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(更新: ORICON NEWS

「オバサンが必死に不妊治療して…」世間の偏見と誤解に挑む、マンガ作者の葛藤

 妊活という深刻になりがちなテーマを、テンポのいいギャグと専門的な知識を織り交ぜて描き、不妊治療のバイブルと絶賛されるウェブ漫画『妊活夫婦』。物語は、フルタイムで働きながら不妊治療を受ける主人公の栄子と一郎(32歳&35歳)のほか、さまざまな事情から不妊に苦しむ夫婦が登場する。「妊娠できない原因は『人生設計のミス』」といった世にはびこる誤解と偏見を、作者の駒井千紘さんにバッサリ切ってもらった。

不妊治療=高齢=自己責任、偏見もしっかり描く

──駒井さんご自身も、不妊治療の末にお子さんを授かったそうですね。

駒井千紘さんはい。私が28歳の時、タイミング法でもなかなか授からず、検査をしたところ重大な男性不妊が発覚したのが治療のきっかけでした。不妊要因は主に夫側だったのですが、私自身も「排卵日ってなんですか?」程度の知識しかなかったので、褒められたものではなかったですが…(苦笑)。

──不妊治療を開始する年齢は平均32.1歳(妊活白書2019)と年々早期化しています。駒井さんも比較的お若かったのですね。

駒井さん不妊への関心と知識が広まっているのは、いいことですよね。『妊活夫婦』連載当時の2017年頃には、まだまだ不妊治療=高齢=自己責任という偏見がありました。つまり「若い頃に子作りを後回しにして遊んでいたせいでしょ」といった言説がまかり通っていましたから。

──それが、若ければ「必ず」妊娠できるという誤認識や、不妊治療の保険適用にまつわる批判にも繋がっていたように思えます。

駒井さん子育て環境が未整備な現代で、若くして出産した人の苦労も理解できます。一方で、若い頃に出産しなかった人にも、別の理由と苦悩があるわけで…。そこが知られてないのが、偏見の原因なのかなと思います。

──隣の芝生は…みたいなものですね。

駒井さんとは言え、自分の苦労は身近な人には明かせないもの。SNSではキラキラした日常ばかりが切り取られますしね。不妊治療もなかなか表では語られにくいために誤解と偏見を生んでいるのだとしたら、少しでも多くの方に現実を知ってもらいたいというのが本作を描くモチベーションとなりました。

「早く子作りしなかったせい」「オバサンが今ごろ…」冷たい世の中の現実

──年配の世代から「不妊は人生設計のミス」と責められる、という声も聞かれます。本作にはそんな一言では片付けられないほど、さまざまな事情による不妊が描かれます。

駒井さんたしかに年齢が進むほど、自然妊娠の成功率が低くなることは事実です。だけど現在のアラフォー、アラフィフ世代の女性たちの社会的立場は、かつてとは比べものにならないほど多様です。会社で産休を取りにくいプレッシャーがあった、家族の介護に追われていた、経済的に子作りができる環境ではなかったなど、適齢期に子作りをしたくてもできなかった方はたくさんいるんですよ。

──女性の社会進出への奨励と、就職氷河期が重なっている世代ですね。

駒井さん私よりも少し上の世代の女性たちですが、SNSやブログの声を集めれば集めるほど、その方たちの中には身体よりも社会的な要因で不妊になってしまった方が大勢いることがわかりました。それなのに上の世代からは「早く子作りをしなかったせいだ」となじられ、若い世代からは「オバサンが今頃になって必死に不妊治療して」とあざけられ…。必死で働いて現在の女性の社会進出の基盤を作ってきた女性たちに、「そんなのあまりにも冷たすぎる」と思ったんです。

──またその世代が若い頃には、まだ不妊治療の概念も広がっていませんでした。

駒井さん高齢不妊、卵子の老化などが認知されるようになったのは、実はここ10年ほどの話。その頃に30代半ばを迎えながら子どもを望んでいた女性たちは、とてもショックを受けたと思うんですよね。不妊の要因は男女50%であるというエビデンスが定着したのもごく最近ですし、いわば「時代の犠牲者」となってしまった世代の女性たちの妊活にも、もっと社会的な理解が進んでほしいという思いも本作には込めています。

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