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ORICON NEWS
冬の美しさを感じる本・映画
雪の結晶の“本当の美しさ”を知る
『中谷宇吉郎の森羅万象帖』(2013年)
「雪といえば固めて投げたり、転がしてだるまにしたり、滑ってみたりして楽しむ印象がありますが、小さな結晶をまじまじと見てみると、比べるものを見つけるのが難しいほど美しいものです。その複雑で不思議で儚い美に魅せられ、3000枚以上の結晶写真を撮り、研究の末に世界で初めて人工雪の結晶をつくることに成功し、雪氷学の基礎を築いた科学者・中谷宇吉郎の足取りを、随筆や図版を元に辿った一冊。この本を読んで、雪の結晶はどれもが均整のとれた形をしておらず、不規則な形や「美しくない結晶」の方が圧倒的に多い事を知りました。そしてそんな結晶こそ「またひとしおの愛情が感ぜられてくる」と温かいまなざしを向ける中谷宇吉郎の姿勢に学び、これから雪が降った時は疎ましく思わず、天からの手紙に目を通してみます」
惑星・<冬>を舞台にした人間と異星人の心の交流
『闇の左手』(1978年)
「ゲド戦記シリーズで有名なアーシュラ・K・ルグインによるSF小説。〈冬〉と呼ばれる惑星に、同盟エクーメンに加入するよう使節として一人で訪れた主人公の男と、両性の異星人の交流を描いた物語。男性にも女性にもなれる身体、男性でも女性でもない者の考え方と文化を、実在していたと言われても驚かないレベルで描き出す筆力に圧倒されます。一番の読みどころは、物語中策略によって追放された人間と異星人が、表紙のように極寒の中を延々と歩いてゆくのですが、過酷な環境と極限の心身状態の中で生まれる友情、愛情に心が揺さぶられます」
冬が似合う独特の世界・「廃墟」の魅力が満載
『世界の美しい廃墟』(2015年)
「廃墟は冬が似合う。しかし人はなぜ廃墟に惹かれるのだろうか。人工物でありながら、時を経て部分的に自然に還りつつある造形の奇妙さ。あるのかないのか分からない存在感。ディストピアSFを読む時のように、密かな破滅願望を満たしてくれる薄暗いエンターテイメント性。かつて人が居たであろう雰囲気が感じられる独特の静けさ。この写真集を眺めながら色々と考えてみました。人が生まれながらに、もしくは生きていく中で欠落した何かが、廃墟という存在に共鳴している気がしてならない」
静かな夜にゆっくりと読みたい、とある街の日常風景
『季節のない街』(1970年)
「“街”と言われる貧民街で暮らす市井の人間模様を描いた、空っ風を感じる連作短編集。実在しない電車を「どですかでん、どですかでん」と走らせる男。天ぷらをもらいにくるボス猫。いつか建てる家の間取りを漁った飯を食べながら話し合う父と子。物語は、決して「貧しいながらも心温まる人情劇」というような口調ではなく、変われないものは変わらず、繰り返し続ける毎日のある一日がそのままに語られる。だから「季節のない街」なんだと思う。解説で作家の開高健氏が言っているように、この本は解説を必要とする作品ではない。その後に続けているように、ただ“こころ滅びる夜にゆっくりと読まれるべき一冊”です」
リーディングスタイル株式会社
企画室 書籍統括
岡本 草太さん
現在リーディングスタイルプロジェクト全店で展開している一押しフェアは、全国的に話題となったさわや書店『文庫X』の公式アレンジ『WHITE BUNKO』。担当者のとっておきの「この一冊」を推したメッセージのみを記載したカバーで覆い、タイトルや著者名など値段以外の一切の情報を伏せて販売している。本企画は2月に第5弾を販売予定。
<リーディングスタイル株式会社>
スタッフが一点一点こだわってセレクトした、大人の知的好奇心を刺激する書籍と遊び心を刺激する雑貨を揃え、店内の書籍を試読できるカフェも併設するライフスタイル提案型のブックカフェを展開する「リーディングスタイル」。「マルノウチリーディングスタイル」はその旗艦店として東京・丸の内の商業施設「KITTE」4Fに出店。365日それぞれに推薦書物を展開する「バースデー文庫」などの企画は全国的にも話題になった。リーディングスタイルプロジェクトとして「solid&liquid TENJIN」「solid&liquid COMICOMI STUDIO MACHIDA」「スタンダードブックストアあべの」「BOWL富士見/海老名」なども展開する。
http://www.readingstyle.co.jp/