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かつて人気を博した薄幸系ドラマが減少の一途、“薄幸ヒロイン”も不在

  • 薄幸系ドラマが減少の一途、そんな中薄幸枠独走状態の木村多江 (C)ORICON NewS inc.

    薄幸系ドラマが減少の一途、そんな中薄幸枠独走状態の木村多江 (C)ORICON NewS inc.

 ここ最近の話題になった“恋愛ドラマ”といえば、『あなたのことはそれほど』(TBS系)に代表される“ゲス不倫ドラマ”や、『逃げるは恥だが役に立つ』(同)などの“契約恋愛・結婚”といった、現代の恋愛の形を体現するラブコメものが挙げられる。だが、かつては不治の病にかかったヒロイン×それを支える恋人…といった、いわば“薄幸ヒロイン系ドラマ”が恋愛ドラマの“王道”だった時代もあったのだ。しかし今では、薄幸系ドラマはほとんど放送されなくなったし、それに伴い薄幸ヒロインを演じられる“薄幸系女優”も少なくなったようだ。果たしてこのまま薄幸系ドラマは絶滅してしまうのだろうか?

『赤いシリーズ』や『高校教師』など、かつて人気を博した薄幸系ドラマ

 1960年代からはじまるNHKの朝の連続テレビ小説にしても、戦争や貧困に絡んだ女性の物語が多く、薄幸系ドラマは“定番”だったが、現在の中高年にとって印象に残る薄幸系ドラマと言えば、やはり1974〜80年にかけて放送されたTBS系作品だろう。特に山口百恵が出演した『赤い疑惑』や『赤い運命』『赤い衝撃』などは、出生に秘密があったり、不治の病にかかったヒロインが運命に翻弄されながらも健気に生きていく…というのが定番で、父親役に宇津井健、恋人役に三浦友和をあてた作品はどれも高視聴率を記録。山口百恵は薄幸系ヒロインとして国民的大スターにのし上がったのである。

 また90年代で言えば、『高校教師』(TBS系/1993年)で暗い影を持った女子高生を演じ、野島伸司氏の脚本による一連のドラマの常連だった桜井幸子や、『ポケベルが鳴らなくて』(日本テレビ系/1993年)で、おとなしそうなルックスながら妻子ある中年男性と不倫関係に陥る保母役を演じ切り、なぜか女性週刊誌でバッシングまで受けてしまった裕木奈江なども、役柄的には薄幸系女優と言えるだろう。さらに言えば、脇を固める薄幸系女性を演じさせたら天下一品の奥貫薫といった存在もある。

“薄幸ど真ん中”ドラマはリアリティよりコメディ色が強くなってしまう傾向に

 一方、最近の薄幸系ドラマで言えば、香里奈が脳腫瘍になったOLを演じた『結婚式の前日に』(TBS系/2015年)が記憶に新しいが、今では“暗い結末”が予想できるドラマを10〜12回も視聴し続けるのは、けっこう難しくなっているようだ。視聴率を上げるためにも、1話完結形式のドラマが増えている中、制作側にしても、最初から最後まで不幸なヒロインが主人公というドラマは作りにくいというか、そこまで説得力のあるストーリーのリソースがないし、視聴者も同情の涙を誘われるというよりは、あまりのリアリティのなさにコメディっぽく映ってしまう可能性もある。

 そうした意味では、安達祐実の『家なき子』(日本テレビ系/1994年)くらいが“薄幸ど真ん中”ドラマの最後と言えるかもしれない。決めゼリフは「同情するなら金をくれ!」であり、薄幸ながらも“健気”ではなく、強く・しぶとく・たくましく生き抜く少女の姿を徹底的に追求したことで、かえってリアリティがあると評価され、高視聴率を獲得したのだった。

木村多江が薄幸枠独走、演技派薄幸ヒロイン再来は?

 しかも最近は、不幸であってもヒロインが底抜けに明るいキャラクターだったりすることも多く、若手女優が正面切って薄幸ヒロインを演じる機会も少なくなっているようだ。薄幸な役柄はあくまでもドラマの一部分であり、脇を固めるスパイス的な存在となっている傾向にある。そしてその枠は、今や木村多江の独占状態・一極集中であり、薄幸枠独走状態と言っても過言ではない。

 それでも、スキャンダラスな悪女役のイメージが強いながらも、『1リットルの涙』(フジテレビ系/2005年)や『タイヨウのうた』(TBS系/2006年)などで難病に苦しむ少女を演じた沢尻エリカの例もあるように、“どベタ”だが心から泣ける薄幸系ドラマでこそ演技力が浮き彫りになるということもある。薄幸ヒロインとして才能を開花させる女優の誕生を期待せずにはいられない。

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