アニメ&ゲーム カテゴリ
(更新: ORICON NEWS

ガンプラ│トップモデラーインタビュー(ガンダムプラモデル)

なぜ、男たちはザクやドムに惚れるのか?人生を変えた大河原邦男デザインの『MSV』【連載第26回】

 来年40周年となる『ガンプラ』。老若男女問わず、世界中で人気を誇る強力コンテンツだが、その隆盛の土台となったもののひとつとしてMSV(モビルスーツバリエーション)の存在があげられる。そんな「ガンプラ史」の一翼を担ってきたモデラー“匠の技術”について、『GBWC』ファイナリストの常連でもあるトップモデラー・らいだ〜Joe氏にインタビュー。自身の代名詞となっている「パチ組無塗装技術」が生まれた背景と、家族や仲間との絆になっているガンプラへの想いを聞いた。

→【ガンプラビフォーアフター】毎週更新・トップモデラーインタビュー特集←

「塗装は苦手」という“劣等感”をモデラーとしての武器に転換

――ガンプラにハマったキッカケを教えてください。

らいだ〜Joe2001年ごろ、『機動戦士ガンダム 連邦vs.ジオン』というゲームに私の子どもたちが熱狂し、続けて、ビデオで『機動戦士ガンダム 第08MS小隊』を見た子どもたちにガンダムブームが来ました。その時、「とうちゃんがガンダムのプラモ作ったろか〜?」と、約20年ぶりにMG陸戦型ガンダムとグフカスタムを買ったのがキッカケです。

――子どもたちへのプレゼントだったんですね。

らいだ〜Joeはい。夜の間に制作し、翌朝テーブルの上にあるガンプラを見つけた時の子ども達の笑顔と瞳の輝きが僕にとって最高の瞬間でした。その後も、子どもたちの笑顔と瞳の輝き見たさにどんどんガンプラが増えていき、いつの間にか自分が楽しみだして今に至っています(笑)。

――ミイラ取りがミイラになったパターンですね(笑)。ガンプラ制作に復帰して、最も虜にされたガンプラ作品は何ですか?

らいだ〜Joe文句なしにMGザクVer2.0ですね。40〜50機は作りました。もう説明書を見ずに組み立てることができます。しかも、まだ押入れに数十機のザクVer2.0が眠っています…(苦笑)。そのまま組むのも良し!スクラッチ(改造)するベースに中の人(内部フレーム)を活用するのも良し!という感じです。

――ザクのどんな部分が魅力なのでしょうか。

らいだ〜Joe一つ目(モノアイ)なのに、いろんな表情を醸し出す顔。僕はザクの事を「神デザイン」だといろんな場所で言っています。ザクは何をどんなに弄ってもカッコイイんです。例えばMGザクVer2.0をカッコ悪く作るって、本当に至難の業なのです。そしてMSVの偉業によるバリエーション。そこからどんどん妄想が膨らみ、十人十色のザクが生み出され続けています。正にMSの始祖。もし、ガンダムの世界にザクが存在していなければ、今のガンダム文化の発展は無かったのでは?と思うほどです。

――らいだ〜Joeさんの作品は“汚し加工”が有名です。塗装にこだわるようになった理由は?

らいだ〜Joe実は、僕は塗装が苦手です。塗装に関しては劣等感の塊と言っても過言ではありません。塗装のレタッチやスミ入れの失敗が「汚れてる?」と感じ、それが楽しくなってきて汚し表現を始めました。ただ、塗料の知識も乏しく、前述したように住宅環境の問題でエナメル系やラッカー系の塗料を使えませんでした。

――なるほど、モデラーにとっての住宅環境問題は「あるある」ですね。

らいだ〜Joeなので、リアルタッチマーカーやウェザリングマスターのような「お気軽ツール」を多用しました。でも、それはそれで楽しくて、思い通りの表現が出来るようになってきた頃にターニングポイントがあったんです。当時、中学生になっていた次男が僕の汚し方法を完全にマスターし、僕が作ったガンプラよりもカッコイイ汚しをするようになったのです。

――次男の成長が嬉しいと共に、モデラーとしては悔しさもありますね。

らいだ〜Joeはい。このままでは次男に負けてしまいます。そこでドライブラシを始めたのです。もちろんドライブラシも水性カラーを使用しました。ただ元来、面倒臭がりな僕はドライブラシでちまちま汚すのが億劫になり、スポンジでポンポン叩いでドライブラシの代わりにしたんです。それが「僕らしいガンプラ技術」の始まりかもしれません。

僕のお気楽汚しは「邪道」、技術はガンプラを楽しむためのキッカケ

―― “汚しテクニック”のポイントを教えてください。

らいだ〜Joe以前、無塗装パチ組み・汚しのみのMG百式で、2015年『GBWC(ガンプラW杯)』にてファイナリストに選んで頂きました。そのため、“無塗装パチ組みモデラー”と思われがちですが実はそうではありません。水性カラーで塗装もしますし、フルスクラッチもします。実際に、2011年はスクラッチ、2013年は水性カラーでの塗装・素組み、2017年は“お気楽スクラッチ”で、通算4度の『ガンプラW杯』ファイナリストに選んで頂きました。

――ガンプラ技術について、こだわりはありますか?

