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『あなそれ』『ホリデイラブ』好演、仲里依紗が見せる“サレ妻”演技の凄み

  • 『あなそれ』では『東京ドラマアウォード2017』助演女優賞を受賞した仲里依紗 (C)ORICON NewS inc.

    『あなそれ』では『東京ドラマアウォード2017』助演女優賞を受賞した仲里依紗 (C)ORICON NewS inc.

 現在放送中、深夜枠ながら平均視聴率5%台をキープしている人気作『ホリデイラブ』(テレビ朝日系)。夫婦の恋愛サスペンスと銘打つ不倫ドラマで、主演を務める女優・仲里依紗が夫に不倫される妻(=サレ妻)を演じ、話題となっている。仲といえば、昨年放送され、注目を集めたドラマ『あなたのことはそれほど』(TBS系)でも同様に“サレ妻”を演じ、背筋の凍るような芝居で反響が大きかった。不倫ドラマは昔から人気だが、なぜ、仲が演じる“サレ妻”は注目を浴び、女性の共感を得るのだろうか?

『ホリデイラブ』が打ち出した新たな不倫ドラマ、“不倫される主人公”の演技が話題に

 同作は、幸せに暮らしていると思っていた妻・杏寿(仲)が夫・純平(塚本高史)に浮気されるところから始まる。単身赴任中の純平は、同僚で既婚者の里奈(松本まりか)とベッドインしたところを彼女の夫・渡(中村倫也)に目撃されてしまい、その後も話数を重ねるたびにドロドロ展開に拍車がかかっている。

 そのような不倫ドラマとしてのシチュエーション自体はベタとも言えるが、『ホリデイラブ』の最大の特徴は“サレ妻”が主人公という点だ。そして、そんな純平のダメ男ぶりや、里奈のあざとさ、渡のモラハラ男ぶりはもちろん、仲里依紗演じる“サレ妻”の演技力が、高評価である理由のひとつとなっている。

 第2話では浮気を告白した純平が「家族3人でもう一度だけやり直させてください」と謝るが「私たち、もう終わりね」と涙声で告げ「二度と、この家に帰ってこないで。今すぐ出てって!」と杏寿が凄む。そのシーンはとても演技とは思えないほどで、女性なら同情せずにはいられないだろう。また第3話ではクリスマスの2日間だけ、娘のために純平が帰ってくることを許した杏寿。しかし、またも純平が里奈と会っていたことが発覚し、娘と楽しく話す純平を見ても一切、無言。ひたすら謝る純平に「簡単に信じてなんで言わないで。もうあなたのことを信じられない」と突き放す杏寿の冷え切った表情はリアル過ぎるほどだった。SNSでも「気持ちが分かりすぎる」「見ていて苦しくなる」などの声が寄せられている。

“憑依型”女優・仲里依紗の真骨頂! 徹底した「不倫拒絶」と「幸せな夫婦像」が相乗効果

 仲里依紗といえば、以前から“憑依型”と言われるほど渾身の演技で評価は高い。幅広い役をこなしており、2010年には『時をかける少女』『ゼブラーマン‐ゼブラシティの逆襲』で第34回日本アカデミー賞新人俳優賞、日刊スポーツ映画大賞、東京スポーツ映画大賞を獲得している。『時をかける少女』は2006年のアニメ映画版でも声の主演も務めており、両作で清純派の女子高生を熱演した。一方で、『ゼブラーマン‐ゼブラシティの逆襲』では過激な衣装で悪の華を咲かせたゼブラクイーンを演じ、セクシー系でも卓抜した演技を見せている。最近でも、前述の『あなそれ』以外にも『黒皮の手帖』(テレビ朝日系)で男を手玉に取るホステス役を演じて名バイプレーヤーとして輝いている。

 そんな実力派女優である仲が、主演作『ホリデイラブ』で再び演じる“サレ妻”。その演技力は期待以上と言えるだろう。例えば、制作発表会見で「パートナーが不倫したら?」と聞かれると「一生会わないであろう国外に行ってほしい。時差があって、同じ時間に寝たり起きたりしているというのすら考えたくない」と笑顔でサラリと“国外追放”を希望。そんな、徹底的に不倫した相手を拒絶する彼女の考え方も、更なる説得力となっているに違いない。

 その説得力は、仲が見せる幸せそうな私生活でも裏付けされている。今回『ホリデイラブ』で“サレ妻”を演じる仲も、役の杏寿同様に夫と子どもの3人家族。夫の中尾明慶とともにインスタグラムのストーリーに投稿する動画が人気だ。自身の顔を超デカ目に加工した突飛な可笑しさとともに、夫婦仲などのプライベートが1人語り動画で明かされ、その仲睦まじい様子が女性からウケている。インスタでは約170万人、Twitterでは約60万人ものフォロワーがいるということは、彼女のキラキラした夫婦生活の報告を待つ人がそれだけ多いということだろう。そんな彼女が幸せを壊す不倫の状況を演じ、浮気された妻の悲しみや憎しみを表現することで、仲自身も視聴者も感情移入しやすくなっているはずだ。

飽和状態の不倫報道、“不倫する側”への関心よりも“不倫された側”に同情が集まる潮流も後押し

 そもそも、不倫ドラマといえば、『金曜日の妻たちへ』(83年/TBS系)など、昔から人気のドラマジャンル。しかし、多くの場合は“不倫をする側”の開放感への憧れが人気の理由とも言える。14年に放送され、映画化もされた『昼顔〜平日午後3時の恋人たち〜』(フジテレビ系)も同様で、上戸彩演じる裕福だった人妻が不倫におぼれていくシーンはドキドキ度満載だった。

 また、昨今の不倫報道で注目の的となるのももっぱら“不倫する側”。だが、そんな中で、“不倫された側”として注目を浴びたのが去年、藤吉久美子との不倫騒動があった夫の太川陽介だ。『不倫会見「対応が上手かった芸能人」』ランキング(ORICON NEWS調べ)でも2位にランクインしており、多くの共感を得たことがわかる。SNS上でも不倫会見で「された方が気の毒」という意見も多く見られ、もはや飽和状態とも言える不倫報道で“不倫した側”を執拗に叩くよりも、“不倫された側”に世間の同情の声が集まり注目されることも少なくない。

 『あなそれ』で“サレ妻”の評価を得た仲里依紗が、主演として再び“サレ妻”を演じている『ホリデイラブ』。SNSで見せる仲の“幸せな生活”を知っている視聴者の多さと、その裏返しとなるような説得力のある演技の凄み、そして、昨今の不倫報道で“不倫をされた側”に同情が集まっていることも、仲の“サレ妻”演技に更なる共感が得られている要因となっていることは間違いない。

(文/今 泉)

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