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年間映画興行ランキング『邦画&洋画に共通するヒット作の傾向とは―』
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年間興収はおおよそ2000億円前後 ほぼ前年なみ
だが、視点を少し変えれば、『アナ雪』があったにも関わらず、年間の興行が大躍進とはいかなったことのほうが、映画界にとってはより重要である。深刻であると言ってもいい。全体の年間成績から、それは一目瞭然である。誇るべきは誇っていいが、『アナ雪』で浮かれてはいけない。
2014年は、1年を通し、おおよその興収で2000億円前後あたりとみられる。12月の成績が、いまだわからない段階なので誤差は出るだろうが、前年から大きく飛躍しなかったことは確かだ。前年を大幅に上回っていた上半期までの興行成績が、夏興行の終わりごろから、どんどん失速していった。『アナ雪』などで大量に貯めた興収の“貯金”が、どんどん吐き出されていったのである。
とは言いつつ、『アナ雪』に加えて、『永遠の0』と『STAND BY ME ドラえもん』が、前半から夏場あたりまでの興収増を引っ張ったことは確認しておきたい。これに、『るろうに剣心』の2部作を加えると、2014年の邦画と洋画のめぼしいヒット作の傾向がわかる。そのひとつの共通点として、CG映像などの進化が、興収を著しく膨らませているのが注目される。CG映像や各々描写の中身はすべて違うが、これまで見たことがないような多様な映像の連鎖が、観客の大きな支持につながっていることは特筆すべきだと思う。
軸は揺るがさず製作姿勢を変えつつある松竹の成功
松竹は、確実に企画のバリエーションが広がってきた。山田洋次監督の作品を中心に動いてきた同社の製作事情だが、その基本方針は維持しつつ、徐々に製作姿勢を変えつつあると言えようか。基本の軸は揺るがさず、製作の全体の動きとしては、若い層を視野に入れた企画の融通性が確立してきたということだろう。この流れは、同社創業120周年を迎える来年2015年でも期待ができそうだ。
洋画は、『アナ雪』の公開時、映画館で大変な量の予告編が流れた『マレフィセント』が、『アナ雪』以外の洋画では図抜けた成績になったのが興味深い。これは、『アナ雪』効果であるのは間違いないが、予告編の重要性を改めて考えさせる。どの映画の上映のときに、どの映画の予告編を流すか。場当たり的ではない知恵を絞るべきであろう。これは、配給会社の力関係を超えて、映画館の側こそがアピールすべきであろうとも思う。
厳しい興行事情のなかでどのように花開かせるか
これは、由々しき事態だと思う。監督のこだわりとは、映画の本質とも強いかかわりをもつ。何故、映画を作るのかという問いのひとつの回答が、そこにあるからである。そこに意味がなければ、映画にかかわる必要もなくなる人たちが多くいる。監督の作りたい作品を、この厳しい興行事情のなかで、どのように花開かせるか。ここが脆弱化すると、映画は随分とわびしいものになってしまう。映画を何故作るのかといった問いは、商業性のなかで、もっと煮詰めるべきではないのか。
さて来年2015年は、とくに夏興行に話題の作品が集中するのが見ものである。『HERO』『進撃の巨人』『バケモノの子』などを、一挙に夏公開する東宝がとくに壮観だ。上述の監督のこだわりは、そのなかで、どのような成果となって現れるのだろうか。商業主義を否定しない私は、それとギリギリ闘う監督たちの意欲と挑戦を強烈に見たいのである。
(文:映画ジャーナリスト・大高宏雄)
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