らいだ〜Joe僕のお気楽汚しは「邪道」だと言われていましたし、僕自身もそう思っています。だから僕の汚し方法は「テクニック」だとは思っていません。あくまで、ガンプラを楽しむための一つの方法であって、キッカケだと思います。ただ、汚す際には思いっきり妄想を楽しみます。この機体は何処でどんな戦いをしたのか?どんな整備状況でどのように保管されたのか?それによって、傷付き方や汚れ方もかわってくるはずですよね。僕はガンプラの表現には正解は無いと思っています。一時期よく言われました、「ガンダリウムやルナチタニウムは錆びないのでは?」「宇宙ではそんなに汚れない」など…。ただ一方で、「ルナチタニウムのホンマモン、見たん?なんでチタンに塗装するん?」とも思うわけです。超極寒・放射線直撃の宇宙空間、無数の塵やデブリ、ドック帰投時の常温に湿気…劣化も汚れも発生しますよね。だから妄想は無限に広がり正解は誰も知らないのです。唯一正解があるとすれば、それは作品を作ったモデラーさんの心の中にある!なんて思っています。

――「パチ組み成形色のまま」で作品をつくる理由や、こだわりはありますか?

らいだ〜Joe実は無塗装・素組みにこだわっている訳ではないのです。プラモの趣味って、結構独りで部屋に籠って作業をすることが多いように思われます。それは臭いや削り粉が出るのも一因だと思うのですが、僕は家族との時間を大切にしたいので、「リビングで出来る製法で作る」というこだわりは持っています。だからエアブラシも使い(え)ませんし、コンプレッサーも持っていません。ガンプラって、やり方によっては高価な機材やマテリアルを使わなくても、充分に楽むことができますし、充分にいい表現も出来ます。そして最もこだわっていることと言えば、どんな制作方法であっても、どんな表現方法であっても、思いっきり楽しむ!事ですね。最近では有難いことに模型雑誌の『ホビージャパン』誌に作例を掲載させて頂く機会を頂いておりますが、作例であっても楽しむことを第一に行なっていますし、その楽しさを他のモデラーさんにも共有したいという想いで原稿も書いています。

――今回紹介しているドムですが、こちらを制作された背景は?

らいだ〜Joeこの子は水陸両用実験ドムという私が考えたオリジナルで、「勝手にMSV」と呼んでいます(笑)。2013年頃だったと思うのですが、『ホビージャパン』誌の「オラザク選手権」で銅賞を頂きました。実はこの機体、友人がデザインし僕が立体化したもの。だからとても思い入れのある機体なのです。僕は二次元の絵から立体化するのは得意なのですが、オリジナル機をデザイン設計することが出来ません。だからアニメ『ガンダム ビルドファイターズ』(TV東京系)のようにパーツを組み合わせてまとめるセンスがありません。人には得手不得手というものがあります。苦手なところを無理やり上げようとするより、得意なところを伸ばして苦手な個所をカバーする方が、全体の完成度をアップ出来ると考えています。これはプラモの話だけではなく、現実の仕事や勉強にも同じことが言えると僕自身は思っています。

――「勝手にMSV」は、ガンプラ好きガ一度は通る道ですね(笑)。らいだ〜JoeさんにMSVが与えた影響を教えてください。

らいだ〜Joeガンダムのデザイナーである大河原邦夫先生のMSVと出逢わなければ、今の僕は存在していないと言っても過言ではないでしょう。現代のガンダムもカッコイイと思います。でも、大河原デザインのMSVには何か“漢臭さ”と言いますか、言葉では言い表せない魅力があるのですよね。それは僕が大河原デザインのMSVのような体型だから…と言うのもあるのかな(笑)?

――らいだ〜Joeさんにとってガンプラとは?

らいだ〜Joe楽しむこと!を第一に続けてきたことが、少なからず色んな人に共感を得て、時には影響を与え、更にその輪が広がっていく。家族だってそうです。幼い頃は一緒にガンプラを作って楽しい時間を共有した子ども達。流石に二十歳を超えると一緒に作ることはほとんど無くなりましたが、今でも次男は「おとうさん、これ、エエやん」とか「ここ、もうちょい弄ったら?」など、ガンプラがコミュニケーションの一因にもなってくれています。何より、ガンプラを通じて知り合えた仲間達との出逢い。20代から60代、北は東北から南は九州まで、年に数回盃を交わしながら、ガンプラの話、家族の話、人生の話などなど…。ガンプラは人生を「スパイラルアップ」してくれる最高の趣味です。

ガンプラビフォーアフターTOPへ戻る

(C)創通・サンライズ

あなたにおすすめの記事

 を検索