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「『鬼滅の刃』は日本経済の希望の光」無限城そっくりの温泉宿や、“石”まで聖地巡礼スポットに
“鬼滅”効果は数千億? くら寿司にローソン、全国各地の“石”までも熱狂エリアに変貌
それだけではない。数々のコラボ商品が発売されているが、これも驚異的なほどに好調だ。くら寿司では、コラボ商品第1弾の発売日である6月12日に、平日では過去最高となる全店売上高を達成。ローソンが6月に発売した『炭治郎の漆黒炒飯風おにぎり』は、一強であった『シーチキンマヨネーズ』をしりぞけ、6日連続の店頭売上1位を記録した。『鬼滅の刃』から派生する経済効果は、数千億に及ぶと言われる。
これを受けてSNSでは「鬼滅、くら寿司の平日の売上の記録も変えた、ローソンのおにぎりの一日の売上も変えた、映画の初日の興業収入も変えたと、なんかもう景気がよすぎる」「日本の経済を立ち直らせてくれるのはあなたしかいない、という気持ちです」などという声が寄せられ、大きく拡散された。加えての“聖地巡礼”効果だ。先述の大川荘広報は「大川荘だけでなく、温泉街・会津全体に効果が広がればうれしいです」と期待を寄せる。
聖地巡礼自体は、最近始まった話ではない。古くは映画『ローマの休日』で、世界規模で多くの人がイタリア・ローマの「トレビの泉」や「真実の口」などを訪れたほか、映画『サウンド・オブ・ミュージック』でオースリアのザルツブルグが一大観光地に。日本でもドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)の聖地である横浜「カフェオムニバス」「北仲橋」「日本丸メモリアルパーク」「赤レンガ倉庫」「象の島パーク」が人気に。アニメ『千と千尋の神隠し』では台湾、『君の名は。』では飛騨古川駅、須賀神社、諏訪湖。『らき☆すた』の鷹宮神社などなど枚挙にいとまがない。
“不要不急”から生まれた莫大な経済効果 一方でモラルやマナー問題も
また、これまで観光地として注目されていなかった地域が、突如“聖地巡礼”スポットとして多くの人が押し掛けると、それだけの人や車を収容するスペース確保、近所問題、ゴミの処理、環境汚染など、これまでさまざまな問題が挙がったことも事実だ。
とはいえ、聖地巡礼の経済効果は計り知れない。『らき☆すた』の鷲宮神社では、神社がアニメとコラボするなど街をあげての盛り上がりとなり、埼玉県久喜市(鷲宮町は後に久喜市に編入)はアニメ放送後3年間で22億円もの経済効果があった。また2011年の『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』のクライマックスシーンを飾る、埼玉県秩父市の龍勢祭には11万人が殺到(前年は7万5000人)。コロナ禍である今、これほどの効果が見込めないだろうが、それでも青息吐息の観光業にとってはやはり“希望の光”だろう。
基本、エンターテインメントは“不要不急”といわれる。だが一度ヒットすれば、これまで記してきたような大きな経済効果に発展することもある。モラルと感染対策はしっかり守りつつ、この“不要不急”から生まれた経済効果が日本を明るく照らしていく様に今後も期待したい。
(衣輪晋一/メディア研究家)