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「子どもがいたら楽しいのにね」、悪気ない言葉にモヤモヤ 不妊治療マンガ作者語る“普通”への違和感

 約5年の不妊治療を経験した海原こうめさん。その治療下での心境を描いた「不妊治療マンガ」は、明るくポジティブな主人公のキャラクターに、読者からは共感や勇気づけられたという声が寄せられている。一方で、同作には「子どもがいること」が普通とみなされる社会への複雑な気持ちも描かれている。“当たり前”の家族のかたちとは何か? 作者の海原こうめさんに話を聞いた。

結果の出ない日々に苦悩する日々、「せめて漫画で明るく伝えたい」

――つらい不妊治療の日々を描いたマンガですが、明るくコミカルな作風で描かれています。

【海原こうめさん】治療を始めたとき、最初はリアルタイムでブログに記録記事を書いていました。でも、治療は痛いのに悪い結果ばかりで、だんだん記事を書くことが辛くなってしまったんです。少し時間が経つと、せめて漫画でなら明るく描けるのかな、と思ったことがきっかけでした。

――同じ境遇の方々から、共感する声がたくさん届いていますね

【海原さん】漫画にしてから読者がすごく増えました。「励まされました」という声だけでなく、お友達や身内が不妊治療をしていて、「気持ちを知りたくて読み始めて、役に立ちました」という声もいただきましたね。でも一方で、怖いコメントも届くようになりました。

――怖いコメントとはどんな内容ですか?

【海原さん】私は明らかに妊娠を望む年齢としては高めのアラフォーだったので、「その年でまだ妊活をしているなんて恥ずかしい」とか、「子どもをダシに金稼ぎをしている」とか、「治療できるお金があっていいですね」とか。文字や言葉にできないくらいの内容です。正直、キツかったですね。でも、何よりも『お金をいくらかけても妊娠しない』という事実しか得られないことが、当時は一番辛かったです。

――なかなか結果が伴わない日々で、どう気持ちを前向きに保ったんですか?

【海原さん】大きい声を出すとか(笑)、夫に言うとか。一番救いになったのは、ブログを通じて仲良くなった近所の同じ境遇の方とリアルに会って、愚痴を吐き合ったり、情報交換し合ったりしたことでした。

一番の悩みは“人間関係”、夫や義母に伝わらない苦悩

――当事者同士、気持ちを共有されたんですね。

【海原さん】不妊治療の肉体的精神的苦痛には、夫とすら話しにくいような話題も多かったです。治療にあたってくれる先生はお忙しくて1分診療もザラですから、不安があっても全部伝えるのは難しいですしね。普段の生活の中でも「お子さんはいないの?」とか、まったく悪気がない言葉でも、不妊に悩む立場からすると辛いと感じてしまうこともありました。同じ目線で気持ちを吐き出して共有することが大切だと思いましたね。

――読者の体験談も募集して、漫画で発信しています。

【海原さん】不妊治療をやめて3年以上経って、自分自身の気持ちの整理がついてきたので、これからは真っ最中にいる方たちを、少しでも応援できればと思ったことがきっかけです。自分と近い体験を目にすることで、ちょっとでも気持ちがラクになることもあると思うので。

――寄せられる体験談から、みなさんどんなことに一番、苦しんでいるのでしょう?

【海原さん】やはり人間関係ですね。夫とお姑さんの理解が得られずに悩まれている方は多いみたいです。私も初期の頃は夫が協力的じゃなくて、もめたことがありました。治療を重ねるうちに、一緒に頑張ってくれるようにはなったんですけど、やはり男性には前向きに取り組んでくれない人が多いです。原因は自分にはないと言い張って、検査を受けたがらない人も多いようですしね。不妊の原因は男女半々って、もうだいぶ前から言われているのに、まだまだ浸透していないんだなって感じます。

「批判をいっぱい受けることはわかっている」助成金への提言

――治療を受けた日々を振り返って、今、率直にどんなお気持ちですか?

【海原さん】後悔はまったくないとは言えません。不妊でよかったともぜんぜん思えません。世間体を気にしていなかったといえば嘘になるし、夫とだったら楽しく子育てができるんじゃないかと思って治療を受けてきましたから。あと、正直、もう少し早い段階から出産を意識して行動していたら結果は違ったのかなという心残りもあります。でも、もう言っても仕方がないことですし、子育てしない分、自分の時間をいっぱいもらったので、今の生活をとにかく楽しくしようと思うようになりました。

――その楽しい暮らしぶりも現在、漫画で発信されていますね。そこにはどんなコメントが?

【海原さん】今、治療をしているけれど、もしかしたらできないかもしれないという不安を持っている方々から、「不妊治療をやめても暗くならずに、楽しく過ごされている様子を知れてありがたい」という声をいただけています。

――不妊治療の保険適用拡大が掲げられるなど、環境は少しずつ変わってきているように思います。治療経験者としてどう思われますか?

【海原さん】治療を受けているとき、大きな悩みはやはり費用でした。一部の治療は保険適用できるのですが、所得制限(夫婦合算の所得が730万円未満)などがあって、共働きだと適用できないというご夫婦も多いようです。私も自由診療で、毎回たくさんのお金が飛んでいくたびに、「不妊治療も保険適用になればいいのに」と何度考えたかわかりません。でも、それを発信したらきっと批判も来るだろうな…、と思うと描けませんでした。「税金をそんなことに使うんだったら今すでに子どもがいる人に使うべき」という意見があることを知っていたので。
 今も、保険適用の範囲を拡大することに反対する意見は変わらず多いだろうと想像していますが、治療を受ける人の金銭的負担を少しでも減らすのに、保険適用の拡大を望みます。

――経験者として、社会に対して願うことは?

【海原さん】自分が子どもを持たない少数派になってみて、車を買う時や家を買う時など「子どもさんは?」って聞かれるたびに、“普通”ってなんなんだろうって考えるようになりました。相手に悪気があるわけではないことはわかっているし、こちらが勝手に気にしているだけなんですけど、結婚したら子どもができるのは当たり前というような“当たり前”が変わるといいなと思います。いろいろな“普通”が受け入れられたら、もっとみんなが生きやすい世の中になると思います。

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