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“ペットボトルの紅茶は甘い”、イメージを打破したコンビニの“無糖”紅茶、普及の背景

  • 『アールグレイティー 無糖』

    『アールグレイティー 無糖』

 欧米では、お茶会など優雅な時間を過ごす際の飲み物としてお馴染みの紅茶は、淹れ方からカップまで強いこだわりを持つ人も多い。一方、ペットボトルで紅茶を飲む習慣が根付いた日本では、独自の発展を遂げてきた。かつて「ペットボトルの紅茶は甘い」という印象があったが、近年はコンビニオリジナルの無糖紅茶も増加傾向に。“甘くない”ペットボトルの紅茶が普及した背景を探る。

ペットボトル紅茶の進化の過程 冷えると白濁するため、初期は加糖やミルク入りでカバーするのが主流だった

 日本初のペットボトル入り紅茶飲料『午後の紅茶』(キリンビバレッジ)が発売されたのは1986年のこと。同社では1984年に甘味の強い缶入り紅茶を発売しているが、売上が低迷したことから甘みを控えた『午後の紅茶』を開発した経緯がある。すっきりした甘さで大ヒットし、その後は各飲料メーカーからさまざまなペットボトル紅茶が発売されるようになった。

 とは言え、ペットボトル紅茶の市場はその他の飲料に比べると小さい。2022年度の販売金額ベースではコーヒー20%、茶系飲料(緑茶、ウーロン茶、麦茶など)19.6%に対し、紅茶は5.2%となっている(清涼飲料水統計2023より)。

 その理由の1つとして考えられるのが、「ペットボトルの紅茶は甘い」という先入観だ。『午後の紅茶』ブランドからは2011年に「おいしい無糖」が発売されているが、長らくペットボトル紅茶の主流は、加糖のストレートティーやミルクティーだった。お弁当やおにぎりに合わせるなら、甘くない緑茶やウーロン茶などが選ばれやすい。また、近年は健康志向の高まりで、糖分の摂取を控える人が増えている。

 一方の紅茶専門店では、“無糖”で提供されるのが一般的。そもそもペットボトル紅茶を無糖化するのは、技術的に難しいのだろうか?

 紅茶は冷えると白濁する性質がある。これはタンニンとカフェインの結合によるもので、これを防ぐ方法の1つが「冷やす前に砂糖を加える」というものだ。また、ミルクを加えれば白濁も気にならない。ペットボトル紅茶に加糖やミルクティーが多いのは、透明なペットボトルに詰めた際の美しさを追求したことも理由の1つと考えられる。

無糖紅茶の登場でペットボトル飲料市場にも変化が…健康志向の高まりとコロナ禍が後押しに

  • 『みつりんご香るアールグレイティー 無糖』

    『みつりんご香るアールグレイティー 無糖』

 いまでは、飲料メーカーのさまざまな技術開発で、すでに白濁の問題はクリアになっている。近年は、飲料メーカー各社から数々のペットボトルによる無糖紅茶が登場し、コンビニ各社でもプライベート(PB)商品として発売されている。

 2019年にはペットボトル紅茶の売上が過去最高を更新し、以後も年々拡大している。とはいえ、他の飲料に比べたらまだまだ市場は小さい。

「これまでのペットボトル紅茶は、ミルクや加糖の商品が多く、清涼飲料としてゴクゴク飲めるものではありませんでした。食事のお供となる緑茶や麦茶などに比べて、紅茶はリラックスタイムの飲み物として認識されてきました。しかし、健康志向の高まりとともにペットボトルの無糖紅茶が普及し、現在は市場を牽引しています。また、コロナ禍に高まった癒しニーズも市場の後押しとなりました。しかし一方では、『無糖紅茶は物足りない』『味気ない』という声も一定数ありました」(ファミリーマート・櫛田奈美さん)

 長らくペットボトル紅茶のスタンダードだった「甘み」は、健康志向の高まる現代人には「飲みたいけど控えたい」というジレンマを生んでいた。また紅茶の醍醐味である香り・渋み・味を求めるコアな紅茶マニアには、ペットボトル紅茶を邪道と見なすむきもある。ペットボトルの無糖紅茶は一定の支持を得ながらも、ある意味で中途半端な需要に収まっていたのかもしれない。

