アニメ&ゲーム カテゴリ
  • ホーム
  • ライフ
  • 105歳おばあちゃんと介護士の交流が『シルバー川柳』に、老後ソロに光もたらす

105歳おばあちゃんと介護士の交流が『シルバー川柳』に、老後ソロに光もたらす

  • (左から)日野きみ子さんと介護士の板倉大輔さん

    (左から)日野きみ子さんと介護士の板倉大輔さん

 高齢者たちならではの自虐やユーモアを織り込んだ『シルバー川柳』。9月には今年の入選作が発表され、ネットやSNSでも話題に。川柳を収録した同名書籍(ポプラ社刊)も人気を博している。今回で第18回を迎えた『シルバー川柳』だが、これまでの応募者の中で最高齢となったのが、御年105歳の日野きみ子さんだ。彼女が詠んだ川柳は「イケメンの 毛ズネにすがる 湯あみかな」。日野さんと、彼女の川柳にも詠みこまれた31歳の介護士・板倉大輔さんに、高齢者たちの実情や、介護の現場における“ユーモア”の役割を聞いた。

105歳のおばあちゃんが作った川柳、「イケメンの 毛ズネにすがる 湯あみかな」

  • 『シルバー川柳』2018年の入選作(ポプラ社『シルバー川柳8』より)

    『シルバー川柳』2018年の入選作(ポプラ社『シルバー川柳8』より)

 『シルバー川柳』は2001年、全国有料老人ホーム協会の20周年を記念して公募されたコンテスト。スタート早々、予想以上の反響を得て毎年開催されるようになり、今年で18回目の開催となった。毎年1万作前後の応募があり、単行本もこれまで8冊出版されている。「デイサービス 『お迎えです』は やめてくれ」「うまかった 何を食べたか 忘れたが」といった独特な自虐やユーモアを織り込んだ川柳がSNSでも拡散され、高齢者のみならず若い世代からも支持されているようだ。

 そんな『シルバー川柳』の応募者の中で、最高齢だったのが105歳の日野きみ子さん。介護付有料老人ホーム・あすみが丘グリーンヒルズに入居している、元気なおばあちゃんだ。その日野さんの応募作は、「イケメンの 毛ズネにすがる 湯あみかな」。ホームでお風呂に入るときに、入浴を介助してくれた介護士のことを詠んだものだという。

 日野さんは、「湯船に入ると身体が浮いちゃうから、(介護士の)足のすね毛に必死でつかまっていたの」と、そのときの思い出を語ってくれた。ここに詠まれた“イケメン”とは、このホームで介護士として働く板倉大輔さん。「彼はハートがあって目がキラキラしている。優しくて大きくて頼りになる人、それがイケメン」と、日野さんは日々介助してくれる板倉さんを語る。

介護の現場で『シルバー川柳』が果たす役割、「少しでも笑顔があったほうがいい」

 日野さんは、もともと川柳を詠むのが好き。「お布団に入って寝ているときによく思い浮かぶ」という。あるとき、ホームに掲示されていた『シルバー川柳』のパンフレットに目が留まり、自ら応募した。今回の応募作の他にも「年とって 丸くなるのは 背中だけ」など数多くの“名句”を残しているという。

 そんな日野さんを見て板倉さんは、「介護の仕事はネガティブに捉えられがちだし、いつも時間に追われていて大変。そんな中で、日野さんのユーモアあふれる川柳を聞かせてもらうと、心が落ち着いてほっこりします。せわしない現場でも、眉間にしわを寄せて仕事をするより、少しでも笑顔があった方がいい。『シルバー川柳』は、高齢者の皆さんにとっても、介護する私たちにとってもすごく良いものだと思います」と語っている。

山口での一人暮らしから千葉のホームへ入居、「納得してやってきた」

  • 今年の入選作ほかを収録した単行本『シルバー川柳8』(ポプラ社/発売中)

    今年の入選作ほかを収録した単行本『シルバー川柳8』(ポプラ社/発売中)

