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「三大地鶏」に入らずも生産量日本一の“阿波尾鶏” 認知度低くとも選ばれる理由とは?
オンリーワンの地鶏を目指すため生まれた付加価値が“熟成”
「阿波尾鶏」は、徳島の在来種の軍鶏(阿波地鶏)にブロイラー種(=短期間で成長させる商業用の肉用鶏)のホワイトプリマスロックを掛け合わせた品種。そこへ独自製法を施したのが『熟成 阿波尾鶏』だ。貞光食糧工業が『熟成 阿波尾鶏』の取り扱いを始めたのは2014年。「阿波尾鶏」に“熟成工程”を加え、2019年9月からは全量を熟成処理している。
“熟成”とは、鶏を骨付きのまま0〜2度で4時間以上冷蔵庫貯蔵し解体すること。この製法で、特許も取得している。一般的な鶏ムネ肉は、筋肉繊維から水分が抜けてパサパサの食感になりがち。しかし、熟成処理を行なうことで筋肉繊維の間にしっかりと水分が保持され、調理をしてもみずみずしく弾力がある鶏肉になる。
さらに鶏肉の肉質を考慮した取り組みとして「エアチラー(空冷)方式」を採用。空気による冷却を行なうことで、鶏肉の水っぽさを解消し、ドリップの少ない歩留りのいい肉質に仕上がる。地鶏ブランドは各地に多数あるが、「阿波尾鶏」に高い付加価値を加え、オンリーワンの地鶏を目指している。
「最適な環境で、こだわりの地養素配合飼料(※)を与えることで、臭みがなく旨みの後引きの強い健康な鶏を育てます。さらには当社独自の製造設備で熟成を施し、おいしい阿波尾鶏をさらにおいしく召し上がっていただけるよう手間暇かけて製造しています」(貞光食糧工業 営業部・後藤直樹さん/以下同)
※地養素配合飼料=木酢精製液、ゼオライト(多孔質の天然鉱石)、ヨモギ、海藻の他、抗酸化作用のあるオリーブ粕を配合した飼料。
「敷居が高い」イメージを払拭し、家庭でも食べられる地鶏を目指す
「阿波尾鶏は、専門の飲食店や百貨店の精肉売り場だけでなく、『美味しいものをご家庭で食べたい』という消費者をターゲットにしたこだわりの量販店、生協を中心にお買い求めいただけます。実際に、コロナ禍による外出自粛が追い風となり、『家庭でちょっといいものを食べたい』というニーズをとらえ、販売は伸びました。地鶏生産量No.1の知名度を活かし、コンビニからの引き合いが強く、関西エリアを中心に今後メニュー化の予定です」
実際に、出荷量が落ち込んだ2020年のコロナ禍には、コンビニエンスストアでの展開も中四国エリアや近畿エリアのローソンで弁当やおにぎり等を、2021年には、セブン-イレブンでもおむすび、ブリトー、惣菜の3品を四国4県と中国地区の一部店舗で発売した。それぞれ好評を得て、“阿波尾鶏”のブランド認知も広まったという。
全国展開に向けた活動については「阿波尾鶏を開発した徳島県との連携が大きかった」と担当者は振り返る。『阿波尾鶏ブランド協議会』のバックアップもあり、販促活動、販促物の作成等は、県を通じて支援を受けているという。貞光食糧工業としては、展示会への出展やSNSを活用したキャンペーンなど、知名度アップ、ブランド化に向けて取り組んでいる。
鶏肉全体シェアはまだ0.2% さらなる販路拡大が命題
「幅広いお客様にお召し上がっていただきたい」との思いから、今年よりECサイトを整備し、通販にも力を入れている同社。「今まで外食個人店向けに販売していたものと、一般消費者向けに販売していたものを統合し、取り扱い製品も増やしました。昨年との対比で3倍近く伸びている月もあります。まだまだ伸びしろは大きいと感じています」と意欲を見せる。
地鶏としての認知度はともかく、今や日本一の生産量を誇る阿波尾鶏。担当者も「阿波尾鶏のブランド認知度は上がってきており、売り上げも伸びています。徳島県の代表的なご当地グルメとして味や品質に自信を持っております」と胸を張っている。
一方、阿波尾鶏の今後の展開としては、さらなる「販路の拡大」を大命題としているようだ。
「販路拡大のためには、従来のような精肉売り場をターゲットにした販売にとどまらず、直接消費者にお届けできる販路が必要と考えています。たとえばECサイトや道の駅、サービスエリアなどへも進出しています。そのために、使い勝手のいい切身や味つけ製品、さらには加熱加工品など新たな切り口の商品開発に力を入れていきます」