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『次にくるマンガ大賞』入賞、“おとこの娘”をめぐる三角関係を描いた意図は?「偏見を変えたいという気持ちはない」
マンガ大賞入賞、多くの反響に驚き「漫画を描いてきて良かった」
――『先輩はおとこのこ』が『次にくるマンガ大賞2021』Webマンガ部門3位選出にされましたね。率直な感想を教えてください。
ぽむさん すごく光栄で、「信じられない」という気持ちが一番大きいです。想像していたより多くの方が『先輩はおとこのこ』を好きになってくださったんだなぁと実感できたのがなにより嬉しかったです。
――『次にくるマンガ大賞2021』といえば、コミックス部門、Web部門ともに話題作が次々に生まれています。『LINEマンガ 2021上半期ランキング(女性編)』でも6位など、高い注目度がうかがえます。この反響をどのように受け止めていますか?
ぽむさん ファンレターを頂いたり、Twitterでファンアートが投稿されているのを見ると、連載を始めた当初と比べて多くの方が『先輩はおとこのこ』を読んでくださっていることを実感します。本当に「漫画を描いてきてよかったな〜」という気持ちですね。でもあまり読者がいることを意識しすぎると、描くのが怖くなってしまいそうなので、あくまで自分が楽しめるものを作るつもりで最後まで描き切ろうと思っています。
――このほかにも“おとこの娘”を描いた作品が増えていると伺いました。ぽむさんが“おとこの娘”を描こうと思ったきっかけはあるのでしょうか?
ぽむさん 女の子を描くのが好きなんです。逆に男の子を描くのが得意ではなかったので、女の子同士の恋愛漫画を描きたいなって思っていました。そしたら「“おとこの娘”にしたら?」と言われて、「それなら楽しく描けそう!」と思ったのがきっかけです。でも描いてみたら意外と男の子(りゅーじ)のキャラクターの評判も良くて嬉しかったです(笑)。
男性による女装やメイク…徐々に浸透する文化描くも「偏見を変える」より「問題をどう解決するか」
ぽむさん あまり「偏見を変えたい!」みたいな気持ちはないですね。ひとりの人間がなにか問題を抱えた時に、どうやって解決していったらいいんだろう…ということを考えながら『先輩はおとこのこ』を描いてきました。なので、読者の方にもそれぞれ好きなように受け取ってもらえたらいいなーと思っています。
――性への悩みを抱えている方は世の中にたくさんいらっしゃいます。難しいテーマですが、とても明るく、読みやすい作品だと思います。描くうえで気を付けていることや意識していることはありますか?
ぽむさん お話が暗くなりすぎないように、暗いシーンの後には意図的に軽いシーンを入れ込んだりしています。まことの服装も、読者にどこまで受け入れてもらえるかを考えながら、露出や色など慎重に選ぶようにしています。
――「実はこんな裏テーマがある…」など、読者も気づいていなさそうなぽむさんのこだわりはありますか?
ぽむさん 家庭での様子は描くのに全然必要ないところなんですが、メイン3人の親の設定までこだわって考えました。それと自分で勝手に「webtoon(デジタルコミック)だからこそできることをどれだけ思いつけるか」をテーマに描いてます。
ぽむさん 個人的には、自分が読者として漫画を読んでいるとき、3巻くらいから登場人物が増えて話がそれたり、内輪ネタっぽくなっていくのがあんまり好きじゃないんです。自分が一番読みたい話を描こうとしていたら、自然とそうなりました。また、メイン3キャラを描くのがとても楽しいというのも大きいかもしれません。
――ぽむさん自身が描いていて特に楽しいシーンは?
ぽむさん りゅーじが妄想しているシーンは、何も悩まずに楽しく描けるので好きです。顔面のドアップシーンを描きこむときも楽しくて、ついつい時間をかけすぎてしまいます。それと、背景を描くのが最初はめちゃくちゃ嫌で避けていたのですが、最近慣れてきて楽しくなってきました。
――ラストシーンはもう決まっているのでしょうか?
ぽむさん ざっくりは決めていたのですが、途中でやっぱ違うなーと思ったりして、自分でもまだどうするか迷っています。早く決めてしまって頭をすっきりさせたいです…。
――今後の展開も楽しみにしています。今後注目していただきたいところ、これから作品を読む方へのメッセージなどがあれば教えてください。
ぽむさん 咲ちゃんがどう問題に向き合っていくか、見ていて欲しいです。最終回まできちんと描ききるので、見守っていただけたらと思います。気に入っていただけるかわかりませんが、ぜひ一度試していただけたら嬉しいです。