 無糖なのにしっかり美味しい。そうしたチャレンジに挑んだのが、人気紅茶専門店・Afternoon Tea監修によるファミリーマートのPB「ファミマル」のペットボトル紅茶だ。2021年の無糖アールグレイ、ルイボスティーに始まり、昨年春夏からはフレーバーティーにも着手している。この秋冬にはホットの『みつりんご香るアールグレイティー 無糖』が新登場しており、発売2週目間で前年のホット『アールグレイティー 無糖』と比較して約1.5倍の販売数量と好調だ。SNSでは「無糖なのに、ふわっと香る甘い香りがたまらない」と味気なさや物足りなさを感じさせない。

「昨年春夏の『シャルドネ香るストレートティー』が販売終了になった時には、弊社のお客様相談室に『こんなに美味しいのになぜ?』といった問い合わせが100件以上ありました。その後、ピーチやオレンジなどフレーバーを重ねるごとに『次はどんな味?』と期待していただけるシリーズになっているのを感じます」(櫛田さん)

コーヒーと異なり“淹れたて”の提供が難しい紅茶、美味しさと手軽さを兼ね備えたペットボトルが妥当

 1981年以来、日本の紅茶文化を牽引してきたAfternoon Teaがペットボトル飲料に取り組むのは、本シリーズが初のこと。上質な紅茶と優雅な時間を提供し、確固たるブランドを築いてきAfternoon Teaは、ペットボトルでの提供に抵抗はなかったのだろうか?

「お茶ととともに過ごす豊かな時間を提案しているAfternoon Teaでも店舗以外で、より手軽にお茶を楽しめる体験を広げていきたいという思いがありました。これまでも店舗で茶葉やティーバッグを販売されていましたが、ペットボトルとは製造技術も工程も全く異なるため、なかなか商品化ができないとのことでした。

また、ペットボトルでの生産となると、茶葉の確保もそうですが、それなりの数が量産できるコンビニなどでないと、高価格での提供になってしまいます。『Afternoon Teaの店舗がない地域の方にも、手軽に楽しんでもらえる』とファミリーマートとの協業をとても喜び、商品開発にも全面的に協力してくださいました」(櫛田さん)

 ペットボトルであってもブランド名を損ねることはできないというプライドもあったはず。櫛田さんは「Afternoon Teaの知見を借り、味や香りにこだわり、何度も試作を繰り返し商品化に至りました」と言う。

 コンビニ飲料といえば、近年定番となっているのがカウンターコーヒーだ。しかし紅茶については、一部コンビニでカップ入りのお湯とティーバッグで提供されたこともあったが、あまり普及していない。

「理由はさまざま考えられますが、1つには紅茶を茶葉からベストな状態で淹れるのが難しいという点が挙げられるでしょう。茶葉をお湯に浸す時間が長すぎると渋みが出てしまうし、逆に短すぎると香りが立たない。これはティーバッグでも同じです」(櫛田さん)

 紅茶専門店では客が好みの味を決められるよう、茶葉入りのティーポットと共に差し湯を提供されることも多い。一方でコンビニユーザーが飲料に求めるのは、美味しさと共に手軽さも重要だ。

「ペットボトル飲料が追求するのは、万人に受け入れられる黄金比ともいうべき味。淹れ方によって味がぶれやすい紅茶は、ベストな状態でお届けできるペットボトルにフィットする飲料だと言えると思います」(櫛田さん)

 かつてコーヒーのメインターゲットは男性だったが、シアトル系コーヒーの上陸が女性層を取り込んだ。さらに挽きたて・淹れたてを手軽に味わえるコンビニのカウンターコーヒーの登場は、コーヒー党をますます増やすこととなった。紅茶がコーヒーに比べて嗜好性の高いマニアックな飲料に押し込められてきたのは、こうした社会背景があったことも考えられる。そんな紅茶の逆襲の決め手となるのは、コンビニや飲料メーカーの企業努力による手軽かつ満足度の高いペットボトル紅茶なのかもしれない。

(文/児玉澄子)

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