年間映画興行ランキング『2016年、世界水準で収益を上げる日本映画が登場!』
米映画のように世界水準で映画収益を引き出した『君の名は。』
ちなみに、上映は来年の春あたりまで続くという。これまで『千と千尋の神隠し』が1年間延々と上映され続けたことがあった。館数は都内の1館だけであったが、『君の名は。』も今後、来春を超えてどこかで延々と上映されていくかもしれない。12月10日、11日の2日間では、正月興行の期待作である『海賊とよばれた男』のスタート成績を上回ったくらいだから、その超ロングランも納得がいくというわけである。
東宝ゴジラ新時代の幕開け。ブランド真価が問われる次作
東宝は、ゴジラはディズニーのミッキーマウスに匹敵するブランドだと言い放つ。ただ、そのブランド性も『ゴジラ FINAL WARS』(2004年、12億2000万円)の頃は、息も絶え絶えだったことは、記憶しておいていい。ミッキーマウスと違って、ゴジラは過酷な日々を生き抜き、復活を遂げたのである。
ただ、真の復活は、今後の動向にかかってくるだろう。東宝は、次の日本ゴジラをどうするのか、いろいろ考えを巡らせている。誰が手掛けるにしろ、次作には大変な重圧がのしかかる。これを乗り切ったときこそ、ゴジラは真のブランドとして、閃光たなびく大咆哮を、世界に誇示することができるのだろう。
日本映画界のなかで一段と高くなっているアニメシェア
邦画、洋画それぞれの興収上位10本のなかでは、邦画が6本(『君の名は。』209億円(12月18日時点)、『名探偵コナン 純黒の悪夢』63億3000万円、『映画 妖怪ウォッチ エンマ大王と5つの物語だニャン!』55億3000万円、『ONE PIECE FILM GOLD』52億円、『映画ドラえもん 新・のび太の日本誕生』41億2000万円、『ガールズ&パンツァー 劇場版』24億円)、洋画が3本(『ズートピア』76億8000万円、『ファインディング・ドリー』68億3000万円、『ペット』42億5000万円)。さらに、邦画と洋画で20億円を超えた全作品の累計興収のうち、アニメは何と約55%を占める。
『スター・ウォーズ』が一矢を報いるも“ファン枠”を超えず
公開されたばかりの『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』が、やはりファン中心であった。前作『フォースの覚醒』の出来を遥かに凌ぐ素晴らしい作品で、映画が終わったとたんに涙がどっと溢れるという得難い経験をした。注目したいのは、この涙に、どれほどの“一般性”があるのかということだ。強く、あってほしいのである。
今回、以上4つの要点に絞ったことをご理解願いたい。それでも各々、様々な切り口から、もっと広げていかなければならないテーマや問題点が山積みなのである。日本映画(界)は、いったいどこへ行くのか。ひとつ、2016年に登場した世界水準の作品が、今後に及ぼす影響をしかと見定めたい。この快挙が一過性で終わらないことを祈る。
(文:映画ジャーナリスト・大高宏雄)