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『鬼滅の刃』“推しキャラ”に見る心理分析【前編】 「炭治郎、善逸、伊之助の関係に憧れる」友人関係に疲れた子どもたち
※一部、ネタバレになる内容を含んでいます。
“推しキャラ”を意識することが、メンタルトレーニングになる
「どんな性格の、どんな立ち位置の人物が好きか、それを分析していくことで自己理解が進みます。なぜなら、“推しキャラ”というのは、その人の憧れの対象であることが多いから。これをモデリングというのですが、“推し”の背景には『自分もこういう人になりたい』『こんな立場の人になりたい』という願望があります」
――なるほど。
「自分が迷ったときや負けそうなときに、推しキャラのセリフや行動を意識して、力に変えることもできます。そうすることでストレス耐性もできるし、メンタルトレーニングにもなりますね。だから、私は『鬼滅の刃』はぜひ家族で観てほしいと思っていて。子どもがどのキャラクターが好きか、どこが好きかを知ることで、その子の憧れや願望がわかりますから」
若い世代が共感? 家長制度に沿った“男らしさ”ではなく、平穏を守るため戦う炭治郎
「炭治郎に関しては、それぞれ響いてるところが違うようですね。女の子は、『優しいところが好き』と言う子が多いですが、大人・年配世代には家族想いなところが響いています。その反面、同世代には『あんな10代はいないだろう』と、反感を覚える人もいるようですね。年が近いと、どうしても自分と比べてしまうのでしょう」
――そんな受け取り方もあるんですね。
「何度打ちのめされても負けない、ひたすら努力できるところが彼の最大の魅力。では、炭治郎は何のために強くなりたいのか? 面白いのが、男らしくあるためでもなければ、強さの頂点に立ちたいためでもない、ということ。ただただ、鬼になった家族を人間に戻したいというだけなんです。
少年漫画は、お父さんの背中を追うような“父性性”を描くことが多いのですが、炭治郎がピンチのときに心の支えになるのは、いつもお母さん。つまり炭治郎は、昔からある家長制度に沿った“男らしさ”を追求するためではなく、身近な人、平穏な日々を守るために戦える人なんです」
――たしかにそうですね。
「今の若い世代は、『出世したくない』というように力や権力に興味がない人が多い。一方で、地球環境を守る活動や自身の生活環境の改善には大きな興味を示します。妹のため、平穏な日々を取り戻すために強くなり、鬼を倒すことに情熱をかける炭治郎の考えが、今の人たちの気持ちに重なるのかもしれませんね」