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“柱”への憧れは低い自己肯定やコンプレックスの裏返し?『鬼滅の刃』“推しキャラ”に見る心理分析
※一部、ネタバレになる内容を含んでいます。
劇場版で人気の煉獄杏寿郎、自己肯定感が強いリーダー志向
「どんな性格の、どんな立ち位置の人物が好きか、それを分析していくことで自己理解が進みます。なぜなら、“推しキャラ”というのは、その人の憧れの対象であることが多いから。これをモデリングというのですが、“推し”の背景には『自分もこういう人になりたい』『こんな立場の人になりたい』という願望があります。自分が迷ったときや負けそうなときに、推しキャラのセリフや行動を意識して、力に変えることもできます。そうすることでストレス耐性もできるし、メンタルトレーニングにもなりますね」
――では、各キャラクターを推す人の傾向について伺います。まずは、柱(鬼殺隊の頂点に立つ9人の剣士)の面々から。劇場版で人気が爆発した煉獄杏寿郎(れんごくきょうじゅろう)を推す人のタイプから教えてください。
「煉獄さんは“陽”の人ですよね。柱の中でも中心的で、バランスのとれた人。明るくて面倒見がいいところも魅力です。本来、強い人は“怒り”を原動力に戦う場合が多く、炭治郎でさえそうです。ただ、煉獄さんは自分の中の信念で戦っている。そのベースは、幼少期に母親から言われた『あなたの強さは人を守るためにある』という言葉。その言葉に支えられているから、煉獄さんはとても自己肯定感が強いんですよね。煉獄さんに憧れる人は、感情に流されない信念を持つ、頼り甲斐のあるリーダーになりたい人なんだと思います」
寡黙な冨岡、ミステリアスな時透…セラピー的な要素も
「冨岡さんはイケメンですから(笑)、女子人気は高いですよね。さらに冨岡さんの場合、“陰がある”ところに惹かれるんでしょう。しかも、陰があってクールに見えるのに、実は情が深い。それは彼が着ている半々羽織(半分ずつ異なる生地を使った羽織)に象徴されているのですが、半分は自身のお姉さんの着物で、半分はともに修行した錆兎(さびと)の着物で出来ているんです。ああいうものを形見として常に身に着けているところに、彼の深い思いが感じられます。それでいて、炭治郎では歯が立たなかった鬼を一撃で倒すほど強い。天然なところもかわいいし、これはもう、パーフェクトですよね」
――寡黙で自分の考えを口にしない、というところもあります。
「そうですね。彼は決してコミュニケーション能力が高いわけではないのに、自分を持っていて、誰にも媚びることがない。今の子どもたちや若い人は、全力でコミュニケーションを取りに行った結果、友人関係に疲れてしまうことが多いんです。そんな人たちから見れば、冨岡さんのような人は羨ましいでしょうし、憧れの対象にもなっているようですね」
――霞柱・時透無一郎(ときとうむいちろう)も人気投票で4位に位置しており、非常に人気が高いです。
「無一郎くんの魅力は、やはりミステリアスな天才というところ。彼は鬼殺隊の中でも若いのに、1年で柱になりました。双子の兄を殺されたことで記憶喪失になり、人にまったく興味がなくて冷たい人になってしまいましたが、やがて温かい人の心を取り戻します。この、感情を取り戻す過程というのが重要。若い人や子どもには、自分の感情がわからない、感情を表現するのが難しいという人も少なくありません。そんな人たちにとって、『自分も優しい気持ちを取り戻せる』『本来の自分になれる』というのは、ホッとするポイントなんです。ちょっとセラピー的な要素があるのかもしれません」
――蟲柱・胡蝶しのぶ(こちょうしのぶ)はおっとりして見えて、芯に熱いものを持ってる女性ですね。
「一見おとなしく見えるものの、尋常ではない精神力の持ち主。そして、ものすごく大きな怒りを持っているのに、いつも無理して笑っている人です。それを炭治郎に見透かされて、『だけど少し疲れまして』と本音をこぼす場面もあります。そういうところは、いつも一生懸命がんばってニコニコしてるけれど、実は会社に不満を持っている…というような女性は共感しやすいのではないでしょうか。力が弱くて鬼の首を切れない代わりに薬を使うなど、工夫して戦うところにもカッコ良さを感じる人もいるでしょう」