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ミレニアル世代が抱くバブルへの羨望を投影? 『バチェラー・ジャパン』がウケる理由
“キュン”よりも“キラキラ” 恋愛バラエティもSNS映えの時代に
一方、男女7人がラブワゴンと呼ばれる車に乗って各国を旅する『あいのり』(フジテレビ系/1999〜2009年放送)は、それまでにもあった素人お見合い番組にドキュメンタリーの要素を持ちこんで成功した初の番組だ。これは出演者が心に決めた相手に告白したらラブワゴンを降りるというルールで、恋愛の結果よりも結論を出すまでの過程を楽しむ“人間観察”をメインにしたところが斬新だった。また、日記やインタビューなどで出演者の本音が明かされることで、その等身大の恋愛に視聴者が感情移入。その結果、桃、ヒデ、葉加瀬マイなど個性の光るキャラクターが支持され、番組の枠を超える人気者となった。
このように、視聴者が現実味を感じられる身近なラブストーリーを見せることで人気ジャンルとなった恋愛バラエティ番組だが、その流れが変わったのは『テラスハウス』(フジテレビ系/2012〜2014年)からだろう。同番組は現在もNetflixで新シリーズが継続しており、ハワイや軽井沢といったおしゃれスポットにあるシェアハウスで共同生活を送る、複数の男女の日常を映し出すことで人気を得ている。これまでの番組と違う点は、恋愛だけにフォーカスするのではなく彼らの“キラキラ”したライフスタイルを見せていること。それらの場面をアップするインスタグラムの番組公式アカウントには、現在12万のフォロワーがついている。言うなれば、出演者がタレント化し、やらせ問題などが大きく取り沙汰されるようになったSNS時代の恋愛バラエティ番組は、リアルさよりキラキラ感。ベタな胸キュンや共感よりも、恋愛を包括したライフスタイルへの憧れを引き出す方向にシフトしてきているといえる。
究極の“キラキラ”は好景気社会の象徴であるバブル時代の再現
こうした内容が平野ノラ、登美丘高校ダンス部、港区女子といった流行に見られる、ミレニアル世代の“バブル再評価ブーム”にもピタリとハマり、番組は現在オンライン動画サービス市場で大ヒットコンテンツとなっている。近年、20〜30代の若者が好景気だったバブル時代に憧れる傾向が強まっており、少子化による就職率の上昇、2020年東京五輪に向けての景気回復予想もそれを後押ししている。このトレンドに乗って登場した『バチェラー・ジャパン』のラグジュアリーな世界観は、当時を知らない若者たちが夢見るバブル時代を再現しているといっても過言ではない。
加えて、バブル時代といえば見た目のキラキラ感だけでなく、人々の心がイケイケで野心に満ちていたことも、ミレニアル世代が新鮮に感じるポイントだ。ライバルとの競争に勝って結婚という幸せをゲットしようという女性たちの“ガツガツしたやる気”が充満している『バチェラー・ジャパン』は、“欲望に正直に生きることを肯定するバブル時代”を彷彿とさせる空気がある。恋愛や結婚、出世に対するモチベーションが下がっているといわれる今の若者の目には、それこそ新しい価値観をもったライフスタイルに映っているのだろう。指原莉乃、きゃりーぱみゅぱみゅ、井上裕介(NONSTYLE)、棋士の広瀬章人八段など、バチェラー好きを公言するミレニアル世代の著名人も多く、中でも実際に婚活を経験した芸人の横澤夏子は番組について「バチェラーが楽しみで仕方ない」「金曜日まで待ち遠しい」と自身のSNSでコメント。バチェラーの小柳津林太郎氏と共演したAbemaTVの番組では「(小柳津氏が)ダンナよりも好きな人なんです」と発言して深すぎるハマり具合を見せている。
ミレニアル世代にアピールする動画配信サービス
2013 年頃からスマートフォンの普及に伴いオンライン動画配信サービスのユーザーは増加。世界最大の映像配信事業者であるNetflixが日本上陸した2015年以降、定額見放題・オンデマンド視聴サービスもその市場を大きく拡大し、特にデジタルネイティブ世代でもあるミレニアル世代のユーザー数は上昇している。そんななか、各社はユーザーを引きつけるためのオリジナルコンテンツ制作にも力を入れているが、インターネットとの親和性が高く、ミレニアル世代をメインターゲットにした恋愛バラエティ番組は格好のフォーマット。各社がこのジャンルを開拓しようとするのも必然だ。
そんなインターネット上での恋愛バラエティ新時代を迎えて、『バチェラー・ジャパン』はバブルに憧れるミレニアル世代のニーズに応えて成功したが、それに追随するコンテンツは増えていくのか? オンライン動画配信サービスから生まれる新たなトレンドに、今後も注目していきたい。
(文:小酒真由子)