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(更新: ORICON NEWS

奇跡のアラサー千葉雄大、貫き通した“かわいさ推し”で独自の立ち位置に

 『高嶺の花』(日本テレビ系)での怪演に続き、10月期で『プリティが多すぎる』(同系)の主演が決まった千葉雄大(29)。出演作は非常に多いものの、これまであまり主演を務めていない彼が、“かわいい”をテーマにした作品で満を持して主演を務める。近年は自身から“かわいい”や“あざとい”に振り切っている印象すらあり、バラエティー番組などでも共演者に “かわいいポーズ”を振られて全力で応える場面も。役者にとってアラサーとは、役の幅を広げる適齢期であり、一般的に“かわいい”を推すのが辛い年齢でもある。だが、そんな風潮にも臆することなく“かわいい推し”を貫く姿には、清々しさすら感じる。

多数の作品に出演、“ヌクメン”が話題でも「実感ない」

 モデルとして活動後、2010年に特撮『天装戦隊ゴセイジャー』(テレビ朝日系)の「アラタ」役で俳優デビュー。オーディションで出会った時の彼の印象について「右も左もわからない挙動不審な初々しさ」(東映公式HP)と語られているように、千葉雄大が演じたレッドは鮮烈な印象を与えた。戦隊モノのレッドといえば、熱血キャラが定番なのに、女の子のような顔立ち+マッシュルームカットの「天使」設定のレッドは、極めて斬新だった。

 そこからドラマや映画に立て続けに出演することに。『黒の女教師』(TBS系)では、成績優秀な“影のリーダー格”。また、『水球ヤンキース』(フジテレビ系)では、中川大志、吉沢亮とともに、ちょっとお調子者の「3バカトリオ」のツッコミ担当をコミカルに演じた。さらに、『きょうは会社休みます。』(日本テレビ系)では仲里依紗演じる同僚に思いを寄せる、ゆとり世代の「童貞くん」をキュートに演じて幅の広さを見せる。

 また、少女漫画の実写化映画『アオハライド』では、原作のキャラに顔や柔らかな雰囲気が似ていることから、原作ファンの間で「ハマり役すぎ」と評判になった。「ぬくもり系男子」=“ヌクメン”というキャッチコピーが生まれたこともあり、中性的な“かわいい”イメージは着実に作られていった。

 ところが、当の本人は2015年のORICON NEWSのインタビューで「“可愛い”イメージで得したことってない」「『ここは可愛らしくお願いします』と言われるのが苦手」、ヌクメンについても「自分ではあまり実感はありません」などと、本音を漏らすこともあった。また、中性的な童顔系の若手俳優といえば、小池徹平や瀬戸康史など、珍しくなかった。

“かわいい”に振り切ったキャラクターがバラエティーでも奏功

 そんな世間の“かわいい”イメージに“しっくりこない思い”を抱えていた千葉。過去のORICON NEWSのインタビューでは、悪役に挑戦してみたい思いを語っていたこともあるように、イメチェンを考えた時期もあったかもしれない。だが、千葉が選んだのは“かわいい”を捨てるのではなく、より明確に、戦略的に押し出すことだったのだろう。ここ数年は「あえて狙ってやっている」ようにすら見える。

 前述のインタビューでも「最近は振り切って、(ぶりっこポーズで)“ニコ”みたいな、何でもできちゃうようになりました(笑)」と話していたが、迷いをなくしたことで、周囲もアラサーの千葉の“かわいい”を安心して「イジって良い」「楽しんで良い」と感じるようになったのではないだろうか。例えば、昨年の映画『帝一の國』では共演する志尊淳との“新旧かわいい対決”が話題になったが、共演者からの“じじい”のヤジを笑いに変えているところに、吹っ切れた様子が伺える。

 もともとインタビューなどでは「内気」「人見知り」と語っているように、ゲスト出演するドラマなどの現場では、共演者と喋らない様子が見られることもしばしばあった。しかし、開き直った千葉は、バラエティーでも「開花」。『ホンマでっか!?TV』(フジテレビ系)では、冬に使えるモテ仕草を披露する際、大胆な挑発により、普段はゲストをテレさせる加藤綾子を逆に大テレさせてしまったり、「振り向き足乗せ」に対して自分から足を絡ませ返したりというイタズラぶりを見せ、場を大いに盛り上げていた。

 また、『しゃべくり007』(日本テレビ系)では、「千葉くんをカワイくする道具」として、ちょっと困り顔でぺろぺろキャンディをパクッとくわえて、何度もまばたき。かと思えば、片手を頬にあて、ウインクしながら、カレースプーンを笑顔の口元に持っていくという「かわいいの大渋滞」ぶりを披露。『おしゃれイズム』(日本テレビ系)に出演した際には毒舌ぶりも発揮している。

 バラエティーや映画の舞台挨拶などで「ドSキャラ」を公言したり、歌マネを披露したり、“かわいい”を自画自賛することで笑いをとったりと、バラエティー的な手数も豊富なのだ。

アラサー俳優、唯一の“かわいい”立ち位置に

 20代後半と言えば例えば“爽やか”や“かわいい”イメージは脱却したくなる年齢だ。そんな時期にあえて「かわいい」を貫き、30代を迎えるのは並大抵のことではないだろう。

 「イケメン俳優」と言われ、ビジュアルで売り続ければ、多かれ少なかれ “劣化”と言われたり、世間の需要がより若い方、新しい方に移行していったりもする。だが、そんな隙も崩れも見せず、それどころかむしろ以前よりも“かわいい”を正面から受け止め、最大限に利用するという開き直りを見せたことで、彼の“かわいい”は役柄に存分に生かされた。ときには『もみ消して冬〜わが家の問題なかったことに〜』のように笑いにも変えるほど個性の強い役も。

 また、中性的な顔立ちは、かつては「ナルシストっぽい」「裏がありそう」と言われるデメリットもあった。だが、多数の役柄を演じてきた経験値と表現の幅、大人の余裕を身に着けた今は、アーティスティックな闇深い役も見事にハマる。

 “かわいい”のベールで隠れがちだが、覚悟も努力も無ければこの年齢で“かわいい”を貫けないし、この立ち位置で残れなかったはずだ。“かわいい”の内側に閉じ込められた毒や強さ、熱さ、脆さなどが垣間見えるとき、そのギャップにドキッとしたり、噴き出してしまったり、もっともっとのぞきたくなる。次作の『プリティが多すぎる』はそんな千葉の現在地の魅力が詰まった主演作となるのではないだろうか。

 世間のイメージとのギャップに悩みつつも、振り切ってそのイメージに自ら寄せていき、スキのない「完全体」にまで高めた千葉の姿勢は、決してナルシストのようなひとりよがりには映らないはずだ。“かわいい”を自分の強みとして真っ向勝負したことで、他の同世代の俳優の中でも唯一の立ち位置となったのではないだろうか。

(文/田幸和歌子)

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