(更新:)
ORICON NEWS
コミック実写化、成否の要因と課題とは? 製作陣に求められる映画的達成感の模索
邦画の基盤を支えているコミック、アニメ
昨年の邦画興収上位10本のうち、『テルマエ・ロマエII』『るろうに剣心 京都大火篇』『るろうに剣心 伝説の最期篇』の3本が、コミック原作だった。同じく今年上半期では上位10本のうち、『暗殺教室』『ストロボ・エッジ』『寄生獣』の3本がコミック原作だ。これにアニメを加えるとどうなるか。昨年では、アニメとコミック原作の実写映画化作品が上位10本中9本。今年上半期でも、10本中同じく9本までを占める。邦画は、コミック、アニメがその基盤を支えていると言っても過言ではない。何とも恐るべき状況である。
では、なぜコミック原作が人気なのか。認知度が高く、若者中心の根強い支持があるので、数字(興行)がある程度読めるということがまず挙げられる。興行の下地が、しっかりしている。つまるところ、安全パイなのだ。
ただ、邦画製作におけるコミック人気は、今に始まったわけではない。かつても、コミック(劇画とも言った)の映画化がけっこうあり、多くの話題作や大ヒット作も登場した。『女囚701号/さそり』『嗚呼!!花の応援団』『ゴルゴ13』『ルパン三世 念力珍作戦』など(古くてわからないか)、挙げ出したらキリがない。ただ、それが邦画製作のメインではなかっただけだ。今は、それが邦画製作(興行)の“ど真中”にきた。
原作ファンを超えた一般層にまで広がるか
一般層にまで大きくは広がらなかったが、確実なヒットに結びついたのが、今年の『暗殺教室』『ストロボ・エッジ』『寄生獣』だろう。原作ファン中心ながら、一般層の広がりに限界があり、結果として20億円台に収まった。作品自体の底力はあったが、題材の限定性や特異性が、観客を“選んだ”と推測できる。
一方に、課題もある。原作のイメージを損なうと、とたんに原作ファンが引き始めることだ。これが、興行に少なからぬ影響を与える。俳優陣が原作のキャラクターにふさわしいかも、常に話題になる。映画化決定の時点で、原作の登場人物に対する自分たちのイメージから、俳優起用の是非を判断していくのも、ファンの大きな楽しみのようだ。ただ、合わなかった場合、けっこう怖いことになる。こうしたことを反映して、原作ファンの気持ちや好みを推し量ることに製作陣は腐心する。できるかぎり原作に近いイメージで俳優を起用し、中身を作っていくのだ。
俳優が演じる映画と原作は別物
そうしたことを頭に叩き込みつつ、これから製作陣や俳優たちに求められるのは、原作の魅力と、映画的(あるいは自立した俳優的)達成感とのせめぎあいを模索することだろう。おそらく、その着地点としては、原作と映画は別物だということになろうと、私は思っている。
かつては、コミックから、映画監督たちは、自身の世界観の構築を図り、原作とはかなりかけ離れた作品を作り上げたものだ。その時代も懐かしいが、今はそんな甘い時代ではない。原作の魂と映画の魂のぶつかりのなかで、製作陣は、映画の真髄を求めて格闘すべきなのだ。それが、おもしろさに結実していたら、原作ファンだって納得するに違いない。
今や米映画だって、マーベルやらDCコミックスやらで、コミック大攻勢である。ハリウッドが、やっと日本の映画状況に追いついてきたかと、冗談ではなく感無量であるが、要は“コミック”をひとつの契機に、映画館に来てもらえることを引き金にして、映画の魅力を、とくに若い人たちに知ってもらうことが大切なのである。コミック、アニメの時代の今の映画界を否定してみても、全く意味はない。
(文:映画ジャーナリスト・大高宏雄)