2017年映画シーンの行方は?露わになる優勝劣敗の構図 様々な意味合いの“ピーク”を迎える漫画実写化
2017年の行方を占う正月興行で見えた、定番作品の強さと脆弱さ
邦画からいこう。ここ数年、というより随分長く邦画興行を領導してきたコミック原作の大型実写娯楽作品は、今年がひとつのピークを迎えることになるだろう。ピークの意味は、最高潮の興行ということではない。成果は未知数なりに、話題作揃いであることが、そのひとつのピークを作り上げるという意味だ。
すでに飽きが来ている?かつて以上にシビアな状況にある漫画実写化
要は、中身なのだと言ってしまうことは簡単で安易だが、結局はそこに行き着くのだ。その評価の眼が、かつて以上にシビアな状況になっている昨今、生半可な中身で観客を甘く見れば、総スカンを食うこと必定であろう。
ただ、その定番の流れは、必ずや飽きが来る。ピークの前に、すでに来ているのだ。この混戦状態から、どの会社のどんな作品が浮かび上がるか。まさに、網の目を通すような過酷な興行上のふるいが、各作品に掛けられることであろう。
年間興収新記録を打ち立てた東宝、歴代2位の興収を築いた松竹
例年に増して話題作、大作など多彩なラインナップが揃った洋画シーン
ただ、2014年の『アナと雪の女王』、昨年の『君の名は。』と『シン・ゴジラ』が切り開いた映画の社会現象化の道を進む作品がなかったとしても、それほどがっかりすることもあるまい。華々しい社会現象化としての“ハレ”的な要素と真逆に、映画(興行)は日常としての“ケ”の部分が、実はとても大切なのだ。これは、日常的に映画を見る環境の構築のことであり、この鑑賞行為の浸透、普及こそが、映画(興行)の目指すべき道筋だと思う。ただ実際には、この日常的な映画鑑賞の道は社会現象化などより、はるかに険しいのである。
(文:映画ジャーナリスト・大高宏雄)