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「お父さんは“毒”を作っているの?」葉たばこ農家の苦悩、禁煙社会の逆風の中でも“枯れぬ誇り”
“日本の田舎”支える葉たばこ栽培、減少が意味するものは?

糸満市に広がる葉たばこ畑
沖縄の離島では若い葉たばこ農家が多いが、その点についても「田舎は若者が少なくなっていますが、中山間地でも育つ葉たばこの生産が地域の生活を支え、若者が土地に根付く理由になっています。離島にも独特の文化があり、それを守る担い手が若者。もしたばこが作れなくなってしまったら、若者は島を離れ、都会へ出稼ぎに出ることになり、観光資源ともなる文化も消えていくのではと危惧しています」(伊禮さん)。
前述のとおり、沖縄のほか、北海道以外の全国各地に散らばる葉たばこ農家。とくに多いのが、青森、岩手、秋田、山形、宮城、福島といった東北、関東では茨城に多く、ほかに長野、四国全域、九州でもほぼ全域にわたる。伊禮さんの言うとおり、葉たばこは他の農作物が育ちにくい中山間地でも栽培できるため、山地が多い日本では地域の主要作物となっていることも多い。全国トップクラスの生産量を誇る岩手県二戸市では、ある小学校のクラス児童の親の半分以上が葉たばこ農家で、地域を支える葉たばこについて、授業で学ぶ機会もあるという。
だが、たばこの消費量がさらに減少し、農家も減っていくと、そういった地域に住む人の暮らしを支える産業も、その土地の文化も、失われることになるのかもしれない。農業も、作物によってノウハウがある。資本も時間も費やす。産業が消えて若者が村を離れれば、さらに地域の経済規模が縮小し、過疎化する。単純に「他の作物に切り替えればいい」という話ではないのだ。
虐げられても「世界一の品質を」、農家の気概と“分煙社会”実現への願い
伊禮さんは、「たばこを吸うこと、育てること自体が、ひとつの文化になっているのでは」と語る。「私たちは、日本のたばこ、たばこを取り巻く文化を守りたい。そのためには、吸う人も吸わない人も快適に過ごせる、分煙社会を実現することが大切だと思います。お互いが思いやって、冷静に考えられるようになったらいいですね」と、今後のたばこ産業の行く末を見据えている。
とかく“嫌われ者”であるたばこ。だが、その裏側には全国の生産者がおり、それにより支えられる地域もある。時代による淘汰は仕方ないことかもしれないが、単に排除するだけでなく、逆風の中にいる彼らの気概と願いもまた、知っておくべきことではあるはずだ。
(文:衣輪晋一)