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若年層の通過儀礼として機能した“恋愛バラエティ”の減少 その必要性とは?

 今でこそ中高年となった大人も、10代〜20代のときは夢中になって観ていた“恋愛バラエティ番組”があるはず。50代以上なら『プロポーズ大作戦』(テレビ朝日系)、40代なら『ねるとん紅鯨団』(フジテレビ系)、30代なら『あいのり』(同)や『ウンナンのホントコ!』(TBS系)内の「未来日記」、20代なら『テラスハウス』(フジテレビ系)など、各年代でその時代を象徴する恋愛バラエティ番組が必ずあった。登場人物に感情移入して涙し、背中を押されて自分も告白…なんて甘酸っぱい思い出がある人もいるだろう。しかし最近では、この恋愛バラエティ番組が減少傾向にある。時代と共に変化を遂げた恋愛バラエティの変遷を辿り、その存在意義を考察していこう。

時代とともに進化を繰り返す“恋愛バラエティ” タレントやMCの登竜門的な存在にも

  • イベントに出演した『テラスハウス』のOBたち

    イベントに出演した『テラスハウス』のOBたち

 恋愛バラエティ番組は、台本のないリアリティーショーのひとつでもあり、“恋愛”をネタに一般人を登場させることが多く、『プロポーズ大作戦』などはいわゆる“素人いじり”の元祖と言える。それだけに番組を進行させるMCの力量が重要で、『プロポーズ』は横山やすしと西川きよしという、「やすきよ」コンビが担当。ちなみに類似番組の『パンチDEデート』(フジテレビ系)は、西川と桂三枝(当時)が司会だった。その後も基本的に明石家さんまや久本雅美などの大物が起用されることが多かったが、ときにはとんねるず(『ねるとん〜』)やロンドンブーツ1号2号(『ロンドンハーツ』)のように、当時の売り出し中・ブレイク寸前のMCを起用して、番組の人気と連動してMCも人気を博すというパターンもあった。

また、ほぼ素人だった出演者が番組から芸能界入りする例も多く、“から騒ぎ出身”(小林麻耶など)や“あいのり出身”(ブロガーの桃など)、“テラハ出身”(Chayや筧美和子など)のタレントが活躍するなど、タレントの登竜門的な役割も担っていた。

そして、恋愛バラエティ出身者は一般人であるにも関わらず、結婚・妊娠・出産などが話題になり、最近では10年以上前の『あいのり』に出演していたクロの妊娠が報道された。こうしたニュースが出ること自体、当時は出演者を応援する側だった視聴者が、学生時代以来会っていない友人の近況報告を聞くような、どこか懐かしい親近感を抱いている表われとも言えよう。

「合コン」「お見合い」新たなブームを生み、主題歌のヒットも…経済効果も絶大

 一方、恋愛バラエティ番組の“経済効果”も絶大だ。番組に登場する出演者側も視聴者側も基本的には10代〜20代の若者たちであり、“恋愛”関係に積極的にお金を使う世代でもある。テレビで人気の企画は社会でも流行し、『プロポーズ〜』の「フィーリングカップル」企画は学園祭の定番企画になり、『ねるとん〜』は「ねるとんパーティー」という形で「カップリングパーティー」「合コン」へと大流行するなど、社会的な経済効果としても大きく波及したのである。

 その後、番組の企画としての“出会い”の形式は、『あいのり』は“旅”であったり、『テラスハウス』は“同居”だったりと、時代とともに今っぽく変遷していくが、『テラスハウス』で言えば“シェアハウス”という新しいライフスタイルを定着させたように、やはり番組の社会的影響力は無視できないものがあった。

 さらに同時期の『ウンナンのホントコ!』の「未来日記」では、サザンオールスターズの「TSUNAMI」、福山雅治の「桜坂」、『あいのり』ではEvery Little Thingの「fragile」、I WiSHの「明日への扉」など超ヒットを連発。それまで定番だった「恋愛ドラマ×主題歌」ではなく、「恋愛バラエティ×主題歌」という新たな“ヒットの法則”さえ生み出したのである。

ドラマとは違う リアルな“理想の恋愛”を求める若者に必要なコンテンツ

 しかし、こうした恋愛バラエティが、現在では減少傾向にあることもまた事実。ちなみにWikipediaの「恋愛バラエティ」ジャンルに掲載されてる作品は、ピークとなった00年代には動画配信番組も含めて30以上あるが、10年代には9つしかなく、明らかに減少している。恋愛ドラマ自体もバブル期〜00年代初頭を過ぎると大幅に数が減ってくる。

 そこには、『テラスハウス』的なリアリティーショーの要素が強くなった近年の恋愛バラエティに対する、どこか「やらせなんじゃないか?」といった疑念や、女子出演者を「あざとい」などとしてネットで炎上することが多くなったことなどの影響があるかもしれない。また、「最近の若者は恋愛に興味がない」なんて言葉も聞かれ、男子の“草食化”や女子の“おひとり様”などが論じられる中、恋愛バラエティ番組が減少していくのは単に“時代の流れ”ということなのかもしれない。さらに言えば、昨今の“不倫ブーム”たけなわの中、恋愛バラエティ番組よりもワイドショーで観る芸能人・著名人たちのドロドロ愛憎劇のほうがはるかに刺激的だとも言えるのかもしれない。

 しかし、汚れた不倫報道が続くと、また胸がキュンとするような恋愛劇へのニーズも高まっていくだろう。これらの恋愛バラエティは、少女漫画などに代表される“清い恋愛”を実在の人間が生っぽく体現しており、感情移入しやすい。実際の恋愛は甘いことだらけじゃないからこそ、よりドラマティックでリアルな“理想の恋愛”に憧れる。その手本をテレビの向こうに求めるのだ。若いうちにしか感じることができないような胸が熱くなるような恋や、清い恋愛が生まれる瞬間を目撃できる”恋愛バラエティ番組”は、ドロドロした現実との差別化を図る意味でも、必要なコンテンツなのではないだろうか。このその勢いが復活する可能性は十分にあるとも言える。

 時代の流れこそあるが、本来の素朴な“恋愛”のはじまりに立ち返るという意味でも、恋愛バラエティ番組の存在意義はあるだろうし、今後も続いていってほしいコンテンツだと言えるのではないだろうか。

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