(更新:)
ORICON NEWS
音楽バラエティ“最後の砦”『関ジャム』、視聴者の「知りたい」を引き出す番組力
正統派×異端な講師陣による魅力的な“授業”が音楽への好奇心を呼び覚ます
彼ら音楽シーンの第一線で活躍するエキスパートたちが、音楽への素朴な疑問を懇切丁寧に解き明かしていく同番組。視聴者のほうも、今まで“知ってるようで知らなかった”音楽の基本情報や、紹介されたアーティストや音楽カルチャーの魅力を再発見できるので、改めて音楽に興味を持つことができる内容となっている。
たとえば、3月8日に放送された「他人には聞けない音楽ギモンSP」では、ヒャダイン、KenKen、振付稼業air:man、清塚信也が「4人のスター講師陣」として登場。「4/4拍子ってよく聞きますけど、そもそも“拍子”ってなんですか?」という基本中の基本とも言える視聴者の質問に、清塚自らの演奏と楽譜の図解で解説。さらに6/8拍子が3/4拍子に約分できない理由などもレクチャー。ネットでは「こんな音楽の授業だったら音楽を好きになった」、「音楽の先生になってほしい」などの声があるほど、分かりやすい。
本職であるKenKenすらも「独学で勉強してきたから、すごい勉強になった」と言いつつ、凄まじいベーステクを披露し、さらには「大きな古時計」をクラシック畑の清塚と即興セッションする…という贅沢な展開まで見せてくれたのだ。
また、「アイドルソングには必勝パターンとかあるんですか?」という疑問にはヒャダインが回答。松田聖子の「夏の扉」とAKB48の「ポニーテールとシュシュ」という時代を超えたアイドルソングを使って、「王道アイドルソングには(周期的に休符が入るため)合いの手が入れやすい」というヒット曲の法則を明かすなど、(なるほどね〜)と素直に楽しめるエンターテイメント要素が満載なのである。
「わかる!」が視聴者の高揚感に “音楽偏差値”を高める役割も
さらに、(確かにそうだよね)といった“あるあるネタ”も多く、いつのまにか自分がそのジャンルに精通し、音楽偏差値が上がったかのような高揚感すら持てるのである。そうした意味では、まさに『関ジャム』は音楽の魅力を改めて気づかせ、音楽へのさらなる「知りたい」を喚起する番組とも言える。
また、定期的に行なわれる番組内ランキングも出色の試み。1月21日の放送回では、「売れっ子音楽プロデューサーが本気で選んだ2017年名曲ベスト10」を発表。蔦谷好位置、いしわたり淳治という人気音楽プロデューサーふたりが独自路線のベストソングを紹介し、インディー、メジャー、日本国内外からジャンルを問わず名曲を語りつくしている。
これらの企画も、人気プロデューサーが“本気で選んだ”だけに説得力があり、バイアスのかかっていないオリジナルのランキング情報ということでも、視聴者は“先物買い”的な感覚で気になり「もっと知りたい」「もっと聴きたい」という音楽への欲求が生まれるのだ。
ゲストへの“リスペクト”と音楽への“情熱”が伝わる、関ジャニの立ち位置
なにより、本番組内では関ジャニ∞のメンバー達はあくまで脇に周り、ゲストとなる講師達の“職人的な技術”や“音楽の魅力”を視聴者目線のコメントで引き出す役割に徹している。とは言え、番組最後に行なわれるゲストとのセッションでは、それまでの“お笑いが得意なアイドル”の顔はなく、ロックバンド・関ジャニ∞を披露し、そのギャップもまた評価されている。ネットユーザーからは「関ジャムのセッションを観ている。年々表現力がましましで怖いほど」「知らない曲だけど、セッションを聞いて原曲ダウンロードした」といった風に番組における“締め”の役割を見事に果たしている。何より、登場するアーティストたちをリスペクトしつつ、番組自体もただの“役に立つ音楽の授業”には納まらない独自のエンタメ色を感じられるのは、この“本気のセッション”があるからこそ。
実際、関ジャニ∞は屋外ロックフェスである『METROPOLITAN ROCK FESTIVAL 2017』に出演し、モッシュやサークルが起こるほどの盛り上がりを見せ、ロックファンからも高い評価を得た。同事務所の先輩バンドであるTOKIOも2014年のサマーソニックに出演し、洋楽ミュージシャンに負けない盛り上がりと高度な演奏技術を見せつけて“伝説”を作ったが、関ジャニ∞もまた、この『関ジャム』で培った音楽能力を自らの活動にフィードバックしていることが伺える。
視聴者にとって未知の世界である音楽業界の舞台裏、マニアックな深掘り、業界関係者の本音トークで音楽を“解体”し、音楽の門外漢からディープな音楽ファンをも惹きつける『関ジャム』。音楽の「知りたい」を引き出す本番組を手本とすることで、新しい切り口の“音楽バラエティ番組”が生まれるのではないだろうか。