ORICON NEWS
猫の殺処分は本当に減った? 高額な手術費や“引き取り拒否”というからくり「問題は何も解決していない」
獣医師会で決められる手術費用、「少しでも値段を下げるため」東京から愛媛へ飛んだ
殺処分される猫を減らすためには、まずは飼い主のいない、いわゆる野良猫の数を増やさないことが不可欠だ。そのために、多くの保護団体がTNR活動(捕獲し、不妊・去勢手術を行い、元の場所に戻す)を行っている。殺処分数が多い地域では、この不妊・去勢手術に問題があるという。
「手術費用は、多くが地域の獣医師会の間で決められていて、地方だと東京の数倍の費用がかかることが多い」と、溝上氏は明かす。猫を増やさないために必須の不妊・去勢手術が高額となると、多くの猫を処置しようとしても、ボランティアや個人ではすべての費用をまかなえるわけがない。地域で手術ができないのであれば、どうすればいいのか。愛媛県のボランティアの悩みに応え、『ねこけん』は獣医師たちによる出張オペ軍団を引き連れ、現地へと飛んだのである。
獣医師や必要機材など、すべての準備を1ヵ月で整え、『ねこけん動物病院』を2日間にわたり開院。会場には多くの人と猫が集まった。中には100頭の多頭飼育崩壊から保護された猫もいたという。
「今回、私たちが出張オペをした一番の目的は、不妊・去勢手術の値段を下げること。普通に考えれば、東京からわざわざ陸路で機材を持ち込み、医師団が飛行機で出張するなんて、非効率じゃないですか。ですが、交通費や経費を考えて手術代を決めても、愛媛県の一般の不妊・去勢手術代より安く済むんです。我々が安い金額で手術を請け負うことで、愛媛県の手術代が少しでも下がればいいと思って出張しました」。
殺処分されるのは多くが子猫、出張オペで何かが変われば
本当はすべての猫を手術してあげたい、ワクチンも打ってあげたい、保護もしてあげたい、安全で安心な生活を送らせてあげたい。それが、動物を愛するすべての人たちの願いだろう。それぞれ事情はあるのだろうが、現地の病院がもう少し協力的になってくれれば、何かが変わる。ほんのわずかな助けの手があれば、生まれた途端に処分される命を減らすことができる。殺処分される猫の多くは、生まれたばかりの子猫であることが多いのだ。
愛媛県で開院した「ねこけん動物病院」には、現地の獣医師も見学に訪れ、寄付をした先生もいるという。猫たちを「殺したくない、救いたい」という気持ちは、誰だって一緒なのだ。また、この出張オペを行ったことで、新たに地元ボランティアの横の繋がりができたのも、うれしい結果である。