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“100歳超え”2人の老女の抱擁に反響、「介護のネガティブなイメージを変えたい」施設が紡いだ盟友の邂逅
近所なのに会えない2人の老女、認知症でも「励まし合って生きてきたことは覚えている」
「肩を抱かれている方が利用者なのですが、車椅子生活を送っており、2人はなかなか会うことが叶わなかったようです。うちのスタッフがデイサービスの帰りに寄って一緒に会いに行くと、とても感激されていました」と、『くろまめさん』を運営する稲葉耕太さんはその時の状況を明かす。
「利用者の方は認知症もあったのですが、相手のこと、2人で励まし合って生きてきたことはちゃんと覚えていて。『映画の1シーンのよう』というコメントもありましたが、おばあちゃんたちが生きてきた時代背景が想像できて、本当に胸を打たれました。老いていくということは、社会からフェードアウトしてしまったり、家族の“荷物”になってしまうということもあります。でも、老いたからといって、その人が築いてきたものがゼロになったり、人生の歴史が終わってしまうわけではありません。このお2人の姿を見ると、人生のはかなさとともに、その素晴らしさを実感できました」。
「ネガティブなイメージを変えたい」、“お世話するだけの介護”から脱却した施設
「介護というと、人気がない、暗い仕事、しんどい…などネガティブなイメージが付きまといます。メディアでもそうした問題が取り上げられがちなところもあると思いますが、果たして本当にそうなのか?ということを発信したい。介護のイメージを変えたい、という思いがあるんです」。
確かに、少子高齢化で避けては通れない大事な役割のはずなのに、介護業界から聞こえてくるのは、職員の給料が安い、離職率が高い、虐待が起こった…といった、ネガティブな話題が多い。稲葉さんは自身の経験から、「給料は確かに高くない。でも、それが本質ではない」と語る。
「お世話するということは、体のケアをすること。でも、体にフォーカスしすぎるのではなく、心にフォーカスしたい。重要なのは心で、僕らも利用者の皆さんの人生に感化されることで心が元気になっています。利用者さんたちも、お世話されるばかりでは自信がなくなります。彼らがこれまで成し遂げてきたことにフォーカスすれば、スタッフだって見方が変わるし、お互いの関係性が変わる」
そんな考えで、稲葉さんは介護の仕方を変えた。お世話するだけの介護、リハビリやレクリエーションに終始するだけが介護ではない。昔ながらの「田舎の暮らし方」をお年寄りに教わりながら取り戻していくことで、両者がますます元気になっていったそうだ。
機械的な管理はお年寄りと働く人の人間味を殺す…、人手不足に陥らない理由とは?
「たしかに、そうした施設はほぼないに等しい。ですが、それだけにInstagramで注目されているんです。うちの職員は25人、20〜40代の若いスタッフなので、意志決定がしやすい。これが規模が大きすぎる施設になると、介護の現場を知らない人がトップに立つことも多く、現場の声が生かされずに方向性も定めにくくなります。国としては効率を求めるだろうし、最近では異業種からの参入も多い。でも、ただ高齢者の受け皿を作ればいいというものではないのです」
だが、ただでさえ大変な仕事をしているスタッフに、さらなる負担を強いることにはならないのだろうか。
「機械的に、マニュアル的に、業務だと割り切った介護をすれば、確かに施設運営はしやすいのです。ですが、それだとスタッフとお年寄り双方の人間味を殺すことになる。ただでさえ、お年寄りの身体機能や認知力は衰えていく一方なのに、その不足分を補うだけの存在では、『何のために働いているのか?』という疑問を抱き、職業としてのアイデンティティがなくなってしまいます。老いていくことは、本能に回帰していくということ。それを良い意味で面白がりながら、その人生の最後の時間に人間味あふれる愉快なチームで寄り添うことが大切だと思います」。
このような考えのもとで運営されている『くろまめさん』では、介護施設には珍しく、人手不足に悩むことがないという。
「Instagramでストーリーをアップすると、1回につき10人くらい『働きたい』と言ってくる若者がいます。今の若者は昔と違い、給料や組織の規模や看板にとらわれずに、『より良く生きたい、働きたい』と思う人が多く、そうした視点で職場を選びます。SNS時代だからこそ本質が問われるし、ファンが付く。小規模事業者ほどこうした点でチャンスなんだと思います」。