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ガンプラ│トップモデラーインタビュー(ガンダムプラモデル)

フラミンゴとガンダムの足裏で表現した“戦争への皮肉” 「世界観を伝えるのにジオラマは最適」

 今年40周年を迎えた『機動戦士ガンダム』は、宇宙世紀シリーズをはじめアナザーガンダムを含めて数多くの作品がある。そんな多様性に富む世界観を広げ、自身の“妄想”をプラモデルで具現化するモデラーたちがいる。今回、『新機動戦記ガンダムW』にインスパイアされたというフラミンゴジオラマを制作したZi-Zi-pacifico氏に、本作に込めた想いを聞いた。
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「地球はこんなに美しいのに…」カトルのセリフを咀嚼してジオラマ化

――このジオラマの作品名はありますか?

【Zi-Zi-】作品名は『flamingo』です。他の案もありましたが、シンプルさを重視してこれにしました。テーマは“束の間の休息”になります。

――制作のキッカケは?

【Zi-Zi-】模型雑誌のコンテスト用として制作しました。Zi-Zi-pacifico名義で応募するのは今年で6回目になります。キットはBANDAI 1/100マスターグレード ガンダムサンドロックEW版を使用しました。

――構図、色合い、テーマ性においてフラミンゴの群れがポイントになっているかと思います。フラミンゴを使おうと思った理由は?

【Zi-Zi-】実は元ネタがあります。TVアニメ『新機動戦記ガンダムW』の第2話で実際にこの様なシーンが出てきます。主役キャラの1人でこのガンダムのパイロットであるカトルが地球降下後の初陣を終え、仲間と合流した後のシーンです。10秒にも満たない場面ですが、とても印象深く感じました。自分は平成ガンダム世代なのでフラミンゴといえば真っ先にこのシーンを思い浮かべます。劇場版『機動戦士ガンダムII 哀戦士編』に出てくるフラミンゴの飛翔シーンも有名ですが、私にとってのフラミンゴは『ガンダムW』ですね。

――本作でこだわった部分は?

【Zi-Zi-】キットの出来が素晴らしかったので、しっかりと脇を固めてやろうと思いました。ヤシの木は勿論、フラミンゴに至っては動物園に直接リサーチに出向きました。勿論、家族サービスの体で(笑)。

――では、苦労した部分は?

【Zi-Zi-】やはり100数十羽のフラミンゴですね。1/100スケールのフラミンゴなんて何処にも売ってないですから…地道に自作しました。最初は純粋にエポキシパテ(エポキシ樹脂を主成分とするパテ)で作ってみたのですが、これが上手くいかない。ならばと薄手のプラ板をフラミンゴのシルエットで切り出し、エポキシパテを使って肉厚感を出していく手法に切り替えました。足は極細のステンレス線で表現、羽を広げた個体は紙を使って再現してみました。色々なマテリアルを使う事で表現の幅が出せたと思います。

――本作で注目してほしい箇所は?

【Zi-Zi-】手のひらにいるフラミンゴが、無人のガンダムサンドロックと目を合わせているように見える所ですかね。あと、ガンダムサンドロックは自然な座りポーズが出来る様に、地味にいじっています(苦笑)。

――フラミンゴも素晴らしいですが、このジオラマを通じて一番表現したかったものは何でしょうか。

【Zi-Zi-】パイロットであるカトルの心情です。カトルは超裕福な家庭に生まれながらも 過酷な運命を背負っています。彼が地球にやって来た目的は旅行でも勉学の為でもなく 破壊工作(テロ)なんです。そんな彼が初めて見た地球の素晴らしさに感動しつつも表情を曇らせて言うんです。「地球はこんなに美しいのに…」って。このセリフを自分なりに咀嚼してジオラマに仕立てたものがこの作品ですね。

動物との対比で、予備知識が無い人にもMSの“巨大さ”や“硬質感”を伝えられる

――「地球の美しさ」をジオラマで表現するうえで構図は重要かと思います。本作はご自身で撮影されたものですか?

【Zi-Zi-】自分で撮りました。晴れた日に屋外で。特別な機器は使わずスマホカメラオンリーです。

――意外にもスマホなんですね! 撮影の構図で意識していることがあれば教えてください。

【Zi-Zi-】アオリのカットを撮る際、1/100サイズの人間目線に合わせるのがポイントです。あと、アングルを変えて色々な角度から試して撮ると思わぬ良い絵が撮れたりもします(笑)。

――Zi-Zi-さんのジオラマ作品は動物を絡めたものが多いです。その理由は?

【Zi-Zi-】理由は色々とありますが、メカとの対比が面白い事でしょうか。

――“ガンダムの生みの親”である富野由悠季監督は、MSやコロニーを描く際に対比物を配置することで“巨大さ”や“SF感”を演出していました。

【Zi-Zi-】ジオラマの場合、動物と比較する事でMSの“巨大さ”や“硬質感”なんかも予備知識の無い方に伝わり易いと思います。あと、“戦争に対する皮肉”も込めているんですよ。

――ジオラマにおける“演出面”の重要性は?

【Zi-Zi-】堂々とアレンジするという事でしょうか。前述の通り元ネタがあるのですが、そのシーンをそのまま作ってはいません。実際のシーンではガンダムサンドロックは座っていて、コクピットも閉じていますし、手のひらにフラミンゴも乗っていません。そこで、よりカトルの心情を表現出来ないかと思い、彼らに色々と演技をさせました。どう捉えるのかは見ている人に委ねられるのでしょうが、作り手が意識することも大切なのではないか?とも思っています。

――ジオラマ制作でカタルシスを感じる瞬間は?

【Zi-Zi-】やはり、見てくれた方々の反応ですね。自分の見た景色(妄想)をダイレクトに伝えられるという点がジオラマの醍醐味です。プラモデルの展示会に来た方で作品の予備知識を持っていない方は非常に多いです。お父さんに付いてきた娘さんや奥さん、カップルとか…。そんな方にもジオラマならガンダムの世界観が伝わりやすいと思います。「ガンダムってデカイんよ!」「めっちゃ強いんよ!」「まぁ、戦争はあかんけどな…」って(笑)。

――最後に、今後作ってみたいジオラマを教えてください。

【Zi-Zi-】対比物として動物を使うのは表現方法の1つだと思っています。これからも色んな表現方法を見つけて試して行きたいですね。作りたい妄想はいっぱいありすぎて困っています(笑)。

(C)創通・サンライズ

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