三陛下へ献上されていた「御料たばこ」の系譜?ベールに包まれる“皇室たばこ”の現在
「御料たばこ」の最初の記録として残っているのは明治時代
たばこと塩の博物館の主任学芸員・鎮目良文氏によると「江戸時代にすでに天皇家への“たばこの献上”という文化はあったのかもしれません。ただし、歴史的な資料として残っていません。それが正式にわかるのは明治時代に入ってから。明治16年頃に天皇家に献上していた『外池』が一番古いたばことして記録に残っています。そして、明治37年(1904年)にたばこが専売制となり、大蔵省専売局が天皇、皇后へ『御料たばこ』を献上していますが、そこからの歴史は記録が残っています」。
対外戦争とともに需要が急増した「恩賜のたばこ」
一方、天皇から一般へ贈られるたばことして知られる「恩賜のたばこ」。「恩賜」は「天皇家がくださる」という意味であり、「恩賜のたばこ」とは、「御料たばこ」であることもあり、そうではない「恩賜のたばことして作られたたばこ」である場合の2つの流れがあった。
その後も戦争は起き、恩賜の文化が続いていくなか、「恩賜のたばこ」という言葉が一般的になったのは、昭和6年に勃発した満州事変が契機になっているという。日本は満州国を建国し、大規模な軍隊を駐屯させた。そこへ日本からの慰問としてさまざまな物資が送られ、そのなかで兵士にとっての憩いとなるたばこは必需品だった。天皇家からの慰労となる「恩賜のたばこ」は相当量必要になり、一気に生産量が伸びていく。また、この頃は民間でも慰問としてのたばこの贈答が流行っていたという。