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徳永えり、30歳で飛躍の裏に“バイト経験” 女優業から離れて気付いた「自分の生きる道」

 前7月期のドラマのなかで、深夜にも関わらず女性視聴者を中心に注目を集めた作品がある。それがテレビ東京系『恋のツキ』だ。特に本作で連ドラ初主演を務めた女優・徳永えり(30)は、「第13回コンフィデンスアワード・ドラマ賞」でも「主演女優賞」候補として名前が挙がるほど高い評価を得た。もともとキャリア14年の実力派女優ではあったが、17年後期のNHK連続テレビ小説『わろてんか』出演後は、『デイジー・ラック』(NHK総合)、『ヘッドハンター』(テレビ東京系)、『健康的で文化的な最低限度の生活』(関西テレビ/フジテレビ系)と出演作が目白押し。さらに、今年の東京国際映画祭「日本映画スプラッシュ」部門にエントリーされた映画『月極オトコトモダチ』で映画初主演も経験。一気に注目女優の仲間入りを果たした。新垣結衣、戸田恵梨香、吉高由里子、佐々木希、榮倉奈々ら人気女優が揃う88年世代のなかで、独自のポジションを築きつつある彼女に話を聞いた。

キレイなキスはいらない、共演者には「どこを触ってもらってもいい」と宣言

――ドラマ、映画で初主演を経験されました。改めて、主演というのはいかがでしたか。
徳永 主演の大変さを肌で感じています。これまでご一緒してきた主演の方々に、改めて「この大変さを理解せずに接してしまい、すみません」という気持ちです。でも、嬉しかったこともありました。毎日現場にいられて、みんなの顔が見られる。それに、どんな些細な表現でも拾ってくれる。私はこれまで、主人公の受け身になる役が多かったので、当たり前ですが細かい芝居をしていても、カメラはメインの方に向いているわけです。それが主演になると、私が考えてやった小さな動きや表情も、みんな拾ってもらえる。自分にカメラが向いていることが、とにかく新鮮でした。

――『恋のツキ』では、ハードなシーンも多かったですね。
徳永 メインの男性陣とは、全員撮影初日から濡れ場という(笑)。私は最初から、「何をしても、どこを触ってもらっても良いです。ただ、放送できる範囲があるので、そこだけは気をつけてもらえたら」とお話ししていたのですが、やっぱり女性に触れるのって気を遣いますよね。(恋人役の)渡辺大知さんも最初は戸惑っていましたから。「え、大丈夫なんですか?」みたいな。でも、この作品はキレイなキスなんかしたってしょうがない。ディープにやることで、30代のワコさん(徳永が演じた主人公)のリアリティが出るのだから、できる限りのことをやりたかったですし、今回はそれをスタッフの皆さんにキレイに撮っていただけた。みんなの力が詰まっている作品だったと思います。

『わろてんか』で“鎧”が外れた、濱田岳との夫婦役で芝居の楽しを実感

――今年は出演作品が目白押しの大活躍ですが、飛躍のきっかけになったことはあったのでしょうか。
徳永 1つのターニングポイントでガラッと変わったということではなく、自分のなかにあった“鋼の鎧”が、1つの作品で右肩が外れ、次の作品で左肩が外れ……みたいな。徐々に落ちていって、最終的に『わろてんか』ですべて落ちた。あの作品で裸にされた感覚になりました。

――どんなことを学びました?
徳永 (夫役の)濱田岳さんと共演できたのが大きかったですね。私はどちらかというと不安症なので、台本をきっちり言わなければいけないんだとか、決められたことをやるほうが、性格的にも好きだし安心するんですけど。濱田さんはそれとは真逆な方で。そういう方と対峙した時に、「私がやり方を変えなければいけないんだ」と思ったのが、(鋼の鎧が落ちた)一番大きなきっかけでした。でも、そのおかげで、これまで楽しいと思ってできなかったお芝居の楽しさを覚えました。

30歳を前に将来考えアルバイト、人の温かさに触れ号泣「私らしく生きる道がある」

――『わろてんか』の少し前まで、目立った出演作がなかった時期もあったようにも思います。昨年の前半ぐらいでしょうか。
徳永 少しお仕事はしていましたが、30歳を前に、私の人生これからどうしていこうかなと考えていた時期で、アルバイトをやらせてもらっていたんです。
――女優さんがアルバイトを!?
徳永 昔から飲食をやりたいと思っていまして。店員は私1人という都内の小さいカフェで、朝5時6時に起きて、7時ぐらいにお店に行って仕込んで、お客さんを待って、お客さんと話しながら食事を提供して…ということを週に半分ぐらいですかね。半年ほどやらせていただきました。私、10代から20代半ばまでずっと、仕事と自分を切り離せなかったんです。本来なら仕事以外にも、恋愛、友だちというものがあるのに、私は仕事と自分が同じライン上にあって、仕事でダメなことがあると、自分を否定されたようになっていたんです。だから、一度仕事と自分を切り離して、本来自分がやりたかったことをやってみようと。

――それがカフェだっったんですね。
徳永 自分が作ったご飯を、目の前で「すごくおいしいです」と言ってくださる。それを聞いて、野菜を切りながらボロボロ泣いたりして。でも、そんな経験をしたことで、「私は大丈夫だ」と思えました。女優というお仕事は、人から求められて成り立っていますけど、もしそれが絶たれてしまったとしても、私は私らしく生きていく道があるというのが明確になった。だったら、いま芝居の世界で必要として下さる方がいるのなら、それを頑張ろうと思えたんです。

――『わろてんか』の撮影はその直後から?
徳永 はい、そこですぐに濱田さんと出会って鎧を下ろしていただいたので、濱田さんには本当に感謝しています。

信じ貫いた言葉「えりは30歳から」、必要なのは歳を重ねること

――これから、どんな役をやっていきたいですか。
徳永 この仕事を始めた10代の時から、事務所の社長には「えりは30歳からだな」と言われていて……。それじゃあ10代、20代をどう過ごせばいいのかなって(笑)。とにかく、自分にとって必要なのは歳を重ねることで、それが武器になると思っているので、歳を重ねるたびに「次はどんな役をできるんだろう」と楽しみで。実際『恋のツキ』も、「これ私がやっていいんですか?」という作品でしたし。

――それはどういう意味で?
徳永 10代のころは学生役などもやっていましたが、その後は女を描く時代がまるっきり抜けている状態で、すぐにお母さん役が多くなったんですよ。だから「私には恋愛とか、女を描くことが期待されていないんだ」と、ずっと思っていたんです。ところが30歳を超えたら、急に恋愛もののお話が増えてきて。特に『恋のツキ』は濡れ場があるじゃないですか。「私がやっていいの? やった〜」みたいな(笑)。今までエロスのかけらもないと言われてきたので、この作品である程度やりたいことは満たされた。抜けていたと言われていたことが一気にできたので、これから来る役では、もっといろいろなことができるかもと、自分で自分が楽しみなんです。ただ、いかんせん地味なんですけれどね、私(笑)

提供元: コンフィデンス

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