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ガンプラ│トップモデラーインタビュー(ガンダムプラモデル)

MSなのにムッチリ太もも…だと? “近藤和久”版シャアザクを「超遠近法」で再現

 「ガンプラは自由!」の精神を謳歌するトップモデラーの中に、アニメや漫画の迫力あるシーンを“遠近法”を用いて再現する人たちがいる。ここで紹介するモデラー・いべまに氏(@kaijyunopapa)は、「超遠近法」と題した様々な作品を世に送り出していが、その代表作のひとつ“近藤和久”版シャアザクの制作秘話について聞いた。

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ファーストガンダム特有? 装甲の曲がり方や太ももの曲線に見られる“エロティック”さ

――近藤版シャアザクを制作された理由を教えてください。

【いべまに】近藤和久先生(漫画家・代表作『機動戦士ガンダムMS戦記』など)の作画集を書店で見かけて手に取ったのがきっかけです。独特の世界観をまとったシャアザクのイラストに惹き込まれ、この雰囲気をそのまま立体化してみたいと思い、制作に至りました。

――使用されたキットを教えてください。

【いべまに】旧キットの1/100ザクをメイン素材とし、旧キットの1/144ザクなどと組み合わせ、プラ板・パテなどで形を出していきました。

――いべまにさんと言えば「超遠近法」で有名ですが、今作でこだわったポイント、気に入っている部分を教えてください。

【いべまに】ザク頭部の末広がり感やクチバシ部分の上向き加減、装甲の曲がり方や太ももの曲線に見られる“エロティックさ”にこだわってみました。結局、胴体と太もも、頭部などはほぼプラ板とパテの造形になりました(笑)。太ももの丸さを出すために、HGのドラッツェの両肩に装備されている球体のバーニア(超マイナーな機体です)を利用していますが、多分誰も気が付きません(笑)。

――イラスト(2D)を立体化(3D)にする難しさは?

【いべまに】正面からの資料しかないので、背面のデザインについては近藤さんの漫画『ジオンの再興』に登場するザクのバックパックイメージで制作しています。塗装についても、絵の雰囲気をそのまま表現したかったので、自身初めての挑戦でしたが、エアブラシと筆塗り部分を混在させて、“近藤ザク”の雰囲気に近づけました。コーションやマーキングなどは手描き感を出したかったのでフリーハンドで書き込んでいます。

――技術的にこだわった部分は?

【いべまに】エアブラシをわざと詰まらせ、塗料の「ダマ」をわざと吹きかけたりもしています。展示会等にお邪魔する事も増えているので、機会がありましたら現物をご覧になって「おぬしも好きよのぅ!」と笑っていただけたら嬉しいです。

人型兵器であるMSの“異形”さと“怖さ”を描いたのが“近藤版ガンダム

――いべまにさんにとってガンダム漫画の大家・近藤和久さんのイメージは?

【いべまに】近藤先生の絵や漫画は、プラモデルサイズのMS(モビルスーツ)ではなく、とてつもなく巨大なモビルスーツを、ちっぽけな人間が見上げるような視点で描かれているため、人型兵器という“異形”さと“怖さ”が漫画の中で表現されています。

――それでは、近藤和久さんがガンプラ界に与えた影響はどんな点だと思いますか?

【いべまに】今でも近藤版のモビルスーツを制作しているモデラーさんが沢山居ることからも、“近藤版ガンプラ”はあえての異形やヤボったさ(それがカッコいいんですが)を楽しむひとつのカテゴリーとして確立しています。

――ファーストガンダムのザクからはキャラクター性を感じます。ザクがこれだけ長く愛される理由は何だと思いますか?

【いべまに】大河原(邦男)さんが手掛けたデザインの秀逸さに尽きると思います。大きく動かないと左右が見えないモノアイ、本来は外に出てちゃいけないはずの動力パイプ、スカートから覗くふくよかな太ももと、ふくらはぎに繋がるライン等々、魅力に尽きないモビルスーツですよね(笑)。

――太ももの話が出ましたが、本作のザクは近藤ザクの太ももを忠実に再現していますね。

【いべまに】このザクには思い入れが強いです。というのも、色々なサイズのパーツを組み合わせて一体の作品を作ることに楽しさを覚えたのはこの作品からだからです。金属でできている兵器とは思えない装甲の曲がり方だったり、魚眼レンズから見たような奥行き感だったりを立体で見せるというのが楽しみでもあり苦労する部分でもあります。見る角度を変えると違和感の塊なんですが、少し違う視点からの見え方も、ある意味面白いものだなと感じています。

――楽しさを感じるというのは「壁」があるからこそだと思います。ガンプラ制作の難しさを感じる瞬間は?

【いべまに】すごく憧れてチャレンジした、キンキンエッジやビシッと入ったスジ彫り、超ミクロシイタケパーツなどがことごとく上手くいかず、他のモデラーさんの超絶作品を目の当たりにするたびに、「なんでこんなに綺麗な作品が出来るんだろう」と思い悩んだ時期がありました。まさに自分にとっての「壁」でした。でも、その壁を乗り越えようとせず、壊して前に進もうともせず、あえて迂回することで今の作風にたどり着きました(笑)。

――なるほど、苦手なものは回避して、自分の“強み”をいかす選択をしたら「超遠近法」に行きついたと。では、今後作ってみたい作品のキットやテーマはありますか?

【いべまに】ファーストガンダム、鉄血のオルフェンズをテーマに超遠近法でいろいろなシーンの再現ジオラマを制作してみたいと思っています。特に、ガンダムフレームの可能性はまだこれからが本番じゃないかと勝手にワクワクしています(笑)。

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(C)創通・サンライズ

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