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CREATORx2 TALK:Vol.3『アニメ監督・新海誠×若手起業家・椎木里佳:アニメ観客層に変化?若い女性ファンが増える背景とは』
ここ4、5年くらいは女の子の方が多い(新海誠)
新海誠ありがとうございます。
椎木里佳新海監督は、街の景観とかを大事にして描いていらっしゃいますよね。最近は外を歩いていてもスマホを見ていることが多くて、顔を上げることが少なくなってきていたんですけど、そういえば街の景色ってそんなに意識的に見ていなかったなと思って。そういうことに気づけたことも良かったです。
椎木里佳そうです。18歳です。
新海誠『君の名は。』公開前には、映画プロモーションで全国の試写会をまわっていたんですが、お客さんはほとんどが女性。場合によっては80%くらいが若い世代の女の子だったときもありました。もちろんそれは主演の神木(隆之介)くんが舞台挨拶に来るからということも大きいとは思うんですが、神木くんがいないときでも女の子がすごく多かった印象があります。だから今作は、ふだん僕のアニメに接していないような方たちが観てくれているのかなと思っているんです。
椎木里佳私のまわりの子たちに聞いても、『君の名は。』に興味があるという女の子はすごく多くて。みんなスマホで映画の予告編はよく観ているんですよ。この映画は、とくに若い女の子の期待度がすごく高くなっているなと感じていました。
1973年生まれ。長野県出身。2002年、短編作品『ほしのこえ』でデビュー。新世紀東京国際アニメフェア21の公募部門優秀賞をはじめ多数の賞を受賞。2004年、初の長編映画『雲のむこう、約束の場所』公開。第59回毎日映画コンクールのアニメーション映画賞を受賞。2007年公開の『秒速5センチメートル』で、アジアパシフィック映画祭の最優秀アニメ賞、フューチャーフィルム映画祭(イタリア)のランチア・プラチナグランプリ受賞など世界で評価を受ける。その後、『星を追う子ども』(2011年)『言の葉の庭』(2013年)でヒットを続けるとともに、次世代の気鋭監督として国内外で高い評価と支持を受けている。
http://shinkaimakoto.jp/(外部サイト)
椎木里佳観ますけど、みんなが観ているピクサーとか一般的な作品が多いですね。
新海誠深夜アニメとかは観ないですか?
椎木里佳私はあまり観る機会がないんですけど、女子中高生のマーケティングの仕事をしていると、アニメを観ること自体がふつうになっているというか、昔のような“オタクが観る”というイメージはなくなっている気がします。学校で目立っている子たちでも、アニメ好きの子は多いですし。いまはアニメに対する壁というか抵抗感みたいなものはないと思います。
新海誠ここ数年は、僕の作品を観る観客層が変わってきていて。以前は20〜30代くらいの男性客が多かったのですが、ここ4、5年くらいは女の子の方が多くなってきています。
椎木里佳いまはアニメだからどうっていう意識はないんじゃないでしょうか。おもしろければふつうに観るっていう。あと、やはり女性って男性も一緒に連れていくじゃないですか。だから女性が集まるものには、より男性も集まると思います。
恋愛の悩みごとはいまも5年前も変わらない(椎木里佳)
椎木里佳音楽は大きいかもしれないですね。RADWIMPSって、私たちよりもう少し上の世代から人気だと思うんですけど、高校生くらいの世代からも支持が厚い。自分たちの気持ちを代弁してくれる人という気持ちがあります。とにかくRADWIMPSが流れる予告編がすばらし過ぎて、それで心奪われて観たいという子たちも多いんじゃないかと思います。実際、映像と音楽がすごくピッタリだったと思います。
新海誠RADWIMPSがデビューした頃ってまだ子どもだったんじゃないですか?
椎木里佳小学生ぐらいでした。ただ、私より少し上の世代にRADWIMPSファンがかなり多くて、影響を受けていました。そのころからやっぱり男の子のファンが多いんですけど、女の子でも聴いている子は多かったですね。あと最近、女子高生たちのあいだではバンドブームが来ている気がします。back numberさん、ゲスの極み乙女。さんとかをみんなよく聴いているんじゃないかな。
1997年生まれ。東京都出身。中学3年時に株式会社AMFを創業。現在、慶應義塾大学文学部在学。総勢80名の女子中高生で組成される「JCJK調査隊」を率い、10代のマーケティング調査、アドバイス等をナショナルクライアントを中心に提供。また、スマートフォン向けアプリ開発などの事業活動を展開。情報番組『サンデー・ジャポン』(TBS系)準レギュラーなどメディア出演多数。著書に『女子高生社長、経営を学ぶ』『大人たちには任せておけない!政治のことー18歳社長が斬る、政治の疑問ー』がある。
http://qreators.jp/qreator/siikirika(外部サイト)
椎木里佳しています。中1から高3までの女の子80人ぐらいを集めた「JCJK調査隊」というマーケティングチームで、アンケート調査や座談会などをやっています。エンタメ系ですと、映画の脚本が事実と合っているか、リアリティがあるかなどのチェック依頼とかが多いですね。やはりいまどきの女子中高生が考えていることや流行っていることって日々変わっていくので、エンタメだけでなく一般企業も含めて需要は高いと感じています。
新海誠コミュニケーションツールが変わったとしても、恋の悩みだったり、心の悩みだったりといった思春期の苦悩というのは、根本ではそんなに変わらないのかなと思っているんですが、実際はどうですか? 5年前にはなかったような悩みはあったりするんですか?
新海誠高校生が主役の作品を作るときには、自分が10代の頃に抱いていた悩みなどを思い返しながら、想像で描くことになるんです。悩みの本質的な部分が今でも変わっていないのであれば、まだ僕も映画を作ることが出来るのかなと安心しました。
椎木里佳この映画を観たときは、いまの若い子はこんなことはしないんじゃないか、言わないんじゃないか、と思ってしまうようなところは全くなかったです。パンケーキの写真をパシャパシャ撮るシーンがあったじゃないですか。ああいうのって私たちもよくやるなと思って。高校生の生活のなかの細かい描写がとてもリアルだなと思って観ていました。
新海誠それは良かったです。いまの高校生がリアルに何を考えているかというとわからないことも多いし、最終的には人によってみんな違うじゃないですか。たしかに全体の傾向はありますから、リサーチして調べなくてはうまくいかないこともあると思いますが、でもやっぱり映画で描く10代の気持ちというのは、内発的なものだと思うんですよね。