 もともと、山口県で一人暮らしをしていた日野さん。98歳のとき、近くに親族が住んでいることから、千葉市にある現在のホームに入居した。「老人ホーム」と聞くと抵抗を感じる高齢者も多いそうだが、「日野さんはご自身で納得して入居して、自分から進んで新しい環境に順応していった」(板倉さん)という。

 今年で入居して7年。日野さんの毎日は、介護士たちに支えられつつも元気いっぱいだ。川柳はもちろん、歌を歌うこと、司馬遼太郎の歴史小説を読むこと、お酒を飲むことも大好き。『シルバー川柳』が収められた単行本を読んでは、笑っているという。

 「日野さんはすごく元気で前向き。朝起きると、いつも何かやることを探しているし、食事もしっかりと食べます。好き嫌いもはっきり言う人なので、ストレスをためないんでしょうね」と、彼女の元気の源を分析する板倉さん。日野さんも「ここにいると、みんな(介護士やスタッフ)が本当によくしてくれる。バチが当たるんじゃないかと思うよ(笑)」と、ホームでの生活を楽しんでいるようだ。

まるで実写版『大家さんと僕』? お互いを労わりあう関係

  • 笑顔の絶えない日野さんと板倉さんの会話

    笑顔の絶えない日野さんと板倉さんの会話

 もともと人と接することが好きで、接客業に就いていたという板倉さん。看護師の親から「福祉の仕事に向いている」と勧められ、このホームで働き始めて5年が経つ。今では「大ちゃん」と呼ばれ、入居者から大人気。「毎年七夕になると、皆さんが僕に早くお嫁さんがくるようにと短冊に書いてくれるんです」(板倉さん)という愛されぶりだ。特に日野さんとは息がピッタリ。耳の遠い彼女をサポートしながら成される、2人の漫才のようなやり取りが微笑ましい。「日野さんからは学ぶことしかありません。はっきりものを言うけど、すごく大人の対応で、ダテに100年以上生きていないなと思います(笑)。それに気持ちが若いんです」

 今回の川柳について、板倉さんが「“イケメン”なんて言葉、よく知ってたね」と言うと、「そんなの、どこにでも書いてあるよ!」と即座にツッコむ日野さん。お互いに学び、労わりあう絆で結ばれた関係は、まるでカラテカ・矢部太郎によるヒット本『大家さんと僕』を彷彿とさせるようだ。

介護する立場ながら「勇気づけられる」、ユーモアが長い老後のヒントに

 ユーモアや自虐に満ちた『シルバー川柳』を読んでいると、「こういう仕事をしているだけに、『確かにこんな人いるなぁ』と思います」と板倉さん。日々高齢者の人たちをお世話しながらも、逆に勇気づけられることも多いという。

 「この仕事をする前は、高齢者=寝たきりのイメージが強かったのですが、実際には全然違っていてビックリしました。皆さん、いろいろなことを知っているし、とても明るくて前向き。自分が年をとったとき、あんなにパワフルに生きていけるか不安になるくらいです。皆さんを見ていて勇気づけられますし、自分も負けていられない。朝起きて疲れているなと思っても、ホームに来ると元気になれるんです。だからこそ、そんなお年寄りが楽しめる『シルバー川柳』をこれからももっと勧めていきたいです」

 日本人の平均寿命は、女性が87.26歳、男性が81.09歳と過去最高を更新(厚生労働省「簡易生命表」より)。100歳以上の人口は約7万人となり、今や「人生100年時代」とも言われている。この長い長い老後は“辛く厳しい年月”とも捉えられがちだし、誰もがホームや自宅で幸せに過ごせるとは限らない。だが、日野さんのようにいつまでも前向きに生きることで、毎日を充実させ、介護の現場で働く若い世代に力を与えることもできる。

 高齢者ならではの知恵と、開き直りとも言える明るさに満ちた『シルバー川柳』。これらのユーモアこそ、長い老後を前向きに、明るく過ごすためのヒントになるのではないだろうか。

(文:水野幸則)

オリコンニュース公式SNS

Facebook、Twitterからもオリコンニュースの最新情報を受け取ることができます!