015年に卒業。アイドルとしての世間的なイメージが固まりきる前に本格的に演技の道へ進み、『とと姉ちゃん』(NHK)、『僕たちがやりました』(フジテレビ系)などの脇役や数々のドラマのゲスト出演で実績を積み、2018年についに初主演映画『恋のしずく』の公開が決定するに至っている。
AKBブランドに頼らず、“飛び級”出演をせずにその時々の実力に見合った役を選択し、役の大小を問わず着実に女優として歩みを進めてきたことが躍進に繋がった好例といえる。川栄はインタビューで「今年は、自分がいかに主演の方を助けられるのかをしっかり考えてやっていきたい」とも明かし、芝居の質を上げる事を念頭に置いて活動している。そして、「私なんてすぐに消える。調子に乗らないようにわきまえている、その気持ちは意識してずっと持ち続けたい」という謙虚な姿勢を貫く。
前述の『快盗戦隊ルパンレンジャー〜』に出演する工藤遥も、今後は“元・モー娘。”ではなく“元ルパンイエロー”と表現されることも増えるだろう。つまり、アイドルのイメージを上書きすることが出来る可能性を秘めているのである。特撮ヒーローものは“新人の登竜門”としても知られており、戦隊モノに出るのは永年の夢だったとはいえ、芸能人としては新人ではない工藤が元アイドルの肩書を捨ててそこに挑むところに女優業への強い想いも感じる。特撮ヒーロー作品出演となれば、ママ層・パパ層にも認知度が上がるはずで、女優としてのキャリアのスタートとしては良い選択と言えるだろう。
自分の“見せ方”を知っているアイドルは「女優の原石」であることは事実
「女優の世界で元アイドルが売りになるのかどうか分からなかった事と、(世間に)アイドルのイメージを持たれたくなかったからです。脇役から一つずつ実力で経験を重ねていく、女優としての私を見てほしかった。AKB時代は、どうやって自分をアピールするかを常に考えていました。その経験が女優のお仕事や、オーディションの時にとても役立っています」(山本亜依)。
また、現在『海月姫』(フジテレビ系)で、アフロヘアでほとんど顔が見えない?ばんばさん“役を怪演中の松井玲奈もSKE48の卒業生(2015年)。彼女も卒業後は役の大小にこだわらず女優のキャリアを重ねている。松井は、女優業では舞台のウェイトが高いのが特徴。公演後は女優として一皮むけると定評のある『新・幕末純情伝』に16年、17年と2年連続で出演し、その後もいくつもの舞台作品でベテラン俳優の中で揉まれている。
このようにアイドルの肩書を捨てて、ゼロから始める気概を持って女優として活動していくことが成功の秘訣と言えそうだ。そもそもオーディションを突破してアイドルデビューを果たしたアイドルたちは自分の見せ方を知っており、さらにライブやテレビ出演、ファン交流とさまざまな“見られる場”も経験して舞台度胸もある。そんな風にアイドルを“演じてきた”彼女たちは、「女優を目指す新人」よりも一歩も二歩も進んだ実力を備えている。芝居の世界に集中できる環境に身を投じれば、アイドルたちの持つ“女優力”が花開く可能性は高いのだ。
(文/神山